The Jasmonate-ZIM-Domain Proteins Interact with the WD-Repeat/bHLH/MYB Complexes to Regulate Jasmonate-Mediated Anthocyanin Accumulation and Trichome Initiation in Arabidopsis thaliana
Qi et al. The Plant Cell (2011) 23:1795-1814.
doi:10.1105/tpc.111.083261
ジャスモン酸(JA)は、虫害、傷害、病害、紫外線といった様々なストレス応答や、稔実、アントシアニン蓄積、トライコーム形成などの成長制御に関与している。JA非存在下ではJasmonate ZIM-domain(JAZ)タンパク質がJAシグナル伝達に関与する転写因子と相互作用をすることで直接転写活性を阻害している。中国 精華大学のXie らは、酵母two-hybrid(Y2H)系により、bHLH型転写因子のGlabra3(GL3)とMYB型転写因子のMYB75がシロイヌナズナJAZ1タンパク質と相互作用することを見出した。過去知見から、bHLH型転写因子のGL3、Enhancer of Glabra3(EGL3)、Transparent Testa8(TT8)、R2R3型MYB転写因子のMYB75、MYB90、MYB113、MYB114、GL1、WD-リピートタンパク質のTransparent Testa Globra1(TTG1)はWD-repeat/bHLH/MYB複合体を形成し、この複合体はアントシアニン生合成やトライコーム形成の調節因子として機能していることが知られている。そこで、これらの複合体に関与する因子がJAZタンパク質と相互作用するかをY2H系で調べたところ、bHLH転写因子のEGL3、GL3、TT8は8種のJAZタンパク質(JAZ1、JAZ2、JAZ5、JAZ6、JAZ8、JAZ9、JAZ10、JAZ11)と強い相互作用を示し、残り4種のJAZ(JAZ3、JAZ4、JAZ7、JAZ12)とは相互作用を示さないことがわかった。MYB転写因子のMYB75とGL1はJAZ1、JAZ8、JAZ11と相互作用を示し、GL1はさらにJAZ10とも相互作用を示した。また、WD-リピートタンパク質のTTG1はいずれのJAZタンパク質とも相互作用を示さなかった。この結果から、幾つかのJAZタンパク質はWD-repeat/bHLH/MYB複合体のbHLH転写因子およびMYB転写因子と相互作用を示すことが示唆される。JAZタンパク質とbHLH、MYBとの相互作用は植物体内における蛍光タンパク質再構成(BiFC)アッセイ、プルダウンアッセイによっても確認された。JAZタンパク質と相互作用を示すbHLH転写因子のMYC2はN-末端側領域でJAZタンパク質と相互作用を示すことが知られているが、今回見出されたEGL3、TT8、MYB75、GL1はMYC2とは違ってすべてC-末端側領域でJAZタンパク質と相互作用を示した。JAZタンパク質はJasドメインのあるC-末端側領域でこれらの転写因子と相互作用を示した。MYB転写因子GL1とbHLH転写因子GL3はWD-repeat/bHLH/MYB複合体を形成してトライコーム形成を制御しているが、JAZ1タンパク質はGL3とGL1との間の相互作用を抑制もしくは構造変化を引き起こしていることがわかった。同様に、アントシアニン生合成に関与しているMYB75とTT8の相互作用に対してもJAZ1タンパク質は影響していた。また、JAZ1タンパク質はTT8とMYB75のWD-repeat/bHLH/MYB複合体によるアントシアニン生合成遺伝子DFR の転写を抑制した。ドミナントネガティブなJAZ1Δ3A を発現する形質転換体やcoi1-2 変異体では、TT8/MYB75が形成するWD-repeat/bHLH/MYB複合体の直接のターゲットのDFR 、LDOX 、UF3GT といったアントシアニン生合成遺伝子の発現、GL1/GL3が形成するWD-repeat/bHLH/MYB複合体の直接のターゲットのトライコームイニシエーション因子GL2 の発現が抑制されていた。そしてこれらのWD-repeat/bHLH/MYB複合体を構成する転写因子の機能喪失変異体等の解析から、JAによるアントシアニン生合成やトライコーム形成の誘導にWD-repeat/bHLH/MYB複合体が関与しており、これらはCOI1を介してなされていることがわかった。さらに、WD-repeat/bHLH/MYB複合体を構成するbHLH転写因子やMYB転写因子をコードする遺伝子もCOI1を介してJAによって発現誘導されることがわかった。MYB75 およびbHLH転写因子遺伝子(GL3 、EGL3 )をcoi1 変異体で過剰発現させることでアントシアニンの蓄積およびトライコーム形成の回復が見られた。以上の結果から、JAによるJAZタンパク質のプロテアソーム系による分解はJAZタンパク質とbHLH転写因子やMYB転写因子との相互作用を解消させ、WD-repeat/bHLH/MYB複合体が転写活性を持つことで下流へとシグナルが流れてアントシアニン生合成やトライコーム形成が誘導されると考えられる。