テミルカーノフ指揮、フィルハーモニア・オーケストラでチャイコフスキーのエフネギー・オネーギンからポロネーズ、プロコフィエフのPf協奏曲第3番、チャイコフスキーの交響曲第5番。
プロコのPf協奏曲第3番はマツーエフのピアノ。マツーエフの技術力、運動神経のよさが遺憾なく発揮された。良い意味で、まるで機械のように正確に打鍵する。ここまで正確ならば、これも美、芸術と呼んで差し支えないはずだ。第1楽章と第3楽章はそう言う意味で大満足。
一方、いまひとつ物足りなかったのは第2楽章。特にpで歌う第一変奏が。音はしっかり小さくなっているし、本人が歌おうとしているのも分かるのだけれど、何かが足りない。スパイスの入っていない料理のようだ(イギリスだから?)。マツーエフ、歌が歌えるようになったら、鬼に金棒では?
後半はチャイコの交響曲第5番。あまりに有名な曲だが、今日はちょっと味付けが違った。テミルカーノフのテンポ設定が、かなり独特なのである。最初のクラリネットはかなりゆっくり目(クラリネットの首席奏者、相当上手い!)で、改めてこのメロディの美しさを認識させてもらった。一方、最後(第4楽章)はこれ以上はないほど速かった。
第2楽章のホルンは、まあ無難にこなしていた。ホルンは演奏自体が難しいから、無難にこなせばブラボーなのかもしれないが、感動するまでには至らず。
テミルカーノフのテンポと強弱のつけ方は、「加速度的」。ぐぐっと、後ろに向かって加速度を掛けて速くしたり、ffにしたり。ただ、その独特のテンポ感の上に、指揮が指揮棒を使わないため、打点が見難いのか、テンポを変更するところが分かりづらいのか、テンポ的にオーケストラが多少崩壊している感もあった。面白かったけれど、ちょっとリハーサルを覗いている感も。もう少し完成度が上がっていたらスタンディングオベーションしても良かったけれど。
クラリネットの活躍が素晴らしかったと思う。指揮者よ、もう少しクラリネットを褒めてあげても罰は当たらなかったと思うよ-冒頭、あそこまでゆっくりとしたテンポで吹かせたのだから。。。
とりあえず、私からはマツーエフとクラリネット奏者に花束を!