Que ma vie est belle!

私とは、美しいもの、美味しいもの、楽しいものの集合体。

愛すべき貴公子(?)-ドミトリー・ホロストフスキー@ウィグモアホール、ロンドン

2010-06-11 23:00:00 | コンサート

拍手が違う-昨日のティル・フェルナーなど、「どれどれ、お若いの、お手並み拝見」な拍手だったのに、今日の拍手は、

熱烈歓迎

と言っている。歌手に疎い私は、来る前にWikiで予習した。最後の一節を「歌唱力も悪くはないが、外見が特に良いからトップスター」と解釈し、危険信号が点っていたのだが、期待してよいのだろうか?

まず、その立ち居振る舞い。この間のフローレスもそうだが、オペラ歌手の、堂々としたことよ。これだけでピアニストよりギャラを50%は高く設定できるような気がする。

果たして-声が、確かに凄い(個人的にはもう少しクリアな声が好きだが)。豊かな音量-豊か過ぎて、このホールでは狭すぎる-ロイヤルオペラハウスくらいないと。ffで歌われるとホールのほぼ中央に居ても、耳がびんびんする(オーケストラではないが、咳が我慢できないならffの間にどうぞ、というくらい)。最前列は鼓膜が破れていないか?この人はオペラを聴きたい人だ。

これならば、このウィグモアホールにしては記録的な高値チケットも止むを得ないのか?人間の体が、これだけの音量を出す、というだけで凄いではないか?ピアニスト、ヴァイオリニスト、指揮者-皆ギャラは相当高いけれど、やっぱり歌手には敵わない。体をどのくらい張って仕事をするか、なのだろうか。

こんなに狭いホールでたった500人を相手に歌ってくれることには感謝したいが、曲目は、ちょっとロシアン・カンツォーネ(チャイコフスキー&ラフマニノフの小品)。彼にとっては母国語だから、日本人ならば、花や荒城の月を歌っているようなものだろうか。それなのに、何をどういう順番で歌うのか覚えていない様子。次曲が始まる前に伴奏者に題名を聞くのはやめよう。

見た目は、確かにWikiにあった通り、プラチナブロンド、日に焼けたような顔色、スタイルも良く、「貴公子」っぽく見えるが、実は、笑うとかなり庶民的。それを決定付けたのが、後半、ラフマニノフの2曲目、V molchan'i nochi tainoi。最後、あまりにも美しい歌声に、皆が本当にため息をついた(ロンドンっ子は素直に反応する)。と、後ろで誰かがくしゃみを!

そのあまりのタイミングのよさに、一瞬皆がたじろいだ瞬間、ホロストフスキーがこらえきれずに吹き出した。勿論、皆つられて、こらえていた笑いをいっせいに小爆発させた。

ホロストフスキー、確かに、見た目は「貴公子」だけれど、良い意味で貴公子(?)だ。ロシアの田舎から、その声を頼りに世界へ羽ばたいた愛すべき貴公子(?)

こういう人の演奏を普通に聴くことができるから、やっぱりロンドンは離れられない。