Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
ホームページの更新情報

論文)FLCの発現リセット機構

2017-12-30 08:25:59 | 読んだ論文備忘録

Embryonic epigenetic reprogramming by a pioneer transcription factor in plants
Tao et al. Nature (2017) 551:124-128.

doi:10.1038/nature24300

越冬一年生植物のシロイヌナズナは、冬の低温暴露(春化処理)によって花成を抑制するFLOWERING LOCUS CFLC )の発現がエピジェネティックにサイレンシングを起こし、春には花を咲かせる。FLC は成熟した花粉や卵細胞では発現していないが、胚の発達初期には発現が見られる。しかしながら、胚発生のどの過程でFLC の発現の活性化が起こるのかは明らかではない。中国科学院 上海植物ストレス生物学研究センター(CAS)He らは、FLC::GUS 融合レポーターを用いてFLC 再活性化の時期を調査した。その結果、FLC::GUS の発現は受粉1日の前胚で活性化していることがわかった。この胚でのFLC の活性化は転写因子によって引き起こされていると考え、種子特異的NF-Y転写因子で胚発生の主要な制御因子のLEAFY COTYLEDON1(LEC1)に着目して解析を行なった。その結果、lec1 変異体では春化処理をしていない植物でのFLC による花成遅延の表現型が抑制されることがわかった。また、lec1 変異体では前胚期およびそれ以降のFLC の発現が抑制されていた。したがって、LEC1 は胚発生初期およびそれ以降にFLC の発現を新規に活性化および促進していると考えられる。LEC1 はNF-YのBサブユニットをコードしており、シロイヌナズナにはLEC1に加えて9つのNF-YB転写因子がある。そのうち、LEC1 LIKE(L1L)は最もLEC1との類似性が高く、FLC の発現促進においてLEC1 と一部冗長的に作用していた。また、RNAiによってlec1 l1l 二重変異体でさらに3つのNF-YB をノックダウンした系統は、さらにFLC の発現が抑制され、花成が促進された。よって、LEC1 のホモログもFLC の新規活性化に関与しており、FLC の発現はNF-Y転写因子群によって胚発生初期過程において十分に新規活性化されることが示唆される。LEC1/lec1  FLC::GUS 個体を低温暴露してFLC をサイレンシングさせ、後代でのFLC の発現を見たところ、lec1 ホモ接合体の胚ではFLC の活性化は抑制され、親の春化処理が後代に遺伝した。よって、LEC1 は胚発生初期にFLC の発現を再活性化して親の春化処理状態を後代に伝達するのを妨げていることが示唆される。クロマチン免疫沈降アッセイの結果、LEC1タンパク質はFLC クロマチンプロモーター領域に多いことがわかった。また、LEC1はFLC の発現を直接活性化していた。LEC1 の機能喪失は、胚のFLC クロマチンのヒストンH3K4のトリメチル化(H3K4me3)やH3K36me3といった活性化型ヒストン修飾を減少させ、抑制型ヒストン修飾のH3K27me3を増加させた。よって、LEC1 は胚発生過程においてクロマチンリモデリングを誘導することでFLC を活性クロマチン状態にしていると考えられる。LEC1は種子特異的な転写因子であるが、FLC の発現を種子発達過程において促進するだけでなく、その後の発達過程でのFLC の発現にも関与している。したがって、LEC1 は自らの発現がなくなった後もFLC 発現活性化を継続させる効果がある。種子においてLEC1によってもたらされたFLC 活性クロマチン状態は、芽生えにおいても維持されていた。以上の結果から、春化処理によるFLC のサイレンシング状態は、前胚において種子特異的転写因子LEC1がFLC の活性クロマチン状態の確立を促進することでリセットされると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)ジベレリン受容体の分解によるジベレリンシグナル伝達の制御

2017-12-23 16:51:32 | 読んだ論文備忘録

Tyrosine phosphorylation of the GARU E3 ubiquitin ligase promotes gibberellin signalling by preventing GID1 degradation
Nemoto et al. Nature Communications (2017) 8:1004.

DOI: 10.1038/s41467-017-01005-5

最近の研究において、チロシンキナーゼ阻害剤のゲニステイン(GNS)はジベレリン(GA)が誘導するDELLAタンパク質の分解を阻害することが報告されている。よって、チロシンキナーゼはDELLAの分解を介してGAシグナル伝達の正の制御因子として機能していると考えられる。そこで、愛媛大学プロテオサイエンスセンター(PROS)の澤崎らは、シロイヌナズナ芽生えを用いて、DELLAやGA受容体GID1の安定性におけるGNSの効果について調査した。芽生えをGNS処理すると、処理濃度に応じて、胚軸の伸長や主根の成長が阻害されるが、della 五重変異体ではそのような阻害は見られなかった。よって、GNSによる成長阻害はDELLA活性に依存していることが示唆される。GNS処理をすることで内生RGAタンパク質量が増加した。一方、GID1A/Cタンパク質量はGNS処理によって僅かに減少し、タンパク質合成阻害剤のシクロヘキシミドを同時に処理することによって有意に減少した。これらの結果から、GNSはGID1タンパク質の不安定化を誘導し、DELLAタンパク質を安定化させることが示唆される。GNS処理によってGID1Aタンパク質はユビキチン化が促進され、プロテアソーム系による分解が高まり、GA処理はGID1Aのユビキチン化を阻害することが判った。204のE3リガーゼからなるシロイヌナズナRING-type E3リガーゼアレイから、コムギ無細胞系とAlphaスクリーニング技術を用いてGID1Aと相互作用をする2つのE3リガーゼ、at2g40830とat1g47570を同定した。このうち、at2g40830はGID1A/B/Cをユビキチン化することが確認されたので、GARU(GA receptor RING E3 ubiquitin ligase)と命名した。GARUは核においてGAの有無に関係なくGID1タンパク質と相互作用をし、GID1タンパク質をユビキチン化してプロテアソーム系による分解へと誘導した。GNSは多くの植物種において見出されるイソフラボンであるが、植物でGNSのターゲットとなっているチロシンキナーゼは見出されていなかった。しかし、β-チューブリン2/7のTyr残基をリン酸化するCRK(calcium-dependent protein kinase-related protein kinase)2/TAGK2とCRK3/TAGK3の活性がGNSによって阻害されることが判った。さらに、TAGK2はGARUのC末端側の321番目のTyr残基をリン酸化し、このリン酸化はGNSによって阻害されることが判った。GARUのC末端領域はGID1Aとの相互作用にとって重要であり、TAGK2によってGARUのTyr321がリン酸化されるとGID1Aとの相互作用が阻害された。Tyr321をGluに置換(Y321E)して擬似リン酸化型としたGARUは、GID1Aのユビキチン化が減少した。よって、TAGK2によるGARUのTyr321のリン酸化はGID1タンパク質のユビキチン化を阻害することが示唆される。GNS処理による成長阻害は、GAを添加することによって抑制された。GARUはGID1-GA-DELLA複合体と相互作用をすることができるが、GID1-GA-DELLA複合体の形成には関与していなかった。また、GARUはGID1-GA-DELLA複合体のGID1タンパク質をユビキチン化することはできなかった。さらに、GNSによるGID1Aのユビキチン化はGAの添加によって大きく抑制された。したがって、GA応答はGARUによるGID1タンパク質のユビキチン化よりも上位に位置している。guru 変異体やTAGK2 過剰発現個体の芽生えは、GID1タンパク質が安定化することによってGA処理によるRGAタンパク質の分解が高まり、胚軸伸長が促進された。よって、GARUとTAGK2はシロイヌナズナのGA応答の感受性に関与していることが示唆される。Arabidopsis eFP Browserによると、GARU 遺伝子の発現は乾燥成熟後期の種子で増加し、水に浸漬することで減少してくことが判った。よって、GARUは種子の成熟、休眠、発芽に関与しているものと思われる。GID1タンパク質は乾燥種子では見られないが、浸漬することで検出されるようになる。一方、garu 変異体では乾燥種子も浸漬種子もGID1タンパク質を蓄積しており、野生型よりも発芽が促進される。よって、GID1タンパク質は種子の成熟過程においてGARUによって分解され、GARUは種子発芽を負に制御していることが示唆される。GID1タンパク質は塩ストレスによって減少するが、garu 変異体ではそのような減少は見られなかった。GID1A/B/C 転写産物量は塩ストレスによる変化は見られないが、GARU 転写産物量は浸漬によって半減し、塩ストレス下では浸漬による転写産物量の減少は起こらなかった。さらにgaru 変異体種子は塩ストレス下での発芽率の低下が起こらなかった。よって、GARUは塩ストレス下においてGID1タンパク質を分解することで種子発芽を抑制していると考えられる。以上の結果から、GARUはGID1タンパク質をユビキチン化して分解へと導き、TAGK2はGARUのTyr残基をリン酸化してGID1タンパク質のユビキチン化を阻害することが示された。よって、GARUとTAGK2はGID1タンパク質量を制御することでジベレリンシグナル伝達の制御に関与していると考えられる。


愛媛大学プロテオサイエンスセンター(PROS)のTOPICS

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)MYC5によるジャスモン酸シグナルの制御

2017-12-13 22:15:09 | 読んだ論文備忘録

MYC5 is Involved in Jasmonate-Regulated Plant Growth, Leaf Senescence and Defense Responses
Song et al. Plant Cell Physiol. (2017) 58:1752-1763.

doi:10.1093/pcp/pcx112

シロイヌナズナbHLH型転写因子ⅢeサブグループのMYC2、MYC3、MYC4は、JAZタンパク質と相互作用をし、冗長的に様々なジャスモン酸(JA)応答に関与している。最近の研究において、同じⅢeサブグループのMYC5(bHLH28)がJAZタンパク質のターゲットとなる転写因子であり、雄ずいの発達に関与していることが報告されている。そこで、中国 清華大学Xie らは、MYC5が他のJA応答にも関与しているかを調査した。myc5 変異をmyc2myc3myc4 の各変異と組合せ、JAによる芽生えの根の伸長阻害の程度を野生型(Col-0)と比較した。myc5 変異体の根の伸長は野生型と同等であり、myc2 myc3 myc5 三重変異体はmyc2 myc3 二重変異体よりもJA感受性が低下していた。また、myc2 myc3 myc4 myc5 四重変異体はmyc2 myc3 myc4 三重変異体よりも根の成長におけるJA応答性が低下していた。これらの結果から、MYC5MYC2/3/4 と共に冗長的にJAによる根の伸長阻害に関与していると考えられる。JA処理はアントシアニン生合成酵素遺伝子DIHYDROFLAVONOL REDUCTASEDFR )の発現とアントシアニンの蓄積を誘導するが、myc2 myc3 変異体、myc2 myc3 myc4 変異体ではそれらが低下する。しかし、myc5 変異体ではそのような変化は見られず、myc5 変異はmyc2 myc3 変異体、myc2 myc3 myc4 変異体でのJA誘導アントシアニン蓄積やDFR 発現の低下を助長しなかった。よって、MYC5 はJAが誘導するアントシアニン蓄積制御には関与していないことが示唆される。さらに、myc2 myc4 myc5 変異体およびmyc2 myc3 myc4 myc5 変異体でのJA応答マーカー遺伝子であるTYROSINE AMINOTRANSFERASE1TAT1 )、VEGETATIVE STORAGE PROTEIN2VSP2 )、JAZ10 のJAによる発現誘導は、それぞれの比較対照であるmyc5 変異体、myc2 myc3 変異体、myc2 myc3 myc4 変異体よりも低下していた。よって、MYC5 はJA応答遺伝子の発現に関与していると考えられる。MYC5 を過剰発現させた形質転換体は、JAによる根の伸長阻害が強くなり、TAT1VSP1JAZ10 のJAによる発現誘導が高まったが、JAによるアントシアニン蓄積とDFR の発現誘導は影響を受けなかった。myc2 myc3 myc4 変異体でMYC5 を過剰発現させると、JAによる根の伸長阻害やJA応答遺伝子の発現におけるJA感受性が回復したが、アントシアニンの蓄積とDFR の発現誘導に関しては回復が見られなかった。JAは葉の老化を促進することが知られており、MYC5 の過剰発現はJAによる老化誘導を加速させた。JAを介した食稙性昆虫に対する防御応答について、シロイチモジヨトウ(Spodoptera exigua )の幼虫による摂食試験を行なって調査した。myc5 変異体の防御応答の程度は野生型と同程度で、myc2 myc3 myc4 変異体は食害を受けやすくなっていたが、myc2 myc3 myc4 myc5 変異体は更に大きく食害を受け、幼虫の体重増加も大きく、食稙性昆虫の摂食によって誘導されるグルコシノレート(GS)生合成遺伝子のCYTOCHROME P450 79F1CYP79F1 )やSUPERROOT1SUR1 )の発現量の減少の程度も大きくなっていた。MYC5 を過剰発現させた形質転換体は、シロイチモジヨトウに対する防御応答が強くなっており、CYP71F1SUR1 の発現量が増加していた。coi1 変異体は幼虫の摂食を非常に受けやすくなっているが、MYC5 を過剰発現させることで僅かに防御性、CYP79F1SUR1 のが回復した。これらの結果から、MYC5COI1 の下流で作用しており、JAが制御しているシロイチモジヨトウによる摂食に対する防御においてMYC2/3/4 と冗長的に機能している。JAは灰色かび病菌に対する抵抗性に関与しており、myc5 変異体と野生型に抵抗性の差異は見られないが、myc2 myc3 myc4 myc5 四重変異体はmyc2 myc3 myc4 三重変異体よりも罹病度が高くなった。よって、MYC5MYC2/3/4 と冗長的に灰色かび病菌に対する抵抗性の制御に作用していることが示唆される。植物病原性細菌Pst DC3000はシロイヌナズナに感染する際にJAシグナル伝達を制御していることが知られており、感染させたPst DC3000の増殖は、MYC5 過剰発現形質転換体では野生型よりも良くなり、myc5 変異体では悪くなった。したがって、MYC5 はJAによるPst DC3000の罹病性に関与していることが示唆される。以上の結果から、MYC5 は、ジャスモン酸が制御している根の伸長阻害、病虫害応答、葉の老化促進においてMYC2/3/4 と冗長的に作用していることが示唆される。しかしながら、MYC5 はジャスモン酸によるアントシアニンの蓄積には関与していないと考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)オーキシン応答因子による葉の平面性制御

2017-12-09 16:43:26 | 読んだ論文備忘録

Spatial Auxin Signaling Controls Leaf Flattening in Arabidopsis
Guan et al. Current Biology (2017) 27:2940-2950.

doi:10.1016/j.cub.2017.08.042

葉の平面性は光合成の最適化にとって重要である。中国科学院 遺伝・発育生物学研究所Jiao らは、以前に葉のパターン形成にオーキシンの背軸側に偏った分布が関与していることを明らかにしており、今回はシロイヌナズナの葉の発達に関与しているオーキシン応答因子(ARF)の1つであるARF5のMONOPTEROS(MP)に着目して解析を行なった。MP は若い葉原基で発現しており、2番目に若い葉原基P2では明らかに向軸側に偏って発現していた。P3、P4では、MP は中央部、周縁部、向軸部で発現していた。また、葉原基の発達にともなってMP は先端部から基部へと発現部位が拡大していった。シロイヌナズナではMPの他にARF6、ARF7、ARF8、ARF19が転写活性化ARFとして知られているが、これらは若い葉原基では向軸側で発現していた。オーキシンシグナルセンサーDⅡ-Venusを用いた解析から、P2からP4の葉原基では向軸側のオーキシン量が低下していることがわかった、また、pDR5::GFP-ER オーキシンシグナルレポーターを用いた解析において、GFPシグナルは周縁部において検出され、最初は先端部で、その後は基部へと広がっていった。MP の発現部位は、部分的にDR5およびDⅡ-Venusの発現部位と重複していた。葉身の拡大に関与しているWUSCHEL-RELATED HOMEOBOX1WOX1 )およびPRESSED FLOWERPRS )/WOX3 は周縁部で発現しており、DR5の発現部位と重複していた。強いMP 変異を示すarf5-1 変異体は、5日目の芽生えの子葉やロゼット葉が細葉になり、17日後には一部の個体(7.5%)のロゼット葉は針状になった。よって、MP は葉の発達、特に葉の平板化に関与していることが示唆される。針状となった器官ではPRS の発現が検出されず、EARモチーフを付加した融合MPタンパク質を発現させた個体ではWOX1PRS の発現が抑制された。これらのことから、MPはWOX1PRS の発現を促進して葉の平板化をもたらしていると考えられる。恒常的に活性を示すMP⊿を発現させた形質転換体の葉は向軸-背軸の極性が失われることが知られている。この形質転換体の葉は、葉身が拡張しないが厚みがあり、向軸側の表面に小さな葉身状の器官が形成された。また、野生型と比較して、WOX1 は3倍、PRS は10倍ロゼット葉での発現量が増加し、葉原基の向軸側領域でも発現が見られた。よって、MPはWOX1PRS の発現を活性化していると考えられる。WOX1 遺伝子、PRS 遺伝子のプロモーター領域にはオーキシン応答エレメント(AuxRE)が存在しており、MPはこの領域に結合して遺伝子発現を活性化することが判った。また、背軸側で発現しているARF2、ARF3、ARF4は、MPがターゲットとしているWOX1 遺伝子、PRS 遺伝子のプロモーター領域に結合して遺伝子発現を冗長的に抑制していることが判った。以上の結果から、WOX1PRS の発現は葉の周縁部ではMPの直接の作用によって活性化され、背軸側ではARF2、ARF3、ARF4によって直接抑制されており、オーキシン、ARF活性化因子、ARF抑制因子の向軸-背軸での適切な分布が葉身の拡大に貢献していると考えられる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加

論文)ジャスモン酸シグナルによる転写活性化機構

2017-12-01 22:37:30 | 読んだ論文備忘録

Mediator subunit MED25 links the jasmonate receptor to transcriptionally active chromatin
An et al. PNAS (2017) 114:E8930-E8939.

doi:10.1073/pnas.1710885114

ジャスモン酸(JA)のシグナル伝達において、bHLH型転写因子のMYC2が主要な転写調節因子となっている。F-boxタンパク質のCORONATINE INSENSITIVE 1(COI1)によるJA-Ileの受容が、MYC2の活性を抑制しているJAZタンパク質の分解をもたらし、MYC2のターゲット遺伝子の転写が活性化される。しかしながら、COI1がどのように転写調節因子と相互作用をして転写活性化を引き起こしているのかは不明な点か残されている。中国科学院 遺伝・発育生物学研究所Li らは、シロイヌナズナ芽生えを用いて、MYC2のターゲット遺伝子であるJAZ8ERF1 とCOI1の相互作用をクロマチン免疫沈降(ChIP)-qPCRアッセイで調査した。その結果、JA-Ile非存在下では、COI1は両遺伝子のG-boxや転写開始領域(TSS)により多く蓄積されることが判った。しかしながら、JA-Ile処理をすると、15分以内にCOI1の蓄積は見られなくなった。JA-Ile非存在下でのCOI1のMYC2ターゲット遺伝子への蓄積は、myc2 変異体では見られないことから、COI1はMYC2に依存してターゲット遺伝子領域に蓄積していることが示唆される。COI1は、メディエーター複合体のサブユニットであるMED25と相互作用し、この相互作用にはMED25のグルタミンリッチドメインとCOI1のF-boxドメインが関与していた。med25 変異体の解析から、MED25はJA-Ileを介したCOI1とJAZ1との相互作用の促進に関与していることが判った。JA-Ile非存在下では、MED25はMYC2ターゲット遺伝子のG-boxやTSSへ他の領域よりも多く蓄積し、これはCOI1と類似している。しかしながら、JA-Ile処理をするとMED25はMYC2ターゲット遺伝子のTSSへの蓄積が更に増加し、COI1とは逆のパターンを示した。MED25のMYC2ターゲット遺伝子プロモーター領域への蓄積もMYC2に依存していた。COI1とMED25はMYC2ターゲット遺伝子のプロモーター領域に同時に蓄積することが確認された。また、med25 変異体ではJA-Ile非存在下でのCOI1のMYC2ターゲット遺伝子TSSへの蓄積が野生型よりも少なく、JA-Ile処理によるCOI1の蓄積量低下の程度も野生型よりも低くなっていた。したがって、MED25はJA-Ileによる刺激を受ける前の段階でのCOI1のMYC2ターゲット遺伝子プロモーター領域への蓄積に影響していることが示唆される。coi1 変異体でのMED25のMYC2ターゲット遺伝子TSSへの蓄積は、JA-Ile非存在下では野生型よりも若干低いが、JA-Ile存在下では野生型よりも大きく低下した。したがって、COI1はJA-Ileによって誘導されるMED25のMYC2ターゲット遺伝子プロモーター領域への蓄積に大きく関与していることが示唆される。更に、MED25はヒストンアセチルトランスフェラーゼ1(HAC1)と相互作用することが確認され、HAC1はMYC2ターゲット遺伝子TSSに蓄積すること、この蓄積はJA-Ile処理によって増加することが判った。hac1 変異体では、JAによる制御を受ける傷害応答マーカー遺伝子VEGETATIVE STORAGE PROTEIN 1VSP1 )のJA-Ile処理による発現誘導が僅かに減少し、病害応答マーカー遺伝子PDF1.2 の発現誘導は大きく減少した。また、MYC2ターゲット遺伝子の発現誘導も減少した。JAによる遺伝子発現制御におけるHAC1の影響をRNA-seq試験で調査したところ、野生型ではJA-Ile処理によって3354遺伝子の発現量が増加し、hac1 変異体では2010遺伝子の発現が増加していた。そして、890遺伝子は、JA-Ile処理した野生型芽生えと比較して、JA-Ile処理したhac1 変異体芽生えで発現量が減少していた。この890遺伝子はHAC1とJA-Ileとによって発現制御を受けている遺伝子であり、この遺伝子群にはJA応答、傷害応答、その他防御応答に関与する遺伝子が多く、JA代謝、JAシグナル伝達、JA誘導防御応答に関与する多くのJA誘導遺伝子が含まれていた。同時に、野生型をJA-Ile処理することによって3305遺伝子の発現量が減少し、535遺伝子はJA-Ile処理したhac1 変異体で野生型よりも発現量が高くなっていた。そして、153遺伝子はJA-Ile処理した野生型よりもhac1 変異体で発現抑制の程度が低くなっていた。したがって、JA-Ile処理によって発現抑制される遺伝子の4.6 %(153/3305)は、HAC1が抑制に関与している。これらの結果から、HAC1は主にJAが誘導する遺伝子発現のコアクティベーターとして作用していることが示唆される。hac1 変異体では、JA-Ile処理によるヒストンH3K9のアセチル化(H3K9ac)量の増加が野生型よりも低くなっていた。野生型植物において、H3K9acはMYC2ターゲット遺伝子TSSに多く、JA-Ile処理をすることによってその量は増加した。hac1 変異体では、JA-Ile処理によるMYC2ターゲット遺伝子TSSのH3K9ac量やRNAポリメラーゼⅡ(PolⅡ)量の増加は野生型よりも低くなっていた。よって、HAC1はMYC2ターゲット遺伝子へのPolⅡのリクルートに関与していることが示唆される。coi1 変異体およびmed25 変異体では、JA-Ileが誘導するHAC1のMYC2ターゲット遺伝子TSSへの蓄積が低下し、TSSでのH3K9ac量も減少していた。したがって、MYC2ターゲット遺伝子プロモーター領域でHAC1が蓄積し機能するためにはCOI1とMED25が必要であると考えられる。共免疫沈降(co-IP)試験から、MED25とJAZ1は同時にMYC2と相互作用し、JAZ-MED25-MYC2複合体を形成することが判った。そして、JA-IleはMED25-COI1の相互作用を弱め、MED25-MYC2の相互作用を強めた。以上の結果から、以下の作業モデルが考えられる。JA-Ile非存在下ではMED25とJAZタンパク質はMYC2と結合してJAZ-MYC2-MED25三重複合体を形成する。この時、JAZタンパク質はCOI1とではなくMYC2と相互作用をし、転写抑制因子として機能する。JAZタンパク質はMED25とMYC2との相互作用を妨げているので、MED25とCOI1の相互作用はMED25とMYC2との相互作用よりも強くなる。その際、MED25は物理的相互作用によってCOI1をMYC2ターゲット遺伝子プロモーターへ引き入れている。ストレス応答等によって生産されたJA-Ileは分子糊として機能してCOI1-JAZ複合体の形成を促進し、これによってJAZはプロテアソーム系により分解される。そしてJA-IleによってMED25はCOI1との相互作用は弱まり、MYC2との相互作用が強くなり、MYC2ターゲット遺伝子のプロモーターへHAC1とPolⅡをリクルートして遺伝子発現を活性化させる。

コメント
この記事をはてなブックマークに追加