A cellular analysis of meristem activity at the end of flowering points to cytokinin as a major regulator of proliferative arrest in Arabidopsis
Merelo et al. Current Biology (2022) 32:749-762.
doi:10.1016/j.cub.2021.11.069
一回結実性植物は、ある程度の数の果実が成熟すると生殖分裂組織の活動が停止して花成が止まる。この増殖停止(proliferative arrest)は、種子生産に必要な栄養素を確保するための進化的適応と考えられているが、その制御機構は明らかではない。スペイン 植物分子細胞生物学研究所(IBMCP)のFerrandiz らは、シロイヌナズナの花成期の茎頂分裂組織(SAM)を観察し、増殖停止は抽苔4~5週間後に観察され、SAMの細胞分裂活性(CYCB1;2 発現)が抽苔3週間後から低下していくこと、増殖停止は可逆的であり、果実を切取ることでSAMの活性が回復することを見出した。SAMの活性にはサイトカイニンが関与していることから、サイトカイニン蛍光センサーTCSn:GFP-ER (two-component signaling Sensor new)を導入したシロイヌナズナのSAMを観察したところ、SAMの活性低下に呼応してサイトカイニンシグナルの低下が見られることが判った。そこで、花序にサイトカイニン(N6-benzylaminopurine [BAP])を添加したところ、SAMの活性が維持されて増殖停止が抑制された。サイトカイニンはWUSCHEL (WUS )の発現を活性化することでSAMの活性を維持しており、増殖停止の際のサイトカイニンシグナル低下とSAMでのWUS 発現量の低下は連動していた。転写因子FRUITFULL(FUL)が機能喪失したful 変異体は増殖停止が起こらず、花と果実が形成され続ける。ful 変異体では、野生型植物と同じように抽苔5週間後まで花数が減少し、SAMの大きさ、細胞分裂活性、サイトカイニンシグナル、WUS 発現量が低下していくが、それ以降は、野生型植物で果実を切取った場合と同じように、SAMの細胞分裂活性、サイトカイニンシグナル、WUS 発現が再活性化され、花も少数形成された。したがって、FULはサイトカイニンに関連したSAMの活性化経路を抑制することで増殖停止を引き起こしていると考えられる。以上の結果から、生殖分裂組織の増殖停止は、初期にみられるサイトカイニンシグナルやWUSなどの下流因子の減少と、後期のFULに強く依存した完全な抑制の2つの段階によってもたらされると考えられる。