The APC/CTE E3 Ubiquitin Ligase Complex Mediates the Antagonistic Regulation of Root Growth and Tillering by ABA and GA
Lin et al. Plant Cell (2020) 32:1973-1987.
DOI: https://doi.org/10.1105/tpc.20.00101
イネTILLER ENHANCER(TE)はANAPHASE-PROMOTING COMPLEX/CYCLOSOME(APC/C) E3ユビキチンリガーゼ複合体の活性化因子であり、GRAS転写因子のMONOCULM1(MOC1)の分解を促進することで分けつを抑制する。また、TEはアブシジン酸(ABA)受容体OsPYL/RCAR10(R10)の分解を促進することで、種子発芽を促進する。ABAはSNF1関連タンパク質キナーゼSnRK2を活性化してTEのS77残基をリン酸化を促進してTEとABA受容体との相互作用を抑制するが、ジベレリン(GA)はSnRK2活性を阻害する。したがって、APC/CTEはGAとABAのシグナル伝達において拮抗的に作用する。中国農業科学院 作物科学研究所のWan らは、TE を過剰過剰発現させたイネ(OE)は分けつが減少することに加えて根が短くなることを見出した。このことから、APC/CTEは根の成長も制御していることが示唆される。GAは、根端分裂組織(RM)および腋芽分裂組織(AM)の大きさを抑制することで、根の成長と分けつを抑制し、ABAはRMとAMの大きさを維持することで根の成長と分けつを促進していた。そして、ABAとGAの拮抗的な作用にAPC/CTEが関与していた。シロイヌナズナGRASファミリー転写因子のSHORT-ROOT(SHR)とSCARECROW(SCR)は、根端分裂組織の幹細胞の維持に関与していることが知られている。SHRのイネホモログOsSHR1にはTEによって認識されるD-boxモチーフが含まれており、TEはOsSHR1と相互作用をすること、OsSHR1はte 変異体で蓄積していること、プロテアソーム阻害剤MG132の添加によりOsSHR1の分解が抑制されることがわかった。これらの結果から、OsSHR1はAPC/CTEの基質であることが示唆される。RNAiでOsSHR1 をノックダウンしたイネは根が短く草丈が高くなり、分解を受けない変異型OsSHR1(OsSHR1-mD)を発現させたイネは根が長く草丈が低くなった。OsSHR1 RNAiイネはRMの細胞分裂と大きさが減少しており、OsSHR1-mDイネでは増加していた。OsSHR1-mDイネではGA処理による根の成長抑制がみられず、OsSHR1 RNAiイネではABA処理による成長促進がみられなかった。これらの結果から、OsSHR1は根の成長の正の制御因子として機能し、ABAとGAの拮抗的制御に関与していると考えられる。ABA処理をすることで野生型イネの根のOsSHR1タンパク質量が安定化したが、OEでは減少した。また、GA処理は野生型イネのOsSHR1量を減少させたが、te 変異体では減少しなかった。地上部のMOC1タンパク質量も同様の変化を示した。よって、ABAとGAはAPC/CTEを介したOsSHR1およびMOC1の分解を拮抗的に制御することで根の成長および分けつを制御していることが示唆される。ABAによって活性化されたSnRK2によるTEのS77残基のリン酸化は、OsSHR1とMOC1との結合を抑制し、GAがSnRK2を不活性化することでOsSHR1、MOC1との結合が促進されることがわかった。以上の結果から、APC/CTEはABAとGAのシグナル伝達のクロストークを介したイネの形態の制御において重要な役割を果たしていると考えられる。