Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)箱根

2023-04-27 17:57:16 | 植物観察記録

箱根へバイケイソウの観察に行ってきました。バイケイソウは草丈60㎝程度に成長していました。この時期になると、今年花成する個体としない個体のおおよその区別がつくようになります。花成しない個体は葉数10枚程度を展開して最上位葉が下位葉と同程度に大きくなっていますが、花成する個体は10枚以降の葉が出現して成長を始めています。花成個体は14枚以上の葉をつけるので、現時点で小さい葉が出現して展開を始めていれば、後に花茎が伸長してくると考えられます。箱根調査地では2020年に多くの個体が花成し、その後は花成個体数が減少していきました。今年はどうなるのか。

バイケイソウは草丈60㎝程度に成長

 

今年花成する個体は10枚目以降は出現、成長展開を始めている。

 

左は新しい葉の展開が見られないが、右は小さな葉が出現展開しており、今年花成すると考えられる。

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植物観察)西表島の渓流にて

2023-04-20 19:37:29 | 植物観察記録

西表島の渓流沿いに植物観察に行きました。今回のの散策では、渓流の岩場でキンギンソウ、ヒメタムラソウ、ヤエヤマスミレの花を見ることができました。キンギンソウは草丈が40㎝程度あり、目につきやすい植物です。ヒメタムラソウは岩上で群生しており、小さな白色の花を複数つけます。ヤエヤマスミレは白花のスミレで、キンギンソウやヒメタムラソウに比べると個体数は少ないように感じました。ヤエヤマスミレを「西表島、石垣島の固有種」とする図鑑もありますが、葉の形から、西表島の「ヤエヤマスミレ(葉が菱形)」と石垣島の「イシガキスミレ(葉が三角形で基部が切形)」をヤエヤマスミレの変種として区別するようです。

 


キンギンソウ(Goodyera procera )ラン科シュスラン属

 


ヒメタムラソウ(Salvia pygmaea Matsum.)シソ科アキギリ属

 


ヤエヤマスミレ(Viola tashiroi )スミレ科スミレ属

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論文)熱形態形成におけるマイクロRNAの役割

2023-04-15 16:25:52 | 読んだ論文備忘録

MicroRNA156 conditions auxin sensitivity to enable growth plasticity in response to environmental changes in Arabidopsis
Sang et al.  Nature Communications (2023) 14:1449.

doi:10.1038/s41467-023-36774-9

植物は、環境温度が数度上昇するだけで、発生、成長、代謝、免疫に対して劇的な適応反応を起こす。これらは総称して熱形態形成と呼ばれており、温度センサーであるフィトクロムB、転写因子のPHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR(PIF)、オーキシンなどの植物ホルモンの制御を通じて発生と成長が調節されている。しかしながら、この過程にマイクロRNA(miRNA)が関与しているは不明である。米国 カリフォルニア大学リバーサイド校Chen らは、シロイヌナズナのmiRNA生合成の各種変異体の芽生えを21℃から27℃へ温度上昇処理をして胚軸伸長の変化を観察した。その結果、pri-miRNAの切断に関与しているHYPONASTIC LEAVES 1(HYL1)の変異体hyl1-2 は、pif4-2 変異体と同様に、温度変化に応答した胚軸伸長を起こさないことを見出した。hyl1-2/pif4-2 二重変異体は、hyl1-2 変異体やpif4-2 変異体に比べて高温に対する応答性が僅かに低下したことから、HYL1とPIF4は重複する経路と並行する経路の両方で作用していると考えられる。hyl1-2 変異体では、温度上昇によるPIF4 mRNAとPIF4タンパク質の蓄積が見られることから、HYL1は高温に応答したPIF4蓄積には関与していないと考えられる。hyl1-2 変異体種子を変異原(EMS)処理をして、高温で胚軸がhyl1-2 変異体よりも伸長するサプレッサー変異体の単離を行なった。その結果、優性のサプレッサー変異を示す二重変異体が3系統得られた。これらは、いずれもRNaseⅢ酵素をコードするDICER-LIKE 1DCL1 )遺伝子に変異が生じて1448番目のProがSerにアミノ酸置換(P1448S)しており、この変異遺伝子座は以前にdcl1-24 として単離されていることが判った。P1448S置換は、DCL1のRNaseⅢaドメインに位置しており、このドメインはDCL1酵素活性の自己阻害機能に関与している。よって、このアミノ酸置換によってDCL1の自己阻害が抑制され、HYL1非存在下でも酵素活性が保たれている。hyl1-2 変異体では温度上昇によって65種類のmiRNA量が野生型植物よりも減少したが、dcl1-24/hyl1-2 二重変異体ではこれらのmiRNA量が野生型植物と同等となった。このことから、hyl1-2 変異体での熱形態形成不全はmiRNA生合成不全に起因していることが示唆される。miRNAと熱形態形成の関係を解析するために、miRNAのターゲット遺伝子の発現量変化を調査した。その結果、miR156が制御するSQUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKESPL )転写因子遺伝子のSPL3SPL5SPL6SPL9 は、hyl1-2 変異体で発現が上昇し、dcl1-24/hyl1-2 二重変異体では抑制されていることが判った。そこで、miR156活性を阻害するmiR156ターゲットミミクリーを恒常的に発現する形質転換体(MIM156 )を解析したところ、MIM156 芽生えは温度上昇に対する胚軸の応答が大きく低下していることが確認された。次に、miR156がターゲットとしている10のSPL 遺伝子のmiR156感受性型(sSPL )、miR156抵抗性型(rSPL )を発現させた形質転換体芽生え胚軸の高温応答性を観察した。その結果、SPL9 のmiR156抵抗性系統(rSPL9 )はmiR156感受性系統(sSPL9 )に比べて2倍以上応答性が低下していた。rSPL2rSPL3 もそれぞれのsSPL 系統と比較して胚軸の高温応答性がわずかに低下したが、その表現型はrSPL9 と比較してはるかに弱かった。rSPL10rSPL11rSPL15 は、それぞれのsSPL 系統と比較して高温応答性の増強を示したことから、これらのSPL は高温時の胚軸伸長を促進すると考えられる。spl9-4 変異体、spl2/9/10/11/13/15 六重変異体、spl3/4/5 三重変異体は、野生型植物と同様に高温に応答した。これらの結果から、miR156は主にSPL9 を抑制することにより、高温時の胚軸伸長を促進していると考えられる。RNA-seq解析によってオーキシン応答性遺伝子GOカテゴリー(GO:00009733)に属する317遺伝子の発現を調べたところ、31遺伝子は高温で発現が上昇していた。しかし、pif457 変異体とMIM156 では高温応答性が低下しており、この中にはSAUR 遺伝子やAux/IAA 遺伝子が含まれていた。しかし、これらの遺伝子の大部分はhyl1-2 変異体において高温応答性を示し、HYL1に依存しているのは7遺伝子だけであった。また、野生型植物で高温誘導されなかった20のオーキシン応答遺伝子が、hyl1-2 変異体では発現が増加したのに対し、MIM156 では6遺伝子のみであった。このことから、hyl1-2 変異体では複数のmiRNAが欠損しているためにオーキシン応答遺伝子を適切に制御していない可能性が考えられる。オーキシン生合成酵素遺伝子のYUC8YUC9 は高温によって発現量が増加し、この増加はpif457 変異体では見られないが、MIM156hyl1-2 変異体では見られた。以上の結果から、miR156は高温に応答したオーキシン応答遺伝子の発現を適切に制御するために必要であると考えられる。温度上昇による胚軸伸長は、オーキシンに加えてブラシノステロイド(BR)も関与しているので、BR処理実験を行なった。その結果、BR処理によってMIM156rSPL9 の胚軸伸長が回復した。よって、miR156/SPL9モジュールはBR生合成の上流で作用し、BRシグナル伝達には関与していない。BR処理によってhyl1-2 変異体の胚軸も伸長したが、回復の程度は不完全であり、hyl1-2 変異体ではBRシグナル伝達が軽度に欠損していることが示唆される。オーキシンによる胚軸伸長は濃度に依存しており、低濃度では伸長が促進されるが、高濃度では阻害される。MIM156rSPL9hyl1-2 変異体は、低濃度オーキシンによる胚軸伸長促進は見られないが、高濃度オーキシンによって胚軸伸長が阻害され、dcl1-24/hyl1-2 二重変異体は正常なオーキシン応答性を示した。このことから、miR156は低濃度オーキシン応答に関与していると考えられる。さらに、miR156は、高温時だけでなく、低温時(21℃)や避陰反応の際の胚軸伸長におけるオーキシン感受性にも関与していることが確認された。以上の結果から、マイクロRNAのmiR156とその標的であるSPL9は、オーキシン感受性の制御を介して熱形態形成の制御因子として機能していると考えられる。

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論文)WRKY転写因子による種子休眠の解除

2023-04-08 11:29:02 | 読んだ論文備忘録

A transcription factor WRKY36 interacts with AFP2 to break primary seed dormancy by progressively silencing DOG1 in Arabidopsis
Deng et al.  New Phytologist (2023) 238:688-704.

doi: 10.1111/nph.18750

種子休眠は、遺伝的な要因、植物ホルモン量、環境シグナルによって制御されている複雑な過程である。植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)とジベレリン(GA)は、休眠と種子発芽を拮抗的に制御しており、ABAは種子発芽を抑制し、GAは発芽を促進する。シロイヌナズナの種子休眠を制御している遺伝子としてDELAY OF GERMINATION1DOG1 )が知られている。DOG1 は、機能未知のタンパク質をコードしており、種子が成熟するにつれて発現量が増加し、成熟後期に発現は急速に減少する。このことから、DOG1は種子休眠解除のタイマーとして機能していると考えられている。しかしながら、DOG1 の発現を制御する機構は明らかとなっていない。中国 上海大学のHu らは、ABAシグナル伝達を負に制御しているABI5結合タンパク質(AFP)のAFP2が高温条件での種子発芽を促進することを見出しており、AFP2と種子休眠との関係を調査した。そして、afp2 変異体やAFP2 過剰発現形質転換体(AFP2-FLAG )を用いた解析から、AFP2は種子の一次休眠を負に制御していることを明らかにした。AFP2-FLAG 種子では胚発生過程でのDOG1 転写産物量が野生型植物よりも少なく、afp2 変異体では乾燥種子においてもDOG1 転写産物量が多くなっていた。このことから、AFP2は種子成熟過程においてDOG1 の発現を負に制御していることが示唆される。afp2 変異体種子は発芽率が野生型よりも低いが、afp2 dog1-3 二重変異体では発芽率が回復した。また、dog1-5 機能獲得変異を導入したAFP2-FLAG は発芽が完全に抑制された。これらの結果から、DOG1はAFP2の下流で機能していると考えられる。afp2 変異体の新鮮種子ではGA生合成酵素遺伝子のGA3ox1GA20ox1 、ABA異化酵素遺伝子のCYP707A2 の転写産物量が少なく、AFP2-FLAG 種子では多くなっていた。新鮮種子を4℃ 24時間の低温湿層処理すると、野生型種子やAFP2-FLAG 種子はGA3ox1GA20ox1CYP707A2 の発現量が増加するが、afp2 変異体種子ではそのような変化は見られなかった。逆に、afp2 変異体の新鮮種子や低温湿層種子ではGAの異化に関与するGA2ox2 やABA生合成に関与するNCED3NCED6 の転写産物量が増加していた。また、afp2 変異体新鮮種子はABA含量が高く、生物活性のあるGA4含量が減少しており、AFP2-FLAG 新鮮種子では逆の傾向が見られた。これらの結果から、AFP2はGA/ABA代謝を直接または間接的に変化させることで種子休眠を調節していることが示唆される。種子発芽におけるABAシグナル伝達の制御にWRKY転写因子が関与しているという報告があり、AFP2とWRKY36は共に核に局在していたことから、両者の関係について調査した。その結果、AFP2とWRKY36は核において物理的相互作用することが確認された。DOG1 とは異なり、胚発達過程でのWRKY36 転写産物量は少なく、収穫後の乾燥種子で僅かに増加し、貯蔵期間を延長したり浸漬処理をすることで発現量が増加した。wrky36 変異体種子の発芽率は野生型よりも低く、WRKY36 過剰発現形質転換体(WRKY36-GFP )新鮮種子は野生型種子よりも早く発芽した。WRKY36-GFP afp2 種子はafp2 種子よりも発芽率が高く、AFP2-FLAG wrky36 種子は一次休眠が強くなっていた。これらの結果から、WRKY36はAFP2と協調して種子の一次休眠を解除していると考えられる。wrky36 dog1-3 二重変異体新鮮種子の発芽率はdog1-3 変異体種子と同程度に高く、WRKY36-GFP dog1-5 種子の発芽率は野生型種子よりも低くなっていた。これらの結果から、種子の一次休眠に対するWRKY36の負の効果はDOG1 に依存していることが示唆される。DOG1 遺伝子プロモーター領域にはWRKY転写因子が結合するW-boxが複数存在しており、解析の結果、WRKY36はDOG1 遺伝子プロモーター領域の1番目のW-boxに結合してDOG1 の発現を抑制すること、APF2はこの発現抑制効果を高めることが判った。APF2はTOPLESS-RELATED 2(TPR2)転写コリプレッサーをリクルートしてターゲット遺伝子の発現を抑制することが知られている。野生型植物と比較して、tpr2 変異体種子は発芽率が低く、TPR2 過剰発現形質転換体(TPR2-FLAG )は高くなっていた。また、tpr2 変異体種子ではDOG1 転写産物量が多く、TPR2-FLAG 種子では少なくなっていた。dog1-3 tpr2 二重変異体の新鮮種子は発芽率が野生型よりも高く、dog1-5 tpr2 二重変異体新鮮種子は低かった。これらの結果から、TPR2はDOG1 を介して種子発芽に影響していることが示唆される。しかしながら、胚発生過程でTPR2 転写産物量は変化していなかった。TPR2-FLAG wrky36 種子は発芽率が低いことから、TPR2はWRKY36に依存して種子の一次休眠を解除していると考えられる。WRKY36-GFP tpr2 種子のDOG1 転写産物量はWRKY36-GFP 種子よりも高いこと、プロトプラスト用いた一過的発現解析において、TPR2はDOG1 発現に対するWRKY36の抑制効果を増強することから、TPR2はWRKY36と協調してDOG1 発現を抑制していると考えられる。TPR2とWRKY36は直接に物理的相互作用をしないが、AFP2がWRKY36とTPR2をつなぐアダプターとして機能し、DOG1 発現と一次休眠を阻害していることが判った。TPR2は、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)をリクルートしてターゲット遺伝子座のヒストンアセチル化量を低下させて遺伝子発現を抑制する。解析の結果、DOG1 遺伝子の近傍領域と遺伝子本体領域のヒストンH3アセチル化(H3ac)量は、tpr2 変異体新鮮種子で高く、TPR2-FLAG 種子では低くなっていた。同様に、DOG1 遺伝子座のH3ac量は、wrky36 変異体新鮮種子では高く、WRKY36-GFP 種子では低かった。しかし、TPR2-FLAG wrky36 種子またはWRKY36-GFP tpr2 種子ではDOG1 遺伝子座のH3acレベルは低く、これらの系統におけるDOG1 の発現パターンと一致した。これらの結果から、DOG1 遺伝子座におけるH3ac量の調節はTPR2とWRKY36により相互的に行われ、DOG1 発現が制御されていると考えられる。また、AFP2はWRKY36に依存したDOG1 遺伝子座のH3ac量の減少に必要であることが判った。以上の結果から、WRKY36は種子一次休眠の新規な負の制御因子であり、AFP2がTPR2とWRKY36を架橋してWRKY36/AFP2/TPR2複合体を形成し、HDACを介したDOG1 遺伝子座のH3ac量のエピジェネティック修飾を通じて、DOG1 の発現と一次休眠を制御していると考えられる。

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論文)ROOT MERISTEM GROWTH FACTOR1ペプチドによる側根発達の制御

2023-04-05 10:54:23 | 読んだ論文備忘録

ROOT MERISTEM GROWTH FACTOR1 (RGF1)–RGF1 INSENSITIVE 1 peptide–receptor pair inhibits lateral root development via the MPK6–PUCHI module in Arabidopsis
Jeon et al.  Journal of Experimental Botany (2023) 74:1475-1488.

doi:10.1093/jxb/erac495

シロイヌナズナGOLVEN(GLV)/ROOT MERISTEM GROWTH FACTORS(RGF)シグナルペプチドファミリーのRGF1/GLV11は、ロイシンリッチリピート受容体キナーゼのRGF1 INSENSITIVE(RGI)/RGF1 RECEPTOR(RGFR)によって受容され、YODA-MKK4/MKK5-MPK3/MPK6シグナル伝達カスケードを介してPLETHORA1PLT1 )/PLT2 の発現を制御することで主根分裂組織の活性と主根の成長を調節している。しかしながら、RGF1やRGIによる側根成長の制御については明らかとなっていない。韓国 全南大学校のKim らは、シロイヌナズナ芽生えにRGF1ペプチド処理をすると根の重力屈性と側根密度が低下することを見出した。側根の発達過程を観察した結果、RGF1ペプチドは側根原基の発達を阻害していることが判った。また、5つあるRGI 遺伝子の機能喪失変異体の解析から、RGI1、RGI2、RGI3は側根原基発生初期の制御に冗長に関与し、RGI1は側根原基の発達中期から後期、側根出現過程においてRGF1の主要な受容体として作用していることが判った。rgf1 変異体の側根原基数や側根密度は野生型植物と同等であり、おそらく11個あるRGF 遺伝子ファミリーが冗長的に作用しているため表現型として現れないものと思われる。側根発達時のRGF1による下流遺伝子の発現制御と各RGIの寄与を評価するため、側根発達の制御に関与しているPUCHILATERAL ORGAN BOUNDARIES DOMAIN 16LBD16 )の発現を調査した。その結果、RGF1処理はPUCHILBD16 の発現を誘導し、この誘導はrgi1 変異体、rgi1 rgi2 rgi3 三重変異体では完全に阻害されることが確認された。RGF1によるPUCHILBD16 の発現誘導は同じ時間枠で起こることから、RGF1はLBD16とは無関係にPUCHI の発現を活性化していることが示唆される。AP2/EREBP型転写因子のPUCHIは、側根原基発達の正の制御因子として機能するが、側根誘導前のPUCHI の発現は側根誘導を阻害することが知られている。側根発達過程でのPUCHI 遺伝子の発現プロファイルをGUSレポーターを用いて観察すると、GUS発現は側根原基形成初期に原基周縁部で検出され、その発現量が増加したが、伸長した側根での発現は見られなかった。一方で、RGF1処理は側根原基発生初期から伸長した側根まで強いGUS発現を誘導した。puchi-1 変異体は、側根原基密度が野生型植物よりも増加するが、伸長した側根の密度は減少する。しかし、puchi-1 変異体をRGF1処理しても側根原基の発達阻害は起こらなかった。したがって、PUCHI はRGF1-RGI1シグナル伝達モジュールの下流で作用し、側根発達阻害に関与していると考えられる。RGF1-RGI1シグナル伝達カスケードに関与しているMPK3、MPK6の変異体を解析した結果、mpk6 変異体はRGF1処理に対して非感受性で、mpk3 変異体は野生型植物と同等に応答することが判った。よって、MPK6はRGF1を介した側根原基の発達と側根出現の抑制において重要な役割を果たしていると考えられる。また、mpk6 変異体では、RGF1処理によるPUCHI の発現誘導が野生型植物やmpk3 変異体と比較して有意に低下していた。これらの結果から、PUCHI はRGF1に応答してMPK6の下流で作用し、側根発達を制御していることが示唆される。以上の結果から、RGF1ペプチド-RGI1受容体モジュールは、MPK6を介してPUCHI の発現を活性化することで側根形成を負に制御していると考えられる。

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