Strigolactone analog GR24 triggers changes in PIN2 polarity, vesicle trafficking and actin filament architecture
Pandya-Kumar et al. New Phytologist (2014) 202:1184-1196.
doi: 10.1111/nph.12744
ストリゴラクトン(SL)はシロイヌナズナの根毛伸長を促進することが知られている。根毛伸長の制御にはオーキシン排出キャリアのPIN2が関与していることから、イスラエル 農業研究機関(ARO)ボルカニセンターのKoltai らは、SLとPIN2との関係を調査した。PIN2 プロモーター制御下でPIN2-GFP融合タンパク質を発現するコンストラクトを導入したシロイヌナズナ芽生えを合成SLのGR24で処理すると、一次根伸長領域表皮細胞の細胞膜の上側のPIN2-GFPシグナルが増加し、細胞膜上のPIN2の極性(細胞膜上側と横側との比)も増加した。このような変化は、オーキシン取込キャリアであるAUX1では同様の試験を行なっても見られなかった。よって、SLは根伸長領域の表皮細胞細胞膜上のPIN2タンパク質の極性に影響していると考えられる。SL非感受性変異体max2 の根伸長領域表皮細胞でのPIN2-GFPシグナルの強度と極性は野生型と同等であったが、GR24処理によるPIN2-GFPシグナルの表皮細胞膜上の増加や極性変化は起こらなかった。よって、SLによるPIN2タンパク質の増加や分布の変化はMAX2に依存した作用であることが示唆される。max2 変異体でのPIN2 発現量は野生型よりも僅かに低く、野生型ではGR24処理によってPIN2 発現量が増加したが、max2 変異体ではPIN2 発現量に変化は見られなかった。よって、SLシグナルはMAX2に依存してPIN2 の発現を誘導していることが示唆される。PINタンパク質は細胞膜とエンドソームの間を恒常的に循環しており、この小胞輸送がPINタンパク質の細胞膜上の局在を決定している。小胞輸送の特異的阻害剤であるブレフェルジンA(BFA)処理をすると、野生型ではGR24処理によってPIN2タンパク質を含んだBAFボディが増加したが、max2 変異体ではそのような変化見られなかった。このことから、GR24処理はMAX2に依存してPIN2タンパク質のエンドサイトーシスを誘導していることが示唆される。エンドソームマーカーのARA7とGFPとの融合タンパク質を発現するシロイヌナズナを用いて、一次根伸長領域表皮細胞でのエンドソームの運動速度を見たところ、GR24処理はエンドソームの運動速度を速めることがわかった。max2 変異体のエンドソームの運動速度は野生型と同等であったが、GR24を添加しても運動速度の変化は見られなかった。したがって、GR24はMAX2に依存して一次根伸長領域の表皮細胞でのエンドソームの運動を誘導していることが示唆される。細胞の小胞輸送にはF-アクチンが関与していることから、TALIN-GFPを導入してアクチン繊維を標識し、根端伸長領域表皮細胞のアクチン構造を観察したところ、GR24処理により細い繊維の割合の増加と太い繊維の減少、繊維の偏在性の低下が見られた。しかしながら、max2 変異体ではそのような変化は見られなかった。よって、GR24はMAX2に依存してアクチン繊維の束化を低下させていることが示唆される。アクチン重合阻害剤LatBによるアクチン繊維の脱重合はGR24処理によって促進されることから、GR24はF-アクチンの束化を低下させることで、アクチンを不安定化し、LatBによるアクチン脱重合を促進していると考えられる。アクチン繊維の束化の低下はアクチン繊維の動態を増加させることが知られている。GR24処理は一次根伸長領域表皮細胞のアクチン繊維の動態を増加させ、この増加はMAX2に依存していることがわかった。GR24処理によるアクチン構造や動態の変化は、オーキシン処理によっても引き起こされた。SLのPIN2、小胞輸送、アクチンの動態に対する効果が根毛伸長促進と関連しているかを見るために、ACTIN2 (ACT2 )の変異体der1 、PIN2 の変異体eir1 、PIN輸送関連タンパク質TRANSPORT INHIBITOR RESISTANT3の変異体tir3 およびmax2 変異体にGR24処理をして根毛の伸長を見た。その結果、eir1 変異体はGR24に対する感受性が野生型よりも高くなっていたが、tir3 変異体、der1 変異体、max2 変異体は野生型よりもGR24に対する感受性が低下していた。一方、これらの変異体の根毛伸長はオーキシン処理によって根毛伸長が促進された。以上の結果から、GR24による根毛伸長促進はアクチン繊維の束化の低下による小胞輸送の制御が関連しているが、単純にPIN2に依存したものではないと思われる。