Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

ティル・フェルナー-ベートーベンPfソナタシリーズ最終回@ウィグモアホール、ロンドン

2010-06-10 23:00:00 | コンサート

ついに、ティル・フェルナーのベートーベンPfソナタシリーズは最終回を迎えた。最終回は勿論、最後の3つのソナタ。

開始前、今日の演奏がBBCのRadio3で放送されることが伝えられた。「皆さんの参加-特に沈黙パートでの-をよろしくお願いします」といういつものアナウンス。いつもはこの台詞があまり功を奏さないのだけれど、流石に今日は、放送のため、というより、この3曲のために、そしてティルのために、皆が沈黙を守る。楽章間の咳すら、殆どない。これはロンドンにしては記録に値する!?

前半がOp.109、Op.110、休憩を挟んで、Op.111。曲自体の完成度が上がってゆくように、ティルの演奏の完成度も後ろに行くほど上がってゆく。

テンポ、音色、フレージング、強調される音型、気になることが多すぎる。思い出しきれない。言葉も追いつかない。Wigmore Hallでの演奏会では、これまでにも何度かBBCの録音にあたったことがある。ただ「近日、BBCで放送します」と言われても、生を聴いているから録音なんてどうでもいい、と、過去には一度たりともその放送を聴いたことはないが、今回は、絶対、スコアとともに、放送時間を待ち構えよう、と思っている。

最後のソナタの最後の部分。右手がつりそうなほどの長さ&速さのトリルをするところ、そのトリルの感じが、昨日バレエを見たせいだろうが、バレリーナの小刻みに動くトゥを思い出させたことと、その「白鳥の歌」にも似た美しい音楽が相俟って、まるで白鳥がそこに居るように思えた。

一番最後の和音の収まり方が、どうも納得できていない。来シーズン(今年の秋)になるが、パリで同じプログラムの演奏会が予定されているとのことなので、もう一度Salle Gaveauでも聴いてみたい(Salle Gaveau、見かけによらず音響も良いし)-相変わらず反省していない私である。

今日の演奏が聴けて、本当に幸せだった(また、暫く席から立ち上がれなかった)。

ありがとう、Till-ところで、次の挑戦は何かしら?


アニバーサリー-スティーブン・イッサーリス@ウィグモアホール、ロンドン

2010-06-06 23:00:00 | コンサート

イッサーリスのチェロ、デーネシュ・ヴァーリョン(?)のピアノ。アニバーサリーシリーズを続けている彼、今回は、

Barber (生誕100年): Cello Sonata in C minor Op.6

Chopin (生誕200年): Cello Sonata in G minor Op.65

Schumann (生誕200年): Violin Sonata No.3 in A minor arr. Isserlis

von Dohnanyi (没後50年-指揮者のドホナーニの祖父): Cello Sonata in B flat minor Op.8

前半は特にメロディの美しい曲、後半は技術的に気が狂いそうなほど難しい曲(前半も難しいが輪をかけて)。流石、ご当地ウィグモアホールでの演奏会、気合が入ったプログラムだ。これだけの曲を準備するのは相当大変だったことだろう。

チェロ弾きの友人がイッサーリスはガット弦しか使わないので、とにかく演奏は前で聴け!とアドヴァイスしてくれたので、かぶりつきで。確かに音量は控えめである。後ろの席ではどのように聴こえていたのだろうか。特に前半の2曲にはこのガット弦を張ったストラドは極めて良く合っていたように思う。ショパンを大音量で弾ききるのは、今風かもしれないが、この演奏の方がショパン-美的感覚に優れた人-を納得させられるのではないかと感じた。

イッサーリスの演奏フォームは非常に美しかった。古典的な正統派なのだろうか。先日、プロのチェリストにチェロの演奏方法を教えていただく機会があったが、弓の持ち方(主に中指で弓を支え、人差し指はコントロール用)など、彼の指導と一致していて感動した(当たり前、と思われるかもしれないが、プロでもかなり違ったフォームの人がいる)。弓のすばやい動きは、右手首を柔軟にして、まるでマンドリンのトレモロをするかの如く素早く動かす。

ピアニストのヴァーリョンも相当実力がありそうだ。ショパンなど、本当に美しいし、後半も難しい掛け合いを見事に弾ききっていた。彼にも拍手!

後半は、素人から観ても技術的に非常に高度だということが良く分かる。シューマンはイッサーリスの編曲、とのことではあるが、楽譜は市販のヴァイオリンソナタのものを使用していた(おそらく書き込みはあるのだろうが)。最後のスケールをチェロで弾くなんて、気が遠くなりそう。

こういう激しい動きのある曲の場合は、もう少し鳴らしやすい弦を使ったほうがいいのでは?とは思うが(時々音がかすれていたので)、それでもイッサーリスはガット弦にこだわるのだろうな。確かに3弦、4弦の開放弦の音は美しいが。。。

演奏家が一生懸命に取り組み、またそれなりの成果を上げた、良い演奏会を聞かせてもらった。来シーズン、スティーブンはジョシュたちとウィグモアホールに戻ってくる。今から楽しみである。


ミーハー健在-カルメン@ロイヤルオペラ、ロンドン

2010-06-06 01:00:00 | オペラ

ランラン&バルトリの演奏会でベルリンへ行くはずだったのだが、バルトリの体調不良のため演奏会がキャンセルとなった。という訳で、Londonで過ごす週末-。

まずは、いつも通り買出しへ。Poilaneでブリオッシュ(写真右)と食パン(?)を購入。PoilaneはPain de Campagneが有名だけれど、このところの私のお気に入りはブリオッシュ。£8以上するから、1000円以上、ということになるけれど、それだけのことはある。切ったときの香りが素晴らしいし、冷凍して焼いても、さくさく感が失われることがない(Le Pain Quotidienのブリオッシュは冷凍して焼くとべたべた感が否めない)。

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さて、ベルリンへ行くはずだったから、土曜日はコンサートの予定を入れていなかった。で、ぐぐってみると、ロイヤルオペラハウスでカルメンがある。天井桟敷が£13で手に入ったので、出かけることにした。

カルメン-おなじみのくだらないメロドラマ(従って、いくらテノールといっても、このホセをボストリッジが演じられるとはとても考えられない)。歌手は、強いて言えばミカエラを歌ったMaija Kovalevskaが良かったか。カルメンはイギリス人Christine Rice、カルメンにしては声が柔らかすぎるし、いまひとつ存在感がない。ホセ(Bryan Hymel)はいけてない男だからどうでも良いけれど、テノール独特の搾り出すような声が苦手。フランス語も下手。

で、何が楽しかったかというと、指揮者である。Constantinos Carydisというアテネ出身の今年36歳になる指揮者。非常にしなやかでありながら、メリハリのある指揮。スコアも使用せず暗譜で振っていたようである。ググってみると「カルメン」は得意としているようだ。彼のために今度はかぶりつき席で観てみようか。

相変わらずミーハー健在である。


ラタトゥイユ

2010-06-04 21:08:00 | ロンドン

日本出張の折に、友人のお手製ラタトゥイユをいただき、とても美味しかったのでレシピを教わり作ってみた。

先週は、オリーブオイルがクセの強いものだったこと、ナスを入れすぎたこと、トマトが少なかったこと、材料を炒めすぎて最後に形が残らなかったこと、と反省点の塊であった。

そこで、今週は、クセの少ないオリーブオイル(いずれもエキストラバージンではあるが)を用い、ナスは小さいものを探し、トマトは日本のトマトのようなものを探してきた。英国産とはいえ、なかなか立派なトマトたち。

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料理=実験の私にとって、切って炒め煮るだけのラタトゥイユは、手技的には難しくないのだが-実は小心者で、塩を少しずつしか入れられないのだ(さっちゃんはね~♪)。昔、料理番組を見ていたら、どこかの老舗の料理人が「塩味は一度で決めなければいけない」と言っていた。旨味の出方が違うらしい。でも、無理。

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で、ラタトゥイユの完成。星は2つかな。美味しいけれど、絶対まだ改善の余地はある。今度はイタリアントマトか缶詰のホールトマトで作ってみようか。あるいは、もう少し野菜を焦げ目が付くように炒めてみようか。

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ベランダのバラを飾って、まるで夏のようなロンドンの夜を過ごす。


残念×2.5-ハーディング指揮LSO@バービカン、ロンドン

2010-06-03 20:50:00 | コンサート

ドボルザークの交響曲第7番。ドボルザークの交響曲の中では、第9番、第8番についで演奏される機会も多いし、人気もある(と思われる)。個人的にはドボルザークの交響曲の中で一番好きな曲、と思っていたのだが。。。

この曲、演奏によってひどく好き嫌いがでることに、今更ながら気がついた。え、これがあのドボ7?というほどにつまらなかった(ちなみに今日の演奏は2曲目のHK Gruber "Aerial"以外つまらなかったのだが)。1曲目のワーグナーよりはマシに思えた(これは拍手する気にもなれなかった)が、集中力の欠けた演奏なのか(ワーグナーはそう言う感じだった)、テンポ感のない演奏、といったら良いのか。ドボ7だし、ハーディングだし、と期待が大きすぎたのだろうか、とにかく、残念。

2曲目のAerialは、トランペット協奏曲。ホーカン・ヘルデンベルゲルがソリスト。トランペットの可能性というのか曲芸というのか、を見せてもらった。トランペットはロータリー・トランペットに見えたが、スライド・トランペットでもあったのか、途中一部トロンボーンのように管をスライドさせた場面があった。また、付属品を付け替え、管長を変えているようでもあった。いろいろな弱音器を使ったり、ピッコロ・トランペットや角笛も使われた。同じ楽器でも調が変わっただけであたふたする私、楽器(しかも移調楽器)まで1曲の中で自在に使えるなんて、尊敬。

演奏の最初は、倍音なのだろうが、和音のように2音が聞こえるように音を響かせ(しかし、音質的には相当しょぼい)、管楽器にこういうことができるのか、と面白かった。また、美しい高音も聞かせてくれた(本当はもっと長い間その音を聞きたかった)。エンディングでピアノに頭をうずめていたのは(背中に隠れて彼が音を出し続けているのかは不明だったものの)、ピアノの弦と共鳴させ、ピアノの弦を鳴らし、その減衰をもって曲を終えていたように見受けられた。とにかく、今日の演奏の中では唯一楽しめた曲であった。

「地上で最高のトランペット奏者」とも言われるらしいが、あまりに高度なテクニックばかりで良く分からなかった。アンコールで有名曲でも吹いてくれたら、確認できたのに、残念。


寂しい嵐-デイヴィッド・グレイルザンマー@ウィグモアホール、ロンドン

2010-06-01 19:43:00 | コンサート

デイヴィッド・グレイルザンマー-一風変わったピアニスト、ということで興味を持って出かけた。曲目は、

Webern: Variation Op.25

Haydn: Variation in F minor HXVII:6

Berg: Piano Sonota Op.1

Mozart: Piano Sonata in A K331 "Alla Turca"

Schoenberg: Six Little Pieces Op.19

Schubert: Six Momtns Musicaux D780

ということで、2つずつ対になっていることが分かる。演奏も、2曲ずつ間を空けずに演奏。

どなたかのブログにもあった通り、コピーした譜面をつなぎ合わせて1枚の譜面とし、演奏が終わる度に1枚1枚落としてゆく。その譜面が床に落ちる音も、まるで演奏の一部、といった風である。

ピアノの上手さ、というよりは、その切り口とか、パフォーマンスで受けているピアニストなのではないか、という印象を受けた。今年始めにParisで同じような試みをしたようで、それが成功したからLondonにやってきたのかわからないが、Londonでは、まずその曲目で客の入りが非常に悪い(500人程度のホールの1/3程度しか入っていなかったのではないか)。さらに、演奏も上述のごとく、上手いというわけでもない。

モーツァルトの第一楽章が終わったところで拍手するのは何故?さっぱり分からなかったのは、この曲は3楽章でカップリングされている私の頭が固いからなのか?

熱狂的ファンは、最後ブラボーの嵐(尤も聴衆があまりに少なく、ちょっと寂しい嵐)だったが、個人的には久しぶりに「お金返して」な演奏会だった。全額とは言わないけれど、半額は返して欲しいな。