Strigolactone- and Karrikin-Independent SMXL Proteins Are Central Regulators of Phloem Formation
Wallner et al. Current Biology (2017) 27:1241-1247.
DOI: 10.1016/j.cub.2017.03.014
シロイヌナズナSUPPRESSOR OF MAX2 1(SMAX1 )とそのホモログSMAX1-LIKE2(SMXL2 )~SMXL8 は遺伝子ファミリーを形成しており、3つのサブクレイドに分かれている。ドイツ ハイデルベルグ大学のGreb らは、サブクレイド2に属するSMXL3 、SMXL4 、SMXL5 の機能を解析するために、それぞれの単独変異体、二重変異体、三重変異体の芽生えの表現型を解析した。その結果、単独変異体の表現型は野生型との差異が認められなかったが、二重変異体はすべての組合せで主根が短くなった。したがって、これら3つの遺伝子は主根の成長に関して冗長的に同等の貢献をしていることが示唆される。このような表現型はSMXL 遺伝子の他のサブクレイドの変異体では見られなかった。三重変異体は成長初期においては二重変異体と同等の表現型を示したが、その後植物体が枯れてしまった。それぞれの遺伝子のプロモーター活性を見たところ、SMXL3 プロモーターは主に根の維管束で活性を示し、子葉の維管束でも弱い活性が見られた。SMXL4 とSMXL5 のプロモーターは調査した全ての器官の維管束で活性を示し、特に根端部で強い活性を示した。根端分裂組織(RAM)を詳細に観察すると、すべてのプロモーター活性は静止中心近傍の師要素-前形成層幹細胞や成熟した師部で活性が見られた。したがって、SMXL3 、SMXL4 、SMXL5 プロモーターは師部関連組織特異的に活性を示す。smxl4;smxl5 変異体のRAMの大きさは、2日目の芽生えでは野生型と同程度だが、その後徐々に小さくなっていった。よって、SMXL4/5 はRAM活性の維持に関与していることが示唆される。smxl4;smxl5 変異体では原生師部や後生師部を形成する二次接線細胞分裂に遅延が生じていた。さらに、いくつかの試験からsmxl4;smxl5 変異体のRAMでは原生師部から師要素への分化過程が損なわれていることが示された。また、SMXL3/4/5 遺伝子は師部形成制御において用量依存的に作用していた。接木試験からsmxl4;smxl5 変異体RAMでは師部による輸送が低下していることが示された。smxl4;smxl5 変異体とsmxl4;smxl5;max2 三重変異体との間に根長やRAMの大きさに差異が見られないこと、max2 変異体の師要素分化に野生型との差異は見られないことから、SMXL4 、SMXL5 はMAX2によるストリゴラクトン(SL)シグナルやカリキン(KAR)シグナルとは独立して師部分化の促進やRAM活性に影響していると考えられる。SL/KARシグナル伝達に関与しているSMXL 遺伝子ファミリーのSMAX1 をSMXL5 プロモーター制御下でsmxl4;smxl5 変異体で発現させたところ、SMXL5 を発現させた場合と同様に、変異体の主根が短くなる表現型が抑えられた。したがって、SMAX1はSMXL5と発現する細胞が同じであればSMXL5の代替となりうることが示唆される。SL/KARシグナルを誘導するrac-GR24を添加して育成すると、SMAX1によるsmxl4;smxl5 変異体の根の伸長の補整効果が失われた。しかし、SMXL5 を発現させた変異体では根の伸長回復はみられた。SMXL3、SMXL4もrac-GR24の影響を受けなかった。以上の結果から、SMXLタンパク質サブクレイド2に属するSMXL3、SMXL4、SMXL5は、ストリゴラクトンやカリキンのシグナルとは独立して師部形成の制御に関与していることが示唆される。