The transcription factor WRKY75 positively regulates jasmonate-mediated plant defense to necrotrophic fungal pathogens
Chen et al. Journal of Experimental Botany (2021) 72:1473–1489.
doi:10.1093/jxb/eraa529
いつかのWRKY転写因子は植物の防御応答に関与していることが知られているが、その詳細な機構は明らかとなっていない。中国科学院 西双版納熱帯植物園のYu らは、シロイヌナズナのWRKY 遺伝子のT-DNA挿入変異体もしくはRNAi系統に糸状菌Botrytis cinerea を感染させた際の応答性を調査し、wrky75 変異体では壊死症状が急速に進行することを見出した。また、WRKY75 を恒常的に過剰発現させた系統は壊死性病原菌に対する耐性が高まり、病害の発生が抑制された。これらの結果から、WRKY75は壊死性病原菌に対する植物の防御に重要な役割を果たしていると考えられる。ジャスモン酸(JA)シグナルに応答して発現する防御応答関連遺伝子のOCTADECANOID-RESPONSIVE ARABIDOPSIS遺伝子(ORA59 )とPLANT DEFENSIN遺伝子(PDF1.2 )のB. cinerea 感染後の発現は、wky75 変異体で減少し、WRKY75 過剰発現系統で増加していた。WRKY75 の発現はB. cinerea の感染により強く誘導された。また、サリチル酸、エチレン、JA処理によっても誘導が起こり、エチレンとJAを組み合わせて処理することで誘導が強くなった。WRKY75はORA59 遺伝子プロモーター領域に直接結合して発現を活性化していた。WRKY75と相互作用をするタンパク質を酵母two-hybrid(Y2H)系でで探索したところ、JAZ8が見出され、JAZ4、JAZ7、JAZ9も相互作用をすることが判った。そして、JAZタンパク質はWRKY75による転写活性化を抑制することが確認された。JAZ8 の発現はB. cinerea の感染により強く誘導された。jaz8 変異体の病害抵抗性は野生型と同等であったが、JAZ8 過剰発現系統はB. cinerea の感染に対する感受性が高まり、ORA59 やPDF1.2 の発現誘導が抑制された。wrky75 変異体はJAによる種子発芽阻害や根の伸長抑制に対して感受性が低下し、WRKY75 過剰発現系統では感受性が高くなっていた。よって、WRKY75はJA応答の重要な正の制御因子として機能していると考えられる。以上の結果から、WRKY75はジャスモン酸を介した壊死性病原菌に対する防御応答において重要な役割を果たしていると考えられる。