そうして、気がついたときには見たこともない小さな駅に、親子三人で立っていた。すがすがしい潮の香と、なまぐさい魚のはらわたの臭いがいりまじったような、一種強烈な空気を胸一杯に吸込んで、ほっと生き返った。駅の標識に、
かんばら
と書いてあった。
興津、由比、蒲原……と駿河湾沿いに続く半農半漁の何の変哲もないこの町が、私の第二の故郷になろうとは、私自身はもちろん、両親にしてもこの時は夢想もしていなかったのだが、あっというまに月日は流れて、少年期から思春期にかけての八年間を私はこの土地で過ごした。
江國 滋/著 「はずかしい旅――蒲原」より
清水市は'03年4月に静岡市と合併をした。
そして、あさって31日には、新たに庵原郡蒲原町が静岡市と合併する。
清水区と蒲原町の間には庵原郡由比町があるのだが、その町を跳び越しての「飛び地合併」となる。
清水市が蒲原町が、静岡市と合併し、具体的にどのように変わり、変わってゆくのか、私自身はよくわからない。
けれど、同じ市となることで、私はこれまでにない親近感を蒲原町に抱いている。
上り東海道線に乗ったとき、また、旧国道1号線を車で通るとき、車窓から眺める興津(おきつ)、由比、蒲原の、宿場町の面影が残る景色がとても好きだ。
もう7、8年前になるけれど、興津から東へ富士川町まで歩いたことがある。
今日の夕方、ローカル放送で特集されていた蒲原町の風景を見て、またゆっくりと訪ねてみたくなった。
江國氏が過ごしたことのある蒲原町を。
かんばら
と書いてあった。
興津、由比、蒲原……と駿河湾沿いに続く半農半漁の何の変哲もないこの町が、私の第二の故郷になろうとは、私自身はもちろん、両親にしてもこの時は夢想もしていなかったのだが、あっというまに月日は流れて、少年期から思春期にかけての八年間を私はこの土地で過ごした。
江國 滋/著 「はずかしい旅――蒲原」より
清水市は'03年4月に静岡市と合併をした。
そして、あさって31日には、新たに庵原郡蒲原町が静岡市と合併する。
清水区と蒲原町の間には庵原郡由比町があるのだが、その町を跳び越しての「飛び地合併」となる。
清水市が蒲原町が、静岡市と合併し、具体的にどのように変わり、変わってゆくのか、私自身はよくわからない。
けれど、同じ市となることで、私はこれまでにない親近感を蒲原町に抱いている。
上り東海道線に乗ったとき、また、旧国道1号線を車で通るとき、車窓から眺める興津(おきつ)、由比、蒲原の、宿場町の面影が残る景色がとても好きだ。
もう7、8年前になるけれど、興津から東へ富士川町まで歩いたことがある。
今日の夕方、ローカル放送で特集されていた蒲原町の風景を見て、またゆっくりと訪ねてみたくなった。
江國氏が過ごしたことのある蒲原町を。