以前紹介記事を書いた、長嶺克則が絶好調だ。このままいくと、9月28日の「東日本新人王 準決勝戦」(フライ級でエントリー)も勝ち進むと思われる。
別に”肩入れ”してる訳ではない。しかし、とにもかくにも、日々、準決勝に向けて成長しているのが、わかる。
上の写真は、9月3日、角海老宝石ジムでのスパーリングでの、ワンショット。
えんじ色のTシャツを着ている左側が、長嶺だ。右腕を伸ばし、ストレートを当てた瞬間を撮ったものだが、ヒット、またヒットということはない。
なにしろ相手は、大内淳雅、日本ライト・フライ級4位という強者(つわもの)。この9月26日(水)には、同級チャンピオンの黒田雅之に挑むタイトルマッチを控えている。すでにプロ22戦と、長嶺の4戦と比べると、キャリアにも雲泥の差。
そのうえ、黒田対策か、接近して左右から猛スピードで繰り出す、アッパー気味のショートフックの連打には、痛打されっぱなし。
しかし、打たれっぱなしじゃないのが、長嶺。激しいピストンパンチの応酬が、何度も繰り返された。
長嶺本人いわく「ボコボコにされかけました」
そういって、終了後、青いヘッド・ギアを脱いで、したたり落ちる汗を気にもせず、にが笑いして、感想ふたこと目。
「相手になってなかった。まあ、なんとか日本ランカーとやれてるって状況です」
そうクチにしつつ、こう言ってのける。
「前半2ラウンド目、終わって、ボコボコにされかけたんで、ボディ狙って」
打たれ強く、戦いながら修正できるのが、長嶺の強みだ。
実は、角海老のランカーにとって、長嶺は単なる練習台ではない。かなり”歯ごたえのある”ボクサーと見ているようだ。この先、勝ち上がってくる前に、今のうちにクセ、パターンを見ぬいておこうとしてるフシもある。
ひょいと、もう1度、上の写真を見て欲しい。右側のコーナーに、ビデオカメラでこのスパーリングを、それもフルラウンド、しっかり録画している大男が写っている。トレーナーの、フセイン・シャーだ。
後楽園ホールで角海老の選手の試合中、リング近くで観客を巻き込んで声援を送っている、應援團長みたいな、あの人だ。24年前、ソウル・オリンピックにパキスタン代表として、ミドル級で出場。同国初の銅メダルをとった、メダリストでもある。
そう感じつつ、長嶺に外で話しを聞いていたら、ジムから駆け寄ってきた人間がいる。
「ああ、長嶺君、ここで聞いちゃっていいかな? 6日の夜、空いてる?」
どうやら、奈須勇樹のトレーナーのようだった。
「空いてますけど」
「じゃ、奈須とまた。来てもらえる? ここで、決めちゃっていいね」
「はい、わかりました」と、長嶺。
長嶺のトレーナーは、今日も帯同していない。本来はいて欲しいところだ。
奈須との8月30日の、激しいスパーリングの模様は、すでに書いた(打った)ので、それを読んでいただきたい。
ちなみに奈須は、長嶺と同じフライ級で、日本7位、東洋・太平洋12位。長嶺が、全日本新人王になれば、12位にランクインされ、奈須とヘッド・ギアを取り去り、試合をする可能性が来年に出てくる。
にやりと、少し嬉しそうに、長嶺が聞いてくる。
「どういうことなんでしょうねえ?」
「ん? おそらく、君が奈須サイドにとって、思った以上に”歯ごたえのある”相手だったからだと思うよ」
その6日のスパーリングは、都合がつかなくて見てはいない。しかし、再び見ごたえのある展開が繰り広げられたはずだ。
ちなみに奈須は、この19日、スーパー・フライ級8回戦に登場。相手のタイのライト・フライ級9位のワッチャラポンは、”タイ人”の枠を超えた、互角に近いいい打ち合いを見せてくれたのに・・・3ラウンド、急に奈須の1発でコテンとダウン。
タイ人ボクサーにしばしば見られる、本来持ってるチカラで、やるだけやって、あっけなく1発コテン負けのパターン。ん、もう、やめてくれい!
さて、この3日のスパーリングをたまたま居合わせ、食い入るように見ていたのが、かの田中栄民トレーナー。
見た目を聞いた。
「良い子だね。パンチがシャープだね。間合いも良い。うまいし、いいもの、持ってる。
ただ、線が細いね。でも、スピードもある。今、どこまで行ってるの」
今度、28日に東日本新人王戦フライ級の準決勝に出ます。
「(全日本新人王)取るんじゃないの」
サラリと、言う。
長嶺、したたかに早くも研究され、それをはねのけて、どこまで登り詰めるか!?
楽しみが、ひとつ増えた。