Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)クリプトクロム1、フィトクロムBとARFとの相互作用

2020-02-18 22:11:11 | 読んだ論文備忘録

Photoexcited CRY1 and phyB interact directly with ARF6 and ARF8 to regulate their DNA-binding activity and auxin-induced hypocotyl elongation in Arabidopsis
Mao et al.  New Phytologist (2020) 225:848-865.

doi: 10.1111/nph.16194

青色光受容体のクリプトクロム1(CRY1)と赤色光受容体のフィトクロムB(phyB)は、光受容するとauxin/indole acetic acidタンパク質(Aux/IAA)と相互作用をして、オーキシンによって誘導されるTIR1とAux/IAAとの相互作用を妨げてオーキシンシグナル伝達を阻害することが知られている。中国 上海師範大学のYang らは、CRY1は青色光に依存してAuxin Response Factor(ARF)のARF6、ARF8と相互作用をし、phyBも赤色光に依存してARF6、ARF8と相互作用することを見出した。この相互作用はARF6、ARF8のDNA結合を阻害し、IAA7、IAA17はCRY1、phyBによるARF6、ARF8のDNA結合活性阻害を増強させた。また、CRY1、phyBはIAAタンパク質とARF6、ARF8との相互作用を強めた。シロイヌナズナにはオーキシンによって活性化されるARF6ターゲット遺伝子(AUAT遺伝子)が255ある。青色光および赤色光は、CRY1およびphyBを介してAUAT遺伝子の発現を抑制した。CRY1は41.5%(105)のAUAT遺伝子の発現を抑制し、この中にはオーキシンやブラシノステロイドのシグナル伝達に関与する遺伝子、胚軸伸長に関与する遺伝子が含まれていた。phyBは22.0%(56)のAUAT遺伝子の発現を抑制し、この中にはオーキシンシグナル伝達や胚軸伸長に関与する遺伝子が含まれていた。以上の結果から、CRY1とphyBはARFタンパク質と相互作用をすることでオーキシン応答遺伝子の発現を直接抑制し、オーキシンが誘導する胚軸伸長を阻害していると考えられる。

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論文)側根の発達とプラズモデスマータ

2020-02-14 05:21:50 | 読んだ論文備忘録

Auxin-dependent control of a plasmodesmal regulator creates a negative feedback loop modulating lateral root emergence
Sager et al.  Nature Communications (2020) 11:364.

doi:10.1038/s41467-019-14226-7

側根原基(LRP)の発達・出現は、LAX3やPIN3といったオーキシンキャリアによる原基から周囲の細胞へのオーキシンの流れが関与している。一方で、オーキシンはプラズモデスマータ(PD)によっても細胞間輸送される。オーキシンによってLRPの出現が誘導される際、可逆的なカロース蓄積の変化が見られ、カロースはPD輸送を抑制することが知られている。しかしながら、LRPの出現とPDを介したオーキシン輸送の変化が関連しているかについては明らかとされていない。米国 デラウェア大学Lee らは、PDのカロース蓄積を促進する受容体様膜貫通タンパク質をコードするPLASMODESMATA-LOCATED PROTEINPDLP5 がLRPを覆う細胞層で発現しており、この発現プロファイルはLAX3 の発現プロファイルと類似していることを見出した。PDLP5 の発現はオーキシン処理によって増加した。また、PDLP5 の発現は、LRP形成が抑制されるiaa28-1 変異体ではほとんど見られず、異所的にLRPが誘導されるshy2-2 変異体では発現量が増加していた。shy2-2 変異体では発達後期のLRPが見られないが、SHY2が活性を阻害しているARF19がPDLP5 遺伝子プロモーターに結合することが確認された。よって、側根出現時にLRPを覆う細胞でのPDLP5 の発現には、オーキシンが必要であり、それにはIAA28やARF19が関与していると考えられる。PDLP5 を過剰発現させた形質転換体は、対照と比較して二次根、三次根が少なく、pdlp5 変異体は多くなっていた。これはLRPの発達後期の成長速度の違いによるものであった。したがって、PDLP5はLRPの出現を負に制御していることが示唆される。また、オーキシンレポーターを用いた解析から、PDLP5 はLRP出現の際にLRPを覆う細胞層へのオーキシンの拡散を負に制御していることが確認された。以上の結果から、プラズモデスマータの物質輸送を制御しているPDLP5は側根原基を覆う細胞においてオーキシンの輸送を負に制御するフィードバックループを形成していると考えられる。

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論文)AP2/ERF転写因子による根の再生

2020-02-09 08:53:01 | 読んだ論文備忘録

AP2/ERF Transcription Factors Integrate Age and Wound Signals for Root Regeneration
Ye et al.  Plant Cell (2020) 32:226-241.

doi:10.1105/tpc.19.00378

マイクロRNA156(miR156)がターゲットとしているSQUAMOSA PROMOTER BINDING PROTEIN-LIKE(SPL)転写因子は、シュート再生を抑制することが知られている。miR156は根の再生にも関与していることが報告されているが、詳細な機構は明らかとされていない。中国科学院上海生命科学研究院植物生理生態研究所Wang らは、シロイヌナズナ切り葉からの根の再生において、植物体の齡が進むにつれて発根能力が低下し、miR156量も低下することを見出した。MIM156 を過剰発現させてmiR156の機能を抑制すると発根は抑制され、逆にmiR156を過剰発現させると発根が促進された。miR156のターゲットとなるSPL 遺伝子のうち、SPL2SPL10SPL11 の機能喪失二重、三重変異体は発根が促進され、miR156耐性型のSPL10rSPL10 )を発現させた形質転換体は発根が抑制された。よって、SPL2/10/11 は根の再生に関与していると考えられる。spl2 spl10 spl11 三重変異体の葉はIAAの蓄積量が多く、rSPL10 発現個体はIAA蓄積量が少なく、IAA生合成関連遺伝子の発現量が低下していた。また、rSPL10 発現個体にIAAを添加すると発根量が増加した。したがって、SPL2/10/11はオーキシンを介して発根能力を制御していると考えられる。RNA-seq解析、ChIP-seq解析の結果、SPL10は傷害応答に際して3000以上の植物ホルモンや植物生理に関与する遺伝子の発現に影響しており、233遺伝子は傷害によって誘導されSPL10によって抑制されていた。このうち28遺伝子は転写因子をコードしており、それらは12種類の転写因子ファミリーに分類された。SPL10が直接のターゲットとしている8つのAP2/ERF 転写因子遺伝子のうち、ABSCISIC ACID REPRESSOR1ABR1 )とERF109 は、変異体の解析から発根に関与していることが確認された。以上の結果から、植物の齡や傷害に応答した根の再生にはAP2/ERF転写因子が関与していると考えられる。

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