Arabidopsis PP6 phosphatases dephosphorylate PIF proteins to repress photomorphogenesis
Yu et al. PNAS (2019) 116:20218-20225.
doi:10.1073/pnas.1907540116
bHLH型転写因子のPHYTOCHROME-INTERACTING FACTOR(PIF)は光形態形成の抑制因子として機能している。脱黄化によって活性化されたフィトクロムは細胞質から核へ移動してPIFと相互作用をし、PIFのリン酸化と分解が誘導される。PIFをリン酸化するキナーゼについては様々な研究がなされているが、PIFを脱リン酸化するフォスファターゼについてはあまり知られおらず、唯一、PIF5を脱リン酸化、安定化するTOPP4が知られている。シロイヌナズナSer/Thr-specific phosphoprotein phosphatase(PPP)ファミリーのPP6サブユニットに属するFyPP1、FyPP3はフィトクロムA、Bと相互作用をし、光シグナル伝達に関与していることが知られている。中国 北京大学のDeng らは、これらのPP6フォスファターゼは光形態形成に関与しているのではないかと考え、解析を行なった。暗所で育成したfypp1(f1)fypp3(f3)二重変異体芽生えは、光形態形成の表現型を示し、胚軸が短くなり子葉が展開した。よって、PP6は光形態形成を負に制御していると考えられる。pif1 pif3 pif4 pif5(pifq)四重変異体は暗所で恒常的に光形態形成を起こすが、pifq f1 f3 変異体は、pifq 変異体、f1 f3 変異体よりも胚軸が短くなった。よって、PP6フォスファターゼとPIFは、光形態形成における胚軸伸長抑制に対して相乗的に作用していると考えられる。幾つかの実験から、FyPPとPIF3、PIF4が直接相互作用をすることが確認された。また、FyPPはPIF3、PIF4の脱リン酸化に関与していることが示された。野生型と比較して、暗所で育成したf1 f3 二重変異体芽生えのPIF4タンパク質量はわずかに減少しており、光照射によるPIF4タンパク質の分解が促進された。赤色光下で育成したf1 f3 二重変異体芽生えは野生型よりも胚軸が短いが、PIF4 を過剰発現させることで胚軸長が部分的に回復した。これらの結果から、PP6はPIF4の安定性を制御していることが示唆される。変異体を用いたトランスクリプトーム解析から、PIF4の直接のターゲットとなっている遺伝子のうちの266遺伝子はPP6によっても発現が制御されていることがわかった。以上の結果から、PP6によるPIFタンパク質の脱リン酸化は、PIFタンパク質を安定化させることで暗所での光形態形成を抑制していると考えられる。