goo blog サービス終了のお知らせ 

Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

卵が先か鶏が先か-ヴィットリオ・グリゴーロ@ロイヤルオペラハウス、ロンドン

2010-06-26 00:00:00 | オペラ

くだらない話だと最初から分かっているのに、行ってしまう「オペラ」。今日も呆れてものも言えないマスネの「マノン」。絶世の美女らしいけれど、頭は足りない、倫理観もない、経験からも学ばない、どーしようもないお嬢ちゃんの物語。

先日ボストリッジの伴奏をしたパパーノが指揮をし、マノンをネトレプコが歌う、ということで出かけたが、いつもの通りダークホースが(すみません、私が無知なだけなのですが)。

それがChevalier des Grieuxを演じたヴィットリオ・グリゴーロ。テノールだけれど、絞りだすような苦しい声質ではなく、明るくおおらかな声。声量も驚くほどある。ウィグモアホールで本気で歌われたら、間違いなくこちらが参ってしまうような声。

しかし、聴いているうちにこの人の声はクラシックとはちょっと違うのでは?という疑問が沸いてきた。何がクラシックとそれ以外を分けるのか、分けるものなんてないのかもしれない。実際エリザベート王妃国際音楽コンクールの声楽部門でもオペレッタだったかミュージカルだったかの曲を歌った人もいるのだから。ただ、何かがそんな風に感じさせたのだ。

家に帰ってググって見ると、この人はウェストサイドストーリーを歌ってクラシック外の世界でも人気が高いと言うことを知った。なるほど。声の質がミュージカルへの道へ進ませたのか、ミュージカルを歌うことでこういう声質あるいは歌唱法になるのか?鶏と卵、どちらが先なのだろう?

パパーノは、伴奏より指揮が好きだ。小さな体が大きく見え、腕が生き生きと滑らかに動く様子は美しかった。是非、彼の振るヴェルディを聴いてみたい!なんて、そんなことを考えていたからか、帰途の頭の中はラ・トラヴィアータの「プロヴァンスの海と陸」になってしまった。

一方、ネトレプコ。産後で太ってしまったのか?この体型で16歳はないだろう(実際今年39歳になるのだから仕方ないが)。男を手玉にとって、転落させてゆく、「さげまん」には向いているのかもしれないが、絶世の美女の16歳、といったら、もう少し線の細い感じを期待してしまうので、特に第一幕のあたりは違和感にさいなまれた。

後半はだんだん役柄とネトレプコのギャップが小さくはなってきたけれど、それでも、やっぱり体格が良すぎる。カルメンとかならば良いのだろうけれど。

「マノン」の脚本なのか、この演出なのか分からないが、流石フランスオペラ。基本線は悲劇なのだが、悲劇悲劇していなくて、笑える場面が多々ちりばめられている。ドラマチック悲劇のイタリアオペラや深刻悲劇のドイツオペラも良いけれど、週末の始まりにはこのくらい笑える悲劇が丁度良い。