Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits
Atamian et al. Science (2016) 353:587-590.
DOI: 10.1126/science.aaf9793
Perspective
How do sunflowers follow the Sun - and to what end?
Winslow R. Briggs Science (2016) 353:541-542.
DOI: 10.1126/science.aah4439
植物は光の入射方向に応答して成長する方向を変化させる光屈性を示す。この成長方向の変化は、フォトトロピンによる青色光の受容と、そのシグナルを受けて生じるオーキシンの非対称分布を介した成長量の差によってもたらされる。ヒマワリは向日性もしくは太陽追尾と呼ばれる光屈性を示し、葉および茎頂が太陽の動きを追尾するようにダイナミックに方向を変化させ、夜間に方向を戻して夜明け前には東を向く。米国 カリフォルニア大学デイビス校のHarmer らは、鉢植えしたヒマワリを用いて、1)毎晩鉢の向きを変え、朝に植物体が西を向いているようにする、2)茎を固定して太陽追尾が出来ないようにする、という2種類の方法でこの運動を抑制したところ、このような処理をした個体は乾物重量と葉面積が10%程度減少することを見出した。よって、太陽追尾は植物体の成長を促進すると考えられる。夜間の茎頂の運動は、真夏に合わせて暗期を短くした場合(16L:8D)は秋分に合わせて暗期を長くした場合(12L:12D)よりも速く動き、どちらの条件においても夜明け前には茎頂が完全に東側を向いていた。14L:10D条件で野外で鉢栽培し向日性を示すヒマワリを恒常的に真上から光照射する人工気象器で育成すると、数日間は追尾運動を維持した。日中の太陽の動きを模して四方向から青色光を照射できる人工気象器を用いて、16L:8D条件から20L:10Dの30時間周期にして育成すると、明期の終わりに西を向く動きが見られなくなり、再び24時間周期に戻すと運動が回復した。したがって、概日時計がヒマワリの太陽追尾をもたらしていると考えられる。ヒマワリは成熟するにつれて向日性運動の振幅が減少していった。ジベレリン(GA)合成能を欠いたdwarf2 (dw2 )変異体は茎が非常に短く、検出されうる向日性を示さないが、GAを外部から与えると一過的に伸長と向日性が回復した。したがって、茎の伸長が向日性において重要であると考えられる。太陽追尾をしているヒマワリの茎は、東側の成長率が日中に高くて夜間に低く、西側の成長率が日中に低くて夜間に高くなっていた。したがって、日中に茎の西側よりも東側で成長率が高いことが、茎頂を東から西へと漸進的に動かし、夜間の西側の成長率の高さが夜明けに茎頂を東に向かせていると考えられる。人工気象器において16L:8D条件で真上から光照射すると、茎の伸長率は日中よりも夜間に高くなり、太陽追尾している茎の西側と類似していた。よって、向日性は。茎の西側での通常の成長と東側で見られる環境に応じた成長の2つの成長様式によってもたらされていると考えられる。太陽追尾運動に概日時計が関与していることから、時計遺伝子LATE ELONGATED HYPOCOTYL およびTIMING OF CAB EXPRESSION の発現周期を茎の東側と西側とで比較したが、差異は見られなかった。しかし、光屈性に関与する遺伝子の発現は異なっており、INDOLE-3-ACETIC ACID19 (IAA19 )は夜間に西側で発現が高くなり、SMALL AUXIN-UPREGULATED50 (SAUR50 )の発現は日中に東側で高くなっていた。よって、太陽追尾の周期は、茎の両側において青色光受容体と概日時計から発せされたオーキシンシグナルの統合された制御によって生み出されているものと思われる。一般に、若いヒマワリは太陽追尾をするが、花の発達の最終段階もしくは開花期の茎頂は太陽追尾を止めて常に東側を向いている。この時期の植物は茎の伸長が緩やかになり、茎頂は朝には東を向くが日中に西を向く度合いが低下する。16L:8D条件で育成した若いヒマワリの各時間帯での光屈性応答を見ると、朝は午後や夜間よりも応答性が強くなっていた。したがって、午後や夜間の光屈性の低下と、植物の成熟に伴った西側への運動の減少が組み合わさり、ヒマワリの花盤は開花期に東側を向くものと思われる。ヒマワリの花盤が東側を向くことの生態学的な利点があるのだろうか。舌状花弁が出現する直前のヒマワリを東側もしくは西側に向かせ、花盤の表面温度を見ると、東向きの花盤は西向きの花盤よりも朝の温度上昇が早く、ポリネーターの訪花回数も5倍多くなっていた。また、西側を向いた花盤をヒーターで加温して温度条件を東向きの花と同じにすると、訪花回数は加温していない西向きの花よりも多くなったが、東向きの花よりは少なかった。したがって、花の向きの違いによるポリネーターの誘引性の違いにおいて、温度は直接に貢献しているが、唯一の決定要因ではないと思われる。以上の結果から、若いヒマワリの太陽追尾は成長促進をもたらし、開花したヒマワリの花盤が東を向くことは生殖行動にとって利点となっていると考えられる。
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