Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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植物観察)春の北海道 野幌

2014-04-29 22:46:24 | 植物観察記録

今日は野幌森林公園へ来ました。バイケイソウは葉の展開が始まった集団もあれば、まだ葉が閉じている集団もあり、これは場所による雪解け時期の違いが影響しているのかもしれません。花としては、ザゼンソウ、ミズバショウ、フクジュソウ、エンレイソウが見られました。

 

葉の展開が始まったバイケイソウ

 

こちらのバイケイソウはまだ葉が展開していない

 

ザゼンソウ

 

エンレイソウ 野幌のエンレイソウはやや小ぶり

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植物観察)春の北海道 旭川

2014-04-28 22:41:51 | 植物観察記録

今日は旭川へバイケイソウ観察に行きました。この調査地はカタクリで有名なところで、昨年の同じ時期は蕾の個体ばかりでしたが、今年は多くの個体が開花していました。バイケイソウの成長も順調で、一斉開花の翌年に花成個体数がどのくらいになるのか5月末に再び訪れて観察しようと思います。カタクリ以外の花としては、エゾエンゴサク、フクジュソウ、ヒメイチゲ、ナニワズが見られました。

 

バイケイソウは順調に成長していた

 

今年はカタクリの花を見ることが出来ました

 

フクジュソウもまだ咲いていました

 

エゾエンゴサク

 

ヒメギフチョウを見ることが出来ました

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植物観察)春の北海道 稚内

2014-04-27 22:40:35 | 植物観察記録

稚内の海岸草原へバイケイソウ集団の観察に行ってきました。昨年の一斉開花によって各群生で今年芽を出したラメット数がどのくらい増えたかを調べました(調査した群生数は19、群生の前年のラメット数は7~45)。花成したラメットは翌年に最大3つの子ラメット(腋芽)を作るので、群生の全ラメットが花成すれば翌年にはラメット数は3倍になるはずです。しかし、そのような群生はなく、最大でも1.89倍の増加、平均すると1.35倍の増加となっていました。また各群生の前年のラメット数、花成ラメット数と今年出芽したラメット数から花成ラメットが幾つの子ラメットを作ったことになるかを群生毎に推計すると、最も少なかった群生は0.89(子ラメットを作らずに枯れたラメットがある?)で、最も多い群生は2.38、群生平均では1.58でした。この数字は、2013年に箱根で花成ラメットが今年作った子ラメット数の平均値(未確定だが1.43)とほぼ一致しています。したがって、昨年の一斉開花によって群生は1.5倍程度のクローン成長をしたことになります。一斉開花ではない通常の年に幾つのラメットが花成し、子ラメットを幾つ作るのかは判りませんが、クローン成長のよるラメット数の増加はかなりの年月がかかっているものと思われます。詳細は改めて報告いたします。

 

稚内海岸草原のバイケイソウ群生地

 

今年のバイケイソウの出芽は昨年と比べるとやや遅いように思われる

 

稚内から少し足を伸ばしてミズバショウの群落を見に行きました

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論文)STENOFOLIA転写抑制因子による葉身拡大機構

2014-04-21 22:48:00 | 読んだ論文備忘録

STENOFOLIA Recruits TOPLESS to Repress ASYMMETRIC LEAVES2 at the Leaf Margin and Promote Leaf Blade Outgrowth in Medicago truncatula
Zhang et al.  The Plant Cell (2014) 26:650-664.
doi:10.1105/tpc.113.121947

タルウマゴヤシ(Medicago truncatula )のWUSCHEL関連ホメオボックス(WOX)転写抑制因子のSTENOFOLIA(STF)は、細胞分裂を促進することで葉身の拡大において重要な役割を演じているが、詳細な分子機構は明らかとなっていない。米国 オクラホマ州立大学Tadege らは、野生タバコ(Nicotiana sylvestris )のWOXファミリー遺伝子が機能喪失して葉身が細くなったlaminaless1lam1 )変異体を用いてSTFによる葉身拡大の分子機構を解析した。STFタンパク質のアミノ酸配列を他植物と比較して、N-末端ドメイン(NTD)、ホメオドメイン(HD)、中間ドメイン(MD)、WUS boxとSTF boxの2つの保存されたモチーフを有するC-末端ドメイン(CTD)の4つに区分し、何れかのドメインが欠失したタンパク質をlam1 変異体で発現させて、表現型が相補されるかを調査した。その結果、NTDもしくはMDが欠失したSTF を発現させたlam1 変異体は完全なSTF を発現させた個体と比べてやや葉身が細くなり波打つがlam1 変異を相補し、NTDとMDの両方を欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では相補の程度が弱くなった。一方、HDもしくはCTDを欠失したSTF を発現させたlam1 変異体では表現型の相補は見られなかった。したがって、HDを介したDNAとの結合およびCTDを介した相互作用はSTF の機能にとって必須であると考えられる。CTDのWUS boxとSTF boxのSTF活性に対する貢献度を一過的転写抑制実験系を用いて調査したところ、WUS boxのみの変異およびSTF boxのみの変異は部分的な転写抑制活性を示し、WUS boxとSTF boxの両方に変異がある場合にはSTFの転写抑制活性が失われた。よって、STFが転写抑制活性を示すためにはWUS boxとSTF boxの両方が必要であると考えられる。CTDドメインを欠いたSTF(STFdel)がlam1 変異を相補しなかったのは転写抑制活性が失われたためと考えられる。そこで、STF-delにEARモチーフリプレッションドメインSRDXを付加した融合タンパク質(SRDX-STFdel)をlam1 変異体で発現させたところ、表現型が相補された。したがって、転写抑制活性がSTFの機能にとって重要であることが示唆される。STFdelにWUS boxもしくはSTF boxを付加した融合タンパク質によるlam1 変異体の表現型相補を見たところ、STFdel-STF-boxはSTFdel-WUS-boxよりも相補の程度が高かった。よって、葉身拡大においてSTF boxはWUS boxよりも重要であると思われる。BLAST検索の結果、STF boxの保存された10アミノ酸(QFIEFLPLKN)は双子葉植物においてのみ見られ、単子葉植物、裸子植物、非維管束植物では見られなかった。葉身の拡大におけるSTFを介した転写抑制の分子機構を解析するために、STFと相互作用をするタンパク質を酵母two-hybridスクリーニングによって探索したところ、シロイヌナズナのTOPLESS(TPL)タンパク質と83%相同性のあるタルウマゴヤシタンパク質が見出され、これをMt-TPLと命名した。STFとMt-TPLとの相互作用はBiFCアッセイやプルダウンアッセイによっても確認された。また、Mt-TPLはCTDを欠失したSTFとは相互作用を示さなかった。よって、Mt-TPLとの相互作用はSTFの転写抑制活性にとって重要であると考えられる。Mt-TPLは単独のCTDとは相互作用を示さなかったが、MDもしくはHDと融合したCTDとは相互作用を示した。したがって、STFのCTDはMt-TPLとの相互作用に必須であり、HDもしくはMDは相互作用の安定化に必要であることが示唆される。また、STFとMt-TPLとの相互作用にはSTF boxとWUS boxの両方が必要であることがわかった。STFとの相互作用に必要なMt-TPLのドメインを調査したところ、LiSHドメイン、CTLHドメイン、Pro-リッチドメインを含んでいるN-末端領域が相互作用に関与し、特にPro-リッチドメインが重要であることがわかった。STFdelとMt-TPLとのキメラ融合タンパク質をlam1 変異体で発現させたところ表現型が相補された。このことから、STFによる葉身拡大にはコリプレッサーのTPLが必要であり、STFのWUS boxとSTF boxはTPLとの相互作用に関与している考えられる。過去の調査において、stf 変異体ではLOBドメインタンパク質をコードする遺伝子の発現量が高いことが知られている。シロイヌナズナASYMMETRIC LEAVES2AS2 )遺伝子は葉身発達に関与するLOBドメインを含んだ向軸側の因子をコードしている。そこで、タルウマゴヤシのAS2 ホモログ(Mt-AS2 )の発現量を見たところ、stf 変異体では野生型の2倍の発現量があり、STF 過剰発現個体では発現量が1/5になっていることがわかった。よって、STFAS2 の発現を抑制している可能性がある。葉原基において、AS2 は向軸側で発現しており、STF の発現している葉縁や葉肉では発現していない。しかし、stf 変異体ではAS2 は葉縁部においても発現していた。よって、STFは葉縁部でのMt-AS2 の発現を抑制していることが示唆される。STFがMt-AS2 遺伝子のプロモーター領域に直接結合して転写活性を抑制しているのかをクロマチン免疫沈降やゲルシフトアッセイによって調査したところ、STFはAS2 プロモーターの複数の領域に結合しうることがわかった。さらに、一過的発現抑制実験により、STFのHDとCTDがMt-AS2 の発現抑制に必要であることがわかった。また、シロイヌナズナtpl1 変異体プロトプラストを用いた一過的発現抑制実験から、STFによるMt-AS2 プロモーター活性の抑制にはTPLが必要であることがわかった。野生型タルウマゴヤシでRNAiによってMt-AS2 を発現抑制すると葉身が広くなり、stf 変異体で発現抑制するとstf 変異体の葉身が細く鋸歯の無い葉縁となる表現型が部分的に回復した。よって、AS2 の異所的な発現がstf 変異体の細い葉身となる表現型に関与していることが示唆される。Mt-AS2 を野生タバコで過剰発現させると、葉身は様々な形態を示し、極度に湾曲したものから針状葉になるものまで見られた。また、lam1 変異体でMt-AS2 を過剰発現させると表現型がさらに極端になり、短く且つ直立した葉となった。以上の結果から、タルウマゴヤシSTFは、WUS boxとSTF boxを介してコリプレッサーのTOPLESSと物理的相互作用をし、葉縁部でのAS2 の発現を抑制することで葉の拡大を促進していると考えられる。

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植物観察)箱根

2014-04-19 20:25:30 | 植物観察記録

箱根へ植物観察に行ってきました。事前に見た天気予報では晴れとのことだったのですが、太陽は姿を見せず、空気はかなり冷え込んでいました。花としては、花木ではアセビ、草花ではハナネコノメが見られました。キクザキイチゲはまだ蕾の状態で、花が盛りとなるのはゴールデンウイーク頃と思われます。バイケイソウは大部分の芽が地上へと出て、葉が展開し始めていました。

 

バイケイソウは葉の展開が始まりました

 

アセビ

 

ハナネコノメ 天気が悪いためか気温が低いためか、花弁は閉じ気味

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論文)DELLAタンパク質による葉の老化制御

2014-04-14 22:17:47 | 読んだ論文備忘録

Removal of DELLA repression promotes leaf senescence in Arabidopsis
Chen et al.  Plant Science (2014) 219-220:26-34.
doi: 10.1016/j.plantsci.2013.11.016

葉の老化は、葉の発達過程の最終段階であり、細胞構造の崩壊、代謝、老化関連遺伝子(SAG)の発現にその特徴が見られる。植物ホルモンのうち、アブシジン酸、ジャスモン酸、エチレン、サリチル酸は葉の老化に対して促進的に作用し、オーキシンとサイトカイニンは老化を遅延させる。しかしながら、葉の老化におけるジベレリン(GA)の役割については明らかとなっていない。中国 浙江大学Jiang らは、シロイヌナズナの葉の老化におけるGAの役割を解明するために、GAシグナル伝達の抑制因子であるDELLAのうちGA INSENSITIVE(GAI)、REPRESSOR OF GA1-3(RGA)、RGA-LIKE1(RGL1)、RGA-LIKE2(RGL2)が機能喪失した変異体(Q-DELLA )およびGA生合成能が欠失したga1-3 変異体を用いて解析を行なった。Q-DELLA /ga1-3 変異体は野生型よりも草丈が高く、ga1-3 変異体は非常に草丈が低くなる。葉の老化の視覚的な指標として黄変を見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体のロゼット葉は移植33日後に周縁部に黄変が現れ、55日後には葉全体に広がった。一方、野生型では葉の緑は維持されており、ga1-3 変異体は野生型よりも緑色が維持された。野生型植物の葉をGA処理すると、無処理葉よりも有意に早く老化が起こった。老化特異的遺伝子であるSAG12 およびSAG29 の発現パターンを見たところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉でのSAG 遺伝子転写産物量は老化過程において野生型よりも高くなっており、ga1-3 変異体では野生型よりも低くなっていた。葉の老化過程において、クロロフィル含量は移植33日後、乾燥重量は移植40日後に最大となり、その後減少していく。Q-DELLA /ga1-3 変異体の葉のクロロフィル含量および乾燥重量は常に野生型よりも低く、ga1-3 変異体では常に高くなっていた。葉の老化が進むにつれて可溶性糖類の含量が増加するが、野生型の糖含量はga1-3 変異体よりも高く、Q-DELLA /ga1-3 変異体の糖含量は野生型よりも高くなっていた。葉の脂肪酸含量は野生型とQ-DELLA /ga1-3 変異体では移植33日後に最大となり、ga1-3 変異体では40日後に最大となり、その後は何れの遺伝子型においても減少していったが、野生型の脂肪酸含量は常にQ-DELLA /ga1-3 変異体よりも高く、ga1-3 変異体よりも低くなっていた。脂肪酸組成を比較したところ、Q-DELLA /ga1-3 変異体では不飽和度の高いリノレン酸(C18:3)の含量が野生型やga1-3 変異体よりも少なく、飽和脂肪酸のパルミチン酸(C16:0)はQ-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも多く、ga1-3 変異体では少なくなっていた。そこで、脂肪酸β-酸化に関与する酵素遺伝子の発現を見たところ、ga1-3 変異体では野生型よりも低く、Q-DELLA /ga1-3 変異体では野生型よりも高くなっていた。DELLAの機能喪失によって葉の老化を制御しているホルモンのシグナル伝達に関与している遺伝子発現に変化が見られるかを調査したところ、EDS1EDS16OPR3RNS1EAT1EIN3NIT2OSM34 の転写産物量はQ-DELLA /ga1-3 変異体において野生型やga1-3 変異体よりも高く、COS1ga1-3 変異体において高くなっていた。以上の結果から、DELLAタンパク質によるGAシグナルの抑制は、葉の老化を遅延させていると考えられる。

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植物観察)箱根

2014-04-09 22:35:51 | 植物観察記録

今年初めての箱根バイケイソウ観察に行ってきました。今回は昨年花成した個体が子ラメットを幾つ作るかをメインに観察してきました。まだ集計途中ですが、調査した限りでは、半数以上の花成個体で出芽した子ラメットは1つであり、子ラメットを3つ出芽させていた個体は僅かでした。したがって、昨年の一斉開花で花成した個体の子ラメット形成によるクローン増殖の程度は、私が観察したエリアにおいてはそれほど高くはない(1.5倍程度?)と思われます。最終的な結果が出ましたら、まとめて報告したいと思います。ちなみに、今年の植物の成長はバイケイソウを含めて平年並みで、まだ春の花は何も咲いていませんでした。

 

この写真では3つの芽が見えますが、手前は昨年花成した個体から形成された1つの子ラメットで、奥の2つは花成個体から形成された2つの子ラメットです。昨年花成した2個体は、その前の花成によって1つの親株から形成された2つの子ラメットであったのかもしれません。

 

出芽して間もない芽なのでしょうか、まだ緑化していない部分があります。黄化部分が横縞になっているのはどういう理由からなのでしょうか?

 

日当たりの良い場所では徐々に葉の展開も始まっていました

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論文)ヨーロッパに侵入したブタクサの特性

2014-04-05 17:19:45 | 読んだ論文備忘録

Germination and seedling frost tolerance differ between the native and invasive range in common ragweed
Leiblein-Wild et al.  Oecologia (2014) 174:739-750.
DOI 10.1007/s00442-013-2813-6

侵略的外来種は全世界において生物多様性に対する大きな脅威とみなされている。また、その脅威は気候変動によって拡大している。ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia L.)は北アメリカ原産の一年草で、ヨーロッパには19世紀に小麦や農産物に混入して進入した。現在では鳥の餌が最も大きな進入経路となっている。ブタクサは、多くのヨーロッパ諸国において、農耕地、道端や建設現場のような荒地で生育しており、南東ヨーロッパ、ポー川流域、南フランスを中心に分布している。ブタクサは他の一年生植物に比べてライフサイクルが長く、早くに発芽し、痩果は10月まで成熟しない。よって早春に発芽した芽生えは霜に当たることがある。このことから、異なる地域のブタクサ集団は成長や開花のフェノロジーのような生活史に違いがあり、遺伝的に高度に多様化していることが推測され、発芽特性や霜耐性にある程度の変動があると思われる。ドイツ 生物多様性と気象研究センター(BiK-F)Leiblein-Wild らは、ヨーロッパに進入したブタクサ集団と自生地である北アメリカの集団の発芽特性と霜耐性について調査した。ヨーロッパの17地域と北アメリカの10地域の集団の種子を5℃から25℃まで5℃間隔の温度条件で発芽させたところ、ヨーロッパ進入集団も北アメリカ自生集団も15℃で発芽率が最も高く、それ以上およびそれ以下の温度条件では発芽率が低下した。また、全ての温度条件において進入集団は自生集団よりも高い発芽率を示した。また、種子が50%発芽するまでの日数(T50)は全ての温度条件で進入集団よりも自生集団のほうが長く、低温(5℃)条件では5.9日、発芽至適温度(15℃)で24.0日、高温(25℃)条件では17.8日長かった。各集団の発芽至適温度を見ると、13.8℃から21.8℃の間にあり、両集団で有意な差は見られなかった。発芽最高温度は23.6℃から40.3℃の間にあり、進入集団のほうが高く、発芽最低温度は平均3.1℃で進入集団のほうが低かった。したがって、進入集団は発芽温度の幅が自生集団よりも広い。最終的な発芽率は、全集団の平均で70.1%であり、進入集団のほうが高かった。次に、11の進入集団と12の自生集団の芽生えに、春の夜に霜が降りる状態を模倣して2℃ 9時間、-5℃ 6時間、2℃ 9時間の順に処理をして霜耐性を評価したところ、進入集団(37.0±12.8%)は自生集団(23.3±7.8%)よりも耐性が高く、自生集団の耐性の変動の幅(12.9から36.8%)は進入集団の変動幅(7.9から56.8%)よりも狭くなっていた。試験に使用した両集団の種子重量と最終的な発芽率、霜耐性の間には正の相関が見られたが、最低発芽温度とT50については種子重量との相関は見られなかった。両集団の採種地の環境要因(緯度、経度、平均気温、春期霜害リスク)と発芽特性との相関を見たところ、自生集団では最終的な発芽率と経度との間に負の相関があり、東部の大洋に近い集団は発芽率が低かった。しかし、進入集団の発芽特性は環境要因との相関は見られなかった。霜耐性に関しては、自生集団においては春期霜害リスクと強い正の相関が見られたが、進入集団では環境要因との相関は見られなかった。以上の結果から、ブタクサヨーロッパ進入集団は北アメリカ自生集団よりも発芽率、芽生えの成長速度、霜耐性、発芽温度領域において優れており、これらの特性はブタクサと他植物との競争に有利に作用し、ヨーロッパへの侵入に成功をもたらしていると考えられる。

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