Laboratory ARA MASA のLab Note

植物観察、読んだ論文に関しての備忘録
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論文)植物の成長・発達におけるサイトカイニン応答因子の役割

2016-03-31 20:04:31 | 読んだ論文備忘録

The cytokinin response factors modulate root and shoot growth and promote leaf senescence in Arabidopsis
Raines et al. The Plant Journal (2016) 85:134-147.

doi: 10.1111/tpj.13097

サイトカイニン応答因子(CRF)はAP2/ERF転写因子に属し、6つの遺伝子からなるファミリーを構成している。米国 ノースカロライナ大学チャペルヒル校Kieber らは、植物の成長・発達におけるCRFの役割を解析した。シロイヌナズナ芽生えをサイトカイニン処理するとCRF2CRF5CRF6 の発現量が増加した。芽生えを根とシュートに分けて転写産物量の変化を見たところ、CRF1 以外の5つのCRF はサイトカイニン処理によってシュートでの発現量が増加した。また、CRF6 はシュートと根の両方で発現量が増加した。CRF のT-DNA挿入機能喪失変異体および過剰発現個体(OX)での主根および側根の成長を見たところ、crf1,3,5,6 四重変異体において根の成長が著しく阻害されていた。よって、CRFは冗長的に根の成長の正の制御因子として機能していることが示唆される。CRF3OXおよびCRF5OXの芽生えは側根量が多く、crf2,5,6 変異体、crf1,3,5,6 変異体は野生型よりも側根数が減少していた。よって、CRFは側根成長を促進していると考えられる。crf1,3,5,6 変異体、crf2,5,6 変異体の根端分裂組織(RAM)は野生型よりも小さく、CRF5OXでは大きくなっていた。サイトカイニンはRAMの大きさを負に制御するが、CRF5OXもcrf1,3,5,6 変異体もサイトカイニン処理によってRAMが小さくなり、サイトカイニン処理をした野生型と同等になった。CRF1OX、CRF3OX、CRF5OXのロゼット葉は野生型よりも小さく、逆に、crf 三重変異体はどの組合せであってもロゼット葉が大きくなった。crf1,3,5,6 四重変異体のロゼット葉の大きさは野生型と同程度であり、crf1/CRF1,2,5,6 変異体は野生型よりも小さくなった。crf1/CRF1,2,5,6 変異体の表現型がcrf 三重変異体とは逆になるということは、高度のcrf 変異はCRFの機能を正常な成長に必要な閾値以下に減少させることを示唆している。また、CRF2はシュートの成長においてCRF3よりも重要であると考えられる。crf1/CRF1,2,5,6 変異体の葉は野生型よりも細く、湾曲しており、花序は非常に小さくなっていた。サイトカイニンは葉の老化を阻害することが知られており、CRF6は葉の老化の負の制御因子として機能していることが報告されている。CRF の単独もしくは二重の機能喪失変異体の葉の老化は野生型と同等であったが、crf1,3,5,6 変異体やcrf1/CRF1,2,5,6 変異体では老化が遅延した。CRF1OX、CRF3OX、CRF5OXでは葉の老化が促進され、老化のマーカー遺伝子SAG12 の発現量が増加し、クロロフィル合成に関与しているCAB2 遺伝子の発現量は減少していた。よって、CRFは葉の老化を正に制御していると考えられる。crf1/CRF1,2,5,6 変異体の自殖後代からはcrf1/CRF1,2,5,6crf2,5,6 の芽生えのみが得られ、crf1,2,5,6 系統は得られなかった。調査の結果、crf1,2,5,6 変異体は胚性致死となるようで、CRFは雌性配偶体や胚の発達に関与していることが示唆される。サイトカイニンは暗所での胚軸伸長をエチレン生合成を高めることで阻害していることが知られている。CRF3OXとCRF5OXの黄化芽生えの胚軸は野生型よりも長く、crf1,3,5,6 変異体やcrf2,5,6 変異体の胚軸は野生型よりも短かった。しかし、これらの過剰発現系統や変異体はサイトカイニン処理に応答して胚軸伸長が阻害されることから、CRFは暗所での胚軸伸長におけるサイトカイニン応答に必須ではないと考えられる。CRFは他のAP2/ERF転写因子と同様にGCC-boxに対して高い親和性で結合することが判明し、おそらく転写活性化因子として機能していると考えられる。RNA-seq解析から、crf1,3,5,6 変異体の根では野生型よりも1803遺伝子の発現量が高く、1319遺伝子の発現量が低くなっていることがわかった。crf1,3,5,6 変異体の発現量が変化している遺伝子の中にはサイトカイニンによって強く制御されている遺伝子群(ゴールデンリスト)が含まれていた。crf1,3,5,6 変異体のシュートでは800遺伝子の発現量が増加し、213遺伝子の発現量が減少していた。そしてそれらの遺伝子もゴールデンリスト遺伝子群が多く含まれていた。crf1,3,5,6 変異体において発現量が異なる遺伝子のオントロジーカテゴリーを見ると、非生物/生物ストレス応答、輸送、シグナル伝達に関するものが多く含まれていた。発現量が異なる遺伝子には転写因子をコードするものが多く見られることから、CRFは様々な転写因子を制御しているものと思われる。サイトカイニンは根においてPINオーキシントランスポーターの量を調節しているが、crf1,3,5,6 変異体のPIN 転写産物量に変化は見られなかった。しかし、PINタンパク質をリン酸化してPINのリサイクルを制御するタンパク質キナーゼをコードしているWAG1WAG2 の発現量は減少していた。crf1,3,5,6 変異体のRAMが小さいことに呼応して、変異体では幾つかの細胞周期関連遺伝子の転写産物量が減少していた。エチレン、オーキシン、ジベレリン、アブシジン酸、サイトカイニンといった植物ホルモンの代謝やシグナル伝達に関与する遺伝子の発現量も変化していた。サイトカイニンに関与する遺伝子としては、IPTLOGCKX ファミリーの遺伝子が含まれており、幾つかのタイプA ARR 遺伝子の発現量は減少していた。内生サイトカイニン量を見ると、crf1,3,5,6 変異体の根やシュートでサイトカイニン量が減少し、CRF5OXのシュートではリボシド型サイトカイニンが増加していた。以上の結果から、CRF転写因子は植物の様々な成長・発達過程において重要な役割を担っていることが示唆される。

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学会)第63回日本生態学会(仙台)

2016-03-21 21:30:05 | 学会参加

第63回日本生態学会大会(ESJ63)が3月20日から24日までの5日間、仙台国際センターで開催された(20日は仙台市情報・産業プラザで開催された公開講演会のみ)。口頭発表とポスター発表の一般講演の他、シンポジウム4題、企画集会24題、フォーラム13題、自由集会37題の、盛り沢山の内容であった。会場となった仙台国際センターは会議棟と展示棟で構成された大規模会議施設で、個々の会議場も充分なスペースがあり、非常に素晴らしい施設だった。会議場の北側には2015年12月6日に開業した仙台市営地下鉄東西線の国際センター駅が有り、仙台駅からの利便性が向上した。3月26日からは仙台市交通局でもSuicaと相互利用している交通系ICカードが利用可能となるとのことで、県外から訪れる人にも便利になる。その3月26日は北海道新幹線の開業日。仙台駅は、3月18日に東西自由通路の拡幅と新駅ビルエスパル仙台東館がオープンしたこともあり、賑わいを見せていた。

 

大会会場となった仙台国際センター

 

仙台国際センターの北側に出来た仙台市営地下鉄東西線の国際センター駅

 

国際センター駅の展望テラスから見た仙台国際センター

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論文)WRKY転写因子による花成促進

2016-03-19 16:21:34 | 読んだ論文備忘録

WRKY71 accelerates flowering via the direct activation of FLOWERING LOCUS T and LEAFY in Arabidopsis thaliana
Yu et al. The Plant Journal (2016) 85:96-106.

DOI:10.1111/tpj.13092

中国 山東大学のXiang らは、シロイヌナズナ アクティベーションタギング系統集団の中から長日条件で早期花成する個体WRKY71-1D を単離した。この個体はWRKY71 遺伝子の転写開始点から約1 kb上流にT-DNAが挿入されており、T-DNA挿入部位近傍の遺伝子のうちWRKY71 のみ過剰発現していた。また、WRKY71 を恒常的に発現させた形質転換体も早咲きとなった。WRKY71は282アミノ酸からなるポリペプチドで、1つのWRKYGQKドメインと1つのC2H2ジンクフィンガーモチーフを含んでおり、グループⅡc WARKYファミリーに属する。転写活性解析の結果から、WRKY71は転写活性化活性があることがわかった。長日条件下において、WRKY71 転写産物量は発芽8日目から16日目にかけて増加し、転写産物は花序分裂組織、花分裂組織、葉脈において検出された。花成におけるWRKY71の機能を解析するためにwrky71-1 機能喪失変異体の表現型を観察したが、花分裂組織の形成が遅延すること以外は野生型と同等であった。系統樹解析からWRKY71と類似性の高いホモログはWRKY8とWRKY28であることが判明し、これらを恒常的に発現させた個体は野生型よりも早く花成した。WRKY71WRKY8 のT-DNA挿入変異とWRKY28 のRNAiによる発現抑制が導入されたw71w8+28RNAi 個体は野生型よりも花成が遅延した。また、リプレッションドメインSRDXを付加したWRKY71を発現するW71-SRDX 個体の花成も遅延した。短日条件では、野生型、WRKY71-1Dw71w8+28RNAiW71-SRDX はいずれも長日条件よりも花成が遅延したが、WRKY71-1D は野生型よりも早く花成し、w71w8+28RNAiW71-SRDX の花成は野生型よりも遅くなった。よって、これらの系統は日長には正常に応答していると考えられる。また、これらの系統は春化処理やジベレリン処理に対しても正常に応答した。花成を誘導する4つの経路に関与している調節因子の機能喪失変異体でのWRKY71 の発現量に変化は見られなかった。更にこられの変異体にWRKY71-1D を導入した際の花成を見たところ、WRKY71-1D ft-10 の花成はft-10 変異体よりも早くなったが、WRKY71-1D 系統よりもはるかに遅くなった。よって、WRKY71 はFTに一部依存して花成を促進していると思われる。花成や花分裂組織形成に関与するFTLFYAP1CALFUL の発現はWRKY71-1D 系統で増加しており、w71w8+28RNAiW71-SRDX ではFTLFYAP1FUL の発現が減少していた。FTLFY の発現は、野生型もWRKY71-1D 系統も発芽10日目から増加するが、WRKY71-1D 系統では野生型よりも発現量が高く、急速に増加した。w71w8+28RNAiW71-SRDX では、FTLFY の発現は発芽14日目以降に起こり、野生型よりも発現量は低かった。したがって、WRKY71は栄養成長から生殖成長への移行に関与する遺伝子活性化を介して花成を促進しているものと思われる。WRKY転写因子はW-box(TTTGACT/C)をターゲットとしているが、FT 遺伝子プロモーター領域にはW-boxが3つ、LFY 遺伝子プロモーター領域には6つ、AP1 遺伝子プロモーター領域には5つ、CAL 遺伝子プロモーター領域には1つ含まれていた。WRKY71は生体内においてFT およびLFY 遺伝子のプロモーター領域と相互作用をすることが確認された。また、WRKY71-1D lfy-2 の花成はWRKY71-1D ft-10 の場合と同様に遅延した。したがって、WRKY71-1D の花成はFTLFY が関与しており、WRKY71はFTLFY の発現を直接促進することで花成促進因子とし機能していると考えられる。

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論文)オーキシンによる発芽制御に関与するPHDフィンガータンパク質

2016-03-16 05:49:06 | 読んだ論文備忘録

Germostatin resistance locus 1 encodes a PHD finger protein involved in auxin-mediated seed dormancy and germination
Ye et al. The Plant Journal (2016) 85:3-15.

doi: 10.1111/tpj.13086

中国科学院上海生命科学研究院のZhao らは、12000の低分子量化学物質をシロイヌナズナ種子発芽で選抜し、発芽を阻害する物質をいくつか見出した。そのうち、germostatin(GS)と命名した物質はシロイヌナズナの様々な系統で強い発芽阻害活性を示した。シロイヌナズナのT-DNA挿入変異体集団やEMS変異集団からGS耐性変異体の選抜を行ない、At3g27490遺伝子座にT-DNAが挿入されたgermostatin resistance locus 1gsr1 )変異体を複数得た。シロイヌナズナにはGSR1 に類似した遺伝子が124個あり、これらの遺伝子のT-DNA挿入変異体のGS耐性ををいくつか調べ、耐性を示す変異体gsr1-like1gsl1 )を得た。GSR1GSL1 は発芽過程おいて高い発現を示していた。GSR1 は機能未知のタンパク質をコードしており、このタンパク質は4つ連続したPHDフィンガーとCys4-His-Cys3 ジンクフィンガーモチーフを含んでいた。そのような構造的特徴から、GSR1は未知のコリプレッサー複合体の一部として機能するものと考えられる。動物において、PHDフィンガーを含んだタンパク質の複合体はメチル化されていないヒストンH3Lys4を認識して遺伝子発現を抑制することが知られている。GSR1もメチル化されていないH3K4に結合することが確認された。したがって、GSR1は他のタンパク質と複合体を形成して転写を抑制すると考えられる。酵母two-hybdrid(Y2H)アッセイの結果、AUX/IAAファミリーに属する転写抑制因子のIAA17がGSR1、GSL1と相互作用をすることが確認された。また、IAA17とGSR1は生体内においても相互作用をすることが確認され、両者は核に局在していた。IAA/AUXはオーキシン応答因子(ARF)と相互作用をする。ARFのうち、ARF10とARF16は種子休眠や発芽の制御をしていることが知られており、ARF10/16はIAA17と共に根端部の幹細胞の分化を制御していることが示されている。Y2HアッセイやBiFCアッセイからARF16がIAA17と相互作用をすることが確認された。また、GSR1とGSL1はARF10/16と相互作用をすることが確認され、酵母three-hybrid(Y3H)アッセイからGSR1はIAA17とARF16との相互作用を低下させることがわかった。IAA17のドメインⅡの変異によりユビキチン-プロテアソーム経路による分解が起こらないaxr3-1 変異体は、GSに対して強い抵抗性を示し、arf10 arf16 二重変異体の種子もGS対する感受性が低くなっていた。gsr1-2 axr3-1 二重変異体は、それぞれの単独変異体よりもGSによる発芽阻害に対する抵抗性が強くなっていた。同様に、arf10 arf16 二重変異体にgsr1-2 変異を導入することでGSに対する抵抗性が高まった。これらの遺伝解析から、GSR1はARF10/16のパートナーとして作用して種子発芽を制御していることが推測される。そしてオーキシンのシグナル伝達がGSを介した種子発芽阻害に関与していると考えられる。植物体をGS処理すると、処理濃度に応じてオーキシン初期応答遺伝子のIAA29GH3.5SAUR1 の転写産物量が増加した。また、GSR1GSL1 の発現量はオーキシンおよびGS処理によって増加した。オーキシンセンサーDⅡ-VENUSやオーキシンレポーターDR5-GFPを用いた試験から、GS処理はオーキシン応答性が高まることがわかった。よって、GSはオーキシン応答性を高めることで種子発芽を阻害していると考えられる。オーキシン処理によって野生型種子は発芽能力が失われてしまうが、gsr1-2 変異体はaxr3-1 変異体と同様に高い発芽率を示した。また、gsr1-2 axr3-1 二重変異体やgsr1-2 arf10 arf16 三重変異体は、gsr1-2 変異体、axr3-1 変異体、arf10 arf16 二重変異体よりも早く発芽した。したがって、IAA17-GSR1-ARF16 は、オーキシンによる種子の発芽と休眠の制御に関するシグナル伝達経路を形成していると考えられる。

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論文)アブシジン酸によるエチレン生産の抑制

2016-03-11 19:47:22 | 読んだ論文備忘録

Abscisic Acid Antagonizes Ethylene Production through the ABI4-Mediated Transcriptional Repression of ACS4 and ACS8 in Arabidopsis
Dong et al. Molecular Plant (2016) 9:126-135.
DOI: 10.1016/j.molp.2015.09.007

アブシジン酸(ABA)はエチレンの生合成を負に制御していることが報告されているが、その機構は明らかとなっていない。中国農業科学院のHuang らは、EMS処理したシロイヌナズナ種子をABA存在下で発芽させ、ABA非感受性の変異体を選抜し、その中からエチレン生産量が野生型よりも増加しているabi227 変異体とabi304 変異体、エチレン生産量が野生型の半分程度のabi81 変異体とabi152 変異体を単離した。これまでに報告されているシロイヌナズナの変異体でエチレン生産量が減少している単独変異体は得られていないことから、abi152 変異体について詳細な解析を行なった。この変異体は優性変異であり、ABA INSENSITIVE 4ABI4 )遺伝子の一塩基置換(G to A)によってTrp 313 が未成熟終始コドンとなってABI4タンパク質のC末端16アミノ酸が欠失する変異であることがわかった。このことから、abi152abi4-152 と命名した。完全長ABI4 を過剰発現させた個体(OE)とABI4-152 を過剰発現させた個体(OEM)のエチレン生産量を見たところ、OEMではエチレン生産量が減少していたが、OEではそのような変化は見られなかった。また、ABI4 機能喪失変異体abi4-102abi4-103 ではエチレン生産量が増加していた。よって、ABI4はエチレン生産の負の制御因子であると考えられる。ABI4は転写活性化因子として機能するが、C末端16アミノ酸が欠失したABI4-152は転写活性化機能に変化は見られなかった。abi4-152 変異体やOEM個体は低濃度のABAに対する感受性が低下しているが、abi4-102 変異体やabi4-103 変異体と比べるとABAに対する感受性は高い。OEM個体とabi4-152 変異体でABAに対する応答性に差が見られないことから、内生のABI4-152タンパク質量で十分にABI4を介したABA応答性が飽和して抑制されると考えられる。abi4-102 変異体とabi4-103 変異体の芽生えの根は、明所で育成した場合も暗所で育成した場合も野生型よりも短くなるが、abi4-152 変異体とOEM個体では暗所で育成した場合に野生型よりも長くなった。同様に、明所で育成したabi4-102 変異体とabi4-103 変異体の芽生えの胚軸は野生型よりも長くなり、暗所で育成した芽生えは短くなった。abi4-152 変異体とOEM個体では、明所で育成した芽生えでは差は見られなかったが、暗所で育成した芽生えは長くなった。芽生えにエチレン前駆体のACCもしくはエチレン生産阻害剤のアミノエトキシビニルグリシン(AVG)を与えて同様の調査を行ったところ、すべての遺伝子型で、野生型と同じ成長変化を示したが、明所でACC処理したabi4-102 変異体とabi4-103 変異体の根は野生がたよりも短かった。これらの結果から、ABI4はエチレン生合成に関与しており、胚軸や根の成長に影響していることが示唆される。abi4-102 変異体とabi4-103 変異体ではエチレン応答遺伝子ERF1 の転写産物量が野生型よりも多く、abi4-152 変異体やOEM個体では少なくなっていた。ABA処理をすると、野生型ではERF1ERF5 の発現が減少するが、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体では発現量の高い状態が、abi4-152 変異体とOEM個体では低い状態が維持された。よって、ABI4によるERF1ERF5 の発現制御はABAに依存していることが示唆される。ABA非存在下で、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体のエチレン生産量は野生型よりも増加しており、abi4-152 変異体とOEM個体では減少し、OE個体では変化が見られなかった。ABA処理をするとエチレン生産量は減少するが、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体ではABAの効果が見られなかった。よって、ABI4はABAによるエチレン生産の抑制に関与していると考えられる。そこで、エチレン生合成酵素遺伝子の発現を見たところ、abi4-152 変異体とOEM個体ではACS4ACS8 の発現量が減少しており、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体では増加し、OE個体では変化が見られなかった。ABA処理をすると野生型のACS4ACS8 の発現量は減少し、abi4-152 変異体、OEM個体、OE個体も野生型と同程度にまで発現量が減少したが、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体では野生型よりも高くなっていた。ACO2 の発現量は、ABA非存在下ではOEM個体でのみ発現量の減少が見られたが、ABA処理をするとすべての遺伝子型で発現量が減少し、abi4-102 変異体とabi4-103 変異体の発現量は野生型よりも高くなっていた。したがって、ACS4ACS8ACO2 の転写は、abi4-152 変異体、OEM個体では減少し、機能喪失変異体では逆に増加しており、ABAによるエチレン生合成酵素遺伝子の転写抑制がABI4を介してなされていることが示唆される。ABI4は多才な転写因子で、CACCGモチーフもしくはCCACエレメントに結合して様々な遺伝子の発現を促進もしくは抑制する。エチレン生合成遺伝子プロモーター領域の配列を調査したところ、ACS4 遺伝子は5つ、ACS8 遺伝子は6つ、ACO2 遺伝子は4つのCCAC配列が含まれていた。クロマチン免疫沈降(ChIP)-定量PCR(qPCR)試験の結果、ABI4はACS4ACS8ACO2 のプロモーター領域と相互作用をし、この結合活性はABA存在下で高まることがわかった。ABI4は転写後制御を受けていることが知られており、ABI4-152で欠損しているC末端16アミノ酸は、ABI4タンパク質の安定性に関与していることが確認された。以上の結果から、アブシジン酸はABI4を介してエチレン生合成酵素遺伝子ACS4ACS8 の転写を抑制することでエチレン生産を負に制御していると考えられる。

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論文)フィトクロムによる低温耐性制御

2016-03-04 14:16:02 | 読んだ論文備忘録

Phytochrome A and B Function Antagonistically to Regulate Cold Tolerance via Abscisic Acid-Dependent Jasmonate Signaling
Wang et al. Plant Physiology (2016) 170:459-471.

doi:10.1104/pp.15.01171

中国 浙江大学のZhou らは、トマトの低温耐性における赤色光(R)および遠赤色光(FR)の役割を葉の電解質の漏れを指標にして調査した。その結果、Rは低温(4℃)耐性を低下させ、FRは高めることを明らかにした。低温ストレスに応答して発現するC-REPEAT BINDING FACTOR1CBF1 )の転写産物量はF照射した葉では光強度に関係なく野生型よりも低く、FR照射した葉では高くなっていた。暗黒下で低温処理をするとアブシジン酸(ABA)やジャスモン酸(JA)が蓄積するが、FR照射をすると蓄積量が増加し、R照射ではABAの蓄積は野生型よりも少なく、JAの蓄積は完全に見られなくなった。これらの結果から、RとFRは低温耐性において正反対の役割を有しており、これはフィトクロムを介してなされているものと思われる。RやFRによって制御されている低温耐性がCBFの経路を介しているのかを確認するために、ウイルス誘導遺伝子サイレンシング(VIGS)によってCBF1 をサイレンシングさせた系統とCBF1/2/3 を共サイレンシングさせた系統を用いて調査したところ、CBF1/2/3 サイレンシング系統ではFRによる低温耐性が低下していることがわかった。RやFRを受容するフィトクロムの変異体の低温耐性を見たところ、phyA 変異体、phyAB1B2 変異体はFR照射による低温耐性の変化が起こらなかった。また、phyAB1B2 変異体はR照射による低温耐性の変化も見られなかった。一方、phyB1 変異体、phyB2 変異体、phyB1B2 変異体は、R照射による低温耐性の変化が見られず、FR照射による耐性の増加は見られた。したがって、光条件による低温耐性の変化はphyAとphyBを介してなされているものと考えられる。ABAやJAの生合成、シグナル伝達に関与する遺伝子(NCED6ABF4 )およびCBF経路に関与する遺伝子(CBF1COR413-like )の転写産物量、ABAおよびJAの蓄積量は、R照射で低下し、FR照射で増加した。phyA 変異体では、これらの遺伝子の転写産物量とABA量、JA量はR照射で減少したが、FR照射での変化は見られなかった。phyB1 変異体、phyB2 変異体、phyB1B2 変異体では、遺伝子発現とABA量、JA量がFR照射で増加したが、R照射では変化しなかった。phyB1B2 変異体は野生型植物よりも低温耐性が高く、phyA 変異体は低くなっていた。野生型植物とphyB1B2 変異体は、照射光のFRの比率が上がるにつれて、低温耐性が高まり、CBF1NCED6LOXD の転写産物量、ABA量、JA量が増加した。しかしながら、phyA 変異体ではそのような変化は見られなかった。したがって、ABAとJAはphyA、phyBを介した低温耐性に関与しており、この耐性はFR照射によって促進され、R照射によって抑制されることが示唆される。成長至適温度(25℃)で育成しているトマトにR照射、FR照射をしても、ABA、JAの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子、CBF経路遺伝子の転写産物量やABA量、JA量に変化は見られなかった。低温処理後の耐性獲得やABAやJAの蓄積はFR比率の高い光を照射した条件で起こるが、処理前に生育していた際の光条件はその後の低温耐性に影響を及ぼさなかった。FR照射による低温耐性の獲得は、ABA欠損変異体notabilisnot )やJA欠損変異体suppressor of prosystemin-mediated responses2spr2 )では見られなかった。また、野生型植物をABAもしくはMeJA処理することで低温耐性が高まった。よって、ABAとJAの両方がFR照射による低温耐性に関与していることが示唆される。not 変異体ではJAの生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子発現量が低下しており、低温処理後のこれらの遺伝子の転写産物量やJA量はR、FR照射で変化が見られなかった。一方、spr2 変異体では、ABA生合成やシグナル伝達に関与する遺伝子の転写産物量は野生型と同等であり、FR照射後の転写産物量の増加やABA蓄積量の増加も野生型と同等であった。また、not 変異体、spr2 変異体ともCBF経路遺伝子の低温処理後の転写産物量は野生型よりも低く、FR照射による発現誘導も見られなかった。MeJA処理は、not 変異体と野生型の低温耐性を高めた。ABA処理は野生型の低温耐性を高めたがspr2 変異体では変化が見られなかった。ABA処理は野生型植物のJA蓄積量とJA生合成酵素遺伝子の転写産物量を増加させたが、MeJA処理はABA量やABAシグナル伝達に関与する遺伝子の転写産物量に変化をもたらさなかった。したがって、トマトの低温耐性においてABAはJAよりも上位で機能していると考えられる。以上の結果から、phyAとphyBはトマトの低温耐性の調節において拮抗的に作用し、この耐性は遠赤色光によって誘導されるphyAの活性化がアブシジン酸シグナル伝達、ジャスモン酸シグナル伝達を経てCBF経路を活性化させることでもたらされると考えられる。

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論文)ABI4による花成制御

2016-03-01 05:58:13 | 読んだ論文備忘録

ABSCISIC ACID-INSENSITIVE 4 negatively regulates flowering through directly promoting Arabidopsis FLOWERING LOCUS C transcription
Shu et al. Journal of Experimental Botany (2016) 67:195-205.
doi:10.1093/jxb/erv459

アブシジン酸(ABA)は花成抑制因子として機能しており、bZIP型転写因子ABSCISIC ACIDーINSENSITIVE 5(ABI5)がFLOWERING LOCUS CFLC )の転写を直接活性化していることによって引き起こされていると考えられている。最近になって、ABAシグナル伝達に関与しているAP2/ERF型転写因子ABI4の機能喪失変異体が花成促進することが報告され、ABI4も花成制御に関与していることが示唆されてきている。中国科学院遺伝与発育生物学研究所Xie らは、abi4 変異体ではFLC 転写産物量が野生型よりも少なく、ABI4 過剰発現個体(OE-ABI4 )では多くなっていることを見出した。また、abi4 変異体ではFLOWERING LOCUS TFT )の発現量が野生型よりも多く、OE-ABI4 個体では発現量の変化は見られなかった。ジベレリン(GA)による花成促進において発現量が増加するLEAFYLFY )は、abi4 変異体において発現量が増加していた。これらの結果から、abi4OE-ABI4 における花成時期の変化はFLCFTLFY の転写産物量変化によって引き起こされていると考えられる。ABI4はCCACモチーフに結合してターゲット遺伝子の転写制御を行なっている。FLC プロモーター領域には7つのCCACエレメントが存在し、ABI4はFLC 遺伝子プロモーター領域の幾つかのCCACエレメントに結合することが確認された。FT 遺伝子プロモーター領域にはCCACエレメントが4つ、LFY 遺伝子プロモーター領域にはCCACエレメントが5つあるが、ABI4はこれらの遺伝子のCCACエレメントとは相互作用を示さなかった。一過的発現系による試験から、ABI4はFLC の転写を活性化することが確認された。flc-3 変異体は早期花成に表現型を示すが、この変異体でABI4 を過剰発現させても早期花成の表現型に変化は見られなかった。また、abi4 変異体でFLC を過剰発現させると花成遅延を起こした。これらの結果から、ABI4FLC と同じ花成制御経路の上位に位置してしていると考えられる。以上の結果から、ABI4はABI5と同様にFLC の発現を直接制御することで花成制御を行なっていると考えられる。ABI4とABI5では相互作用をするDNAモチーフか異なることから、花成において両者は重複もしくは別個の機能があるものと思われる。

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