「味」その後……

ひと月ほど前、義母へのお土産にと、インスタントの伊勢えびの味噌汁を買ってきた。
義母は時々、防災用の備蓄のためと、簡単に食事を済ませたいときのために、
市販のインスタント味噌汁を買っている。
お土産にするなら伊勢えびの風味はどうだろうと私たちは思ったのだ。
数日後、夫が感想を訊いたら、
「ありゃ、うまくないっけね」と顔をしかめて義母は答えた。
一緒にいた私は、義母の反応にちょっと面食らった。
夫婦二人きりになってから、夫は私に気を遣うみたいに、
「お袋、ウソでもいいからうまいって言えばいいのにさ」
と、ぼやいたものの、私たちにとって、義母のこのはっきりした気持ちの表し方は喜ばしいことと思っている。
以前の義母は、自分の気持ちや感情をほとんど出すことがなかった。

少し前のことになるけれど、義母と一緒に、このお味噌屋さんへ出かけた。
キロ当たりの値段がちょっと高い目だと思ったけれど、義母も私も麦味噌を買ってみた。
それから何日か経って義母に会ったとき、開口一番、
「あ～んた、この前のあの味噌はすんごいおいしいけっよ」と、本当に目を輝かせて言ってきた。
私たち夫婦も、このお味噌はすごくおいしいと思っていたので、一安心だった。
「香りが立つ」とはこういうことかと思うほど風味豊かな味噌なのだ。
義母はまたこのお店で買いたいと言っている。

昨日、SSKマヨネーズを開けた。
何も言わずに夫に、Q社のものとSSKの両方を出して味比べをしてもらった。
夫は、酸味がまろやかと感じたのはQ社で、懐かしい味がするのはSSKと言った。
酸味に対しての私の感想は逆で、酸味をはじめ全体的に味の輪郭がはっきりしているのはQ社だと感じ、SSKはまろやかだと思った。
私が以前、自分で作ったマヨネーズに似ている味はSSKの方だった。
私は小学生のころ、マヨネーズを白いご飯にかけて食べるのが好きだったのだけれど、
卵がけご飯が好きな人なら、ご飯に合うのはたぶんSSKなのではないかと思う。
このマヨネーズ、地元清水のあちこちの店頭にあればいいのになと思う。