なんとも刺激的なタイトルではないか。しかも監督はSABU。さらには彼にとって初めての高校生の青春映画。どんな作品になっているのか、とても楽しみだった。虐めを扱う。みんなから手ひどいいじめにあっている少女(石井杏奈)を助ける男の子(中川大志)のお話というある種の定番のラブストーリーなのだけど、SABU監督は甘い映画にはしない。
ストレートで激しい。悪気のない、でもとんでもないいじめに対して彼女はた . . . 本文を読む
よくぞまぁ、こんな小説を書いてくれた。夫が風呂に入らなくなった、という、ただそれだけのことで世界が壊れていくさまが描かれることになる。まぁ、世界といっても彼ら夫婦の世界でしかないのだけど、夫婦にとってそれがまず一番大事。
冗談のようなお話だけど、冗談にはならない。なんと芥川賞候補作である。コメディではない。純文学作品なのだ。ふざけているわけではない。でも重くはない。こんなことになったことを夫も妻 . . . 本文を読む
今年一番衝撃的な映画は瀬々敬久監督の『明日の食卓』だった。あの映画の原作は椰月美智子の同名小説だ。今回の新刊もあの小説と同じパターンになっている。3人のお話が同時進行していく。彼らの家族のお話が描かれる。全く別々のお話ではない。彼らの家にいる子供たちが同じクラスだ。3つの家庭のそれぞれの状況が主夫である3人の視点から描かれていく。そうなのだ。主人公の3人は主夫として家庭を守っている。同じようにふた . . . 本文を読む
人間の本能を描く。「性欲」だ。それを「正しい欲」と書いて「正欲」とする。今の時代ようやく同性愛も認知されつつある。だけど、まだまだ偏見ははびこる。人間は本能のまま生きたらダメなのか。犯罪にならないのなら許されるか。道徳的に許されないことはどうか。というか、道義的な判断って、誰がするのか。世間の目か? そうじゃないだろ。生理的な不快感はどうなのか。
この小説で描かれる3人の男女のお話は痛ましい。彼 . . . 本文を読む
今年いちばん期待していた映画だ。昨年春の大阪アジアン映画祭で上映された時には後できっとすぐに公開されるものと思っていた。だから見逃してもあまり気にしてなかったのだが、その後いつまでたっても上映はなく、もしかして日本公開はなくなったのかと心配していた。ようやく見ることが叶ってうれしい。
トム・リン監督の映画が好きだ。彼の真面目さや純粋さはその作る映画からいつも溢れている。だからいつも見ていて胸がい . . . 本文を読む
2019年の映画。越川道夫監督作品。こんな映画が作られていただなんて知らなかった。鹿児島県の最北端、長島島を舞台にした町おこし映画の1本なのだが、単なる島のPR映画ではなく、特別養子縁組を巡る産みの母親と育ての母親(と、その家族)の物語で、同様の題材を扱った河瀨直美監督の傑作『朝が来る』よりも1年以上早く作られている。作品の完成度でも見劣りはしない隠れた傑作だった。(僕が知らなかっただけなのかもし . . . 本文を読む
『一年の初め』や『ヤンヤン』のチュン・ヨウジェ監督の最新作。今回も痛ましい映画だ。人の心の襞に分け入って、さりげなくそのまま提示する。確かに主人公に寄り添うけど、そこにはある種の距離もある。その距離感が絶妙だ。主人公の青年がなぜ少年とその祖母にそこまで関わるのか。恋人だった男の息子と母親だから。死んでしまった恋人への罪滅ぼしのため。いろんな理由をつけることは簡単だ。だけど、そんな簡単な理由で説明は . . . 本文を読む
他人に興味がない。人とつきあう必要も感じない。できないことはできないと言う。やりたくないことはしない。なんだかめんどくさい奴、と思うだろう。でも、そんなの彼女の勝手ではないか。別に誰かに迷惑をかけているわけではないし。でも、寂しくないのか、とか、可哀そうにとか、周りからいらぬおせっかいや干渉をされる。余計なお世話だ。ただ、自分のペースで生きていたいだけ。
すごいな、と思う。強いな、とも。なかなか . . . 本文を読む
高校生の女の子たちが文化祭に向けて映画を作る。これはそんな映画ささやかな映画だ。マニアックな設定である。でも、今の時代、誰でも映画を作れるから、特別なことではない。でも、今時映画研究部(なんで、映画部は映研って言うのかな?)なんて存在するのか。不思議。まぁ、高校生が作った映画が評判になり劇場公開されることはあるだろう。スマホがあれば作れる。でも、部活として、っていうのが、やっぱり僕には不思議。
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岩井俊二監督が中国で撮った作品。しかもこの作品の後、『ラストレター』を撮ったらしい。順番はこちらのほうが先、というのは驚きだ。昨年公開時に見た『ラストレター』があまりに素晴らしすぎてこの作品を見るのは少し怖かった。この2作品は別物の映画だと思い見ようとしたけど、それは難しい。同じお話、だから基本同じ台本で同じ監督がほぼ同じ時期に連続して撮っているなんて、前代未聞だろう。
お話が同じだからかもしれ . . . 本文を読む
ようやくこの映画を見ることができた。劇場で公開されているときに見ようと思ったけど、ついつい新作のほかの映画を優先させているうちに公開が終了していた。オリジナルの『この世界の片隅で』はもちろんちゃんと劇場で見ている。すごくよかった。だからこの追加撮影された別バージョンである新作に対して、もうすでに一度見ている映画だから、という安心もあったのだろう。
予想した通り、あのすばらしい前作と同じ映画だった . . . 本文を読む
これは全く見る予定ではなかった映画だ。ほかの映画を見に行ったら満席で見れず時間がもったいないから見れるものを見ることにした。他に選択肢がなかったので、これを仕方なく見た。なのに、予想外に面白くてなんだか少し得した気分。よかった。ヤンキーの喧嘩映画なんて、今時見たくもないし、英勉監督の映画はいつもがっかりさせられる作品ばかりだったし、と不安要因ばかりだったのだが。結構抑えたタッチで最後まで崩れない。 . . . 本文を読む
広島に原爆が落ちた日に公開する。たまたまではない。確信犯的に。NHKの制作による映画で、すでにTVでパイロット版は放送されている。それの劇場版というわけではない。最初からまず劇場での上映を前提にして作られた。ほんとうなら大きな劇場で拡大公開されてもいい。まぁ、この映画自身は地味な作品なので、たくさんの観客を集めることは現状では無理かもしれない。だけど、日本人なら、見るべきだ。そのための8月6日公開 . . . 本文を読む
こういう大作ミュージカルが劇場で大公開され、映画館には人が溢れている。映画を見たみんなは拍手喝采して、劇場を出るときにはみんな笑顔で幸福な気分になる。誰もを幸せにする超大作。これはそんな映画。
だけど、残念ながら映画館には人はいない。公開2週目に突入したばかりなのに、もう1日1回上映で、僕が見た劇場はお客は5人だけ。予告編が始まって5分後に入場した時にはお客はなんと僕以外にたった1名だけだった。 . . . 本文を読む
先日読んだ『めぐり逢いサンドイッチ』がとてもよかったので、この続編をさっそく読むことにした。読んだ瞬間は続編が出ているなんて知らなかったので、ラッキーと思った。彼らのその後を知れたら知りたいと思うのはご機嫌な作品の場合当然のことだろう。
ということで、予約入れようと思うと、今本棚に残っているということで、すぐに図書館にGO! こんなふうにたまたま手にした1冊が気に入り、たまたま昨年には続編が出て . . . 本文を読む