MicroRNA840 (MIR840) accelerates leaf senescence by targeting the overlapping 3'UTRs of PPR and WHIRLY3 in Arabidopsis thaliana
Ren et al. Plant Journal (2022) 109:126-143.
doi: 10.1111/tpj.15559
シロイヌナズナのマイクロRNA miR840は葉の老化に関与していることが報告されている。MIR840 遺伝子(AT2G02741)はタンパク質をコードするPPR 遺伝子(AT2G02750)の3'UTR領域内にあり、反対鎖にコードされているWHIRLY3 (WHY3 )遺伝子(AT2G02740)の3'UTRの遠位部分とも重なっている。どちらの遺伝子もMIR840 の産物であるmiR840*とmiR840のターゲットと推測されている。中国 福建農林大学のMiao らは、miR840の前駆体pre-miR840 およびターゲット遺伝子のPPR 、WHY3 の発現プロファイルを調査し、3遺伝子とも花と長角果で高い発現を示すこと、ロゼット葉での発現を経時的に追うと、miR840とmiR840*の発現量は葉の老化開始時に増加し、PPR の発現とmiR840*の発現は負の相関があるが、WHY3 の発現とmiR840の発現との間には相関が見られないことを明らかにした。MIR840 の発現量が低下した系統は葉の老化が遅延し、MIR840 の発現量を増加させた系統は葉の老化が促進された。また、MIR840 過剰発現系統では老化関連遺伝子の発現量が増加していた。PPR 転写産物量とMIR840 (miR840*)発現量との間には負の相関が見られたが、WHY3 転写産物量はMIR840 の発現量の影響を受けていなかった。しかしながら、WHY3タンパク質量はMIR840 過剰発現系統で減少しており、miR840はWHY3 転写産物の翻訳抑制効果があることが判った。これらの結果から、WHY3 とPPR はそれぞれ3'UTRのmiR840とmiR840*の標的となっており、PPR mRNAとmiR840*の対合はその分解をもたらすが、miR840はWHY3のタンパク質蓄積を阻害すると考えられる。T-DNA挿入によってWHY3 発現量が低下した系統(kdwhy3 )、アンチセンス鎖によってPPR 発現量を減少させた系統(appr )の老化の進行は野生型と同等であったが、kdwhy3 appr 二重変異体はMIR840 過剰発現系統のように老化が促進され、老化関連遺伝子の発現プロファイルも類似していた。また、MIR840 過剰発現系統でPPR とWHY3 を過剰発現させることで老化は野生型と同等になった。以上の結果から、MIR840 の転写産物は葉の老化開始時に蓄積し、老化促進は、主に隣接する遺伝子のPPR とWHY3 の重複する3' UTR部分を標的として、mRNAと翻訳レベルでこれら2遺伝子の発現を阻害すると考えられる。miR840*-PPRとmiR840-WHY3は、相乗的に植物の老化関連遺伝子の発現を再プログラムし、結果として植物を老化の開始へと導くと考えられる。