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映画・演劇のレビュー

カムヰヤッセン『山の声』

2015-06-20 22:23:59 | 演劇
大竹野正典の傑作戯曲にカムヰヤッセンの北川大輔が挑む。なんだか、うれしい。北川さんは大竹野を評価してくれた。それだけで、自分のことのようにうれしい。(おまえは何様だ!)大竹野作品がたくさんの人たちの手で甦る。それは後藤小寿枝さんが『大竹野正典劇集成』を作ったことの意図のひとつで、これも、その収穫のひとつだろう。オリジナルの初演と同じ、ウイングフィールドで上演されるのもうれしい。 僕が見たのは、 . . . 本文を読む
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群ようこ『パンとスープとネコ日和』 『福も来た』

2015-06-20 22:21:42 | その他
2冊続けて読んだ。とても読みやすく、心地よい小説で、一瞬の出来事だった。1日1冊で2日で終わる。何にもない。50過ぎて脱サラして、食堂を始めた女性の話。母親がやっていた食堂を改装して、パンとスープ、サラダにデザート。シンプルなメニュー、しかも種類もあまりない。ワンプレートで千円。安くはないけど、手間ひまかけたこだわりの料理、食材も無農薬野菜を中心にした。 小川糸の世界に近い。というより、彼女の . . . 本文を読む
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『寄生獣 完結編』

2015-06-18 22:02:11 | 映画
前作の圧倒的なドラマを受けて、それをさらに加速させるのは並大抵ではない。だが、山崎貴監督は、それを成し遂げた。緩急自在のストーリー展開は怒濤のラストに向かって、なだれ込む。アクションとドラマが心地よく融合し、主人公である青年が寄生生物との融合により、どんどん変化して行く様と共に、実にスリリング。染谷将太がすばらしい。前作とはまるで違う無表情で、押し通す。それは寄生されたからではなく、寄生生物と戦 . . . 本文を読む
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『セッション』

2015-06-18 22:01:27 | 映画
公開からもう2カ月になるのに、まだ堂々ロングラン公開中である。しかも、全国TOHOシネマズでのロードショーだ。この規模の作品でそういうことは今までありえなかった。だいたい今時、2か月のロードショーなんてハリウッドの大作映画でも不可能だ。そんな偉業をこんな地味なノー・スター映画が成し遂げている。諸事情があって先日ようやく満を持して見たのだが、噂に違わぬ衝撃的な映画だった。興奮した。ありえない、と思 . . . 本文を読む
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baghdad café 『キンセアニェーラ』

2015-06-18 21:57:06 | 演劇
この小さなお茶パーティーを、あえて第15回公演とは呼ばずに「14の次で、16の前」と呼ぶ。そういうネーミングが今回の試みの意図だ。「番外公演」とか「実験公演」なんていうよくある言い方はしない。「キンセアニェーラ」という初めて聞くスペイン語の意味に込められた「たくらみ」。 泉寛介が仕掛けたこの試みは、とても危険な作業なのだが、なんとかギリギリ綱渡りセーフ。こういう作品で失敗したらやりきれない。企 . . . 本文を読む
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がっかりアバター『この町で、僕はバスを降りた』

2015-06-18 21:52:53 | 演劇
とてもいいタイトルだ、と思った。こういうタイトルは好きだ。主人公の僕はたまたまここでバスを降りる。ここである必然性なんかない。でも、何かに心惹かれて、ここで下車してしまった。バスは目的地に向かうために、乗ったはずなのに、途中下車するにはおかしい。だが、僕はそれでいいと思う。もしかしたら明確な目的なんかないまま、このバスに乗ってしまったのかもしれない。 坂本アンディは4月の『啓蒙の最果て、』から . . . 本文を読む
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A級Missing rink  『くらげなす、流体力学の基礎知識』

2015-06-10 22:23:35 | 演劇
まず、このタイトルが、なんだか、わけわからない。でも、靴と、なんとなくクラゲっぽい水のようなのが、そこから流れ出すビジュアルに心ひかれる。今回の作品のためのポストカードを見たときから、これは、と思ったけど、仕上がった作品自体も期待通りの傑作で、本公演が今から楽しみだ。 A級Missing rink おなじみの「トライアウト」である。試演会をして、その反応をもとに、作品を完成させていくという、い . . . 本文を読む
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朝井リョウ『武道館』

2015-06-10 22:22:49 | その他
アイドルについて、である。幼いころからアイドルになりたいと願った少女が、実際にアイドルになり、芸能活動をする。6人組のユニットのメンバーになり、まだ今はブレイクしていないけど、夢にむかって前進していく姿を描く。と、こう書くと、それって、何? と言われそうだが、純文学の世界から、こういう出来事を描く視点が興味深い。 朝井リョウは、単なる興味本位ではなく、実にリアルに彼女たちの抱える問題にメスを入 . . . 本文を読む
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近藤史恵『私の命はあなたの命よりも軽い』

2015-06-09 22:07:26 | その他
このタイトルは怖い。小説はストレートにこのタイトルのままのことを核心に置いて、そこに向かって進んでいく。ミステリタッチの作品で、なんでもない日常の描写の積み重ねなのに、それがこんなに心をざわめかせ、不安にさせていく。お話はやがて、とんでもないところへと、向かう。なんとなく、違和感を感じる。でも、そんなのは自分の勘違いでしかないのかもしれないと、思おうとする。そうじゃなくては、耐えがたい。妊娠して精 . . . 本文を読む
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劇団大阪『紙屋悦子の青春』

2015-06-09 22:06:43 | 演劇
きっと、武藤さんはずっと、この作品を作りたかったんだろうな、と。そんな彼の熱い想いが確かに伝わってくる作品だった。昨年の『なすの庭、夏』を経て、自信を持って放つ作品は実に端正な青春物語。 オリジナルの時空劇場作品は、僕が見た最初の松田正隆作品で、内田淳子、金替康博、亀岡寿行による傑作。(コンブリ団のはしぐちしんも出ていた。橋口さんを初めて見たのも、この作品)映画にもなった。黒木和雄監督作品。原 . . . 本文を読む
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レトルト内閣『文明ノ獣』

2015-06-09 22:05:05 | 演劇
レトルト史上最高傑作。(ただし、僕の見た範囲内で、だが) 三名刺繍さんは今まで、ここまでストーリーに重点を置いたお話を作ったことはなかったはずだ。だが、今回、数奇な運命に弄ばれる双子の兄妹のドラマを、50年に及ぶ歴史のうねりの中で描いた。今回彼女はこの作品をまず、物語として立ち上げる。 お話は1984年からスタートする。母と娘のふたり暮らし。なぜ、自分には母親以外の身寄りはないのか。親戚や、ま . . . 本文を読む
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『Zアイランド』

2015-06-09 22:03:19 | 映画
品川ヒロシ監督の第4作。彼の映画は芸人の余芸ではない。エンタメの衣を纏いつつも、確かな作家としてのスタンスを持つ。北野武とは別の意味で、新しいタイプの芸人映画作家の誕生だ、と思わせる。そんな彼のこの新作は、なんとゾンビである。日本のゾンビ映画はつまらない、という通説を覆すための大胆な挑戦である。 それにしても、このリアルなゾンビたち。今までの映画はそこをおざなりにしてきた。ゾンビなんか、その他 . . . 本文を読む
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TAMHIM『マハズレ』『果ては戦友になる』『地区Kのこと』

2015-06-09 22:02:15 | 演劇
この週末、5本の芝居を見た。そのいずれもがとても刺激的で当然、圧倒的に面白く、こんなに芝居が面白かったのか、と思わせるものばかりで、今年最高の週末となった。 その5本の1本目がこのプロジェクトだ。短編2本と中編1本の3作品を一気に見せられる。2時間20分。怒濤の連作だ。6人の作家たちが集まり、共同制作する。競い合うのではなく、刺激を与えあい、思いもしない世界を提示する。お互いの可能性を助長させ . . . 本文を読む
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クロムモリブデン『七人のふたり』

2015-06-09 22:01:02 | 演劇
このタイトルおかしいやろ、と誰もがすぐに気がつく。こんなにもわかりやすいクロムはもしかしたら初めてではないか。これはきっとクロムの入門書のような芝居に違いない、なんて思いながら、見始めた。でも、僕に言わせれば今さら入門、って、って感じだ。自慢にも何にもならないけど、もう25年くらいクロムの芝居をずっと見ている。思い起こせば、91年頃、今は亡きスペースゼロで『キエテナクナレ』を見たときから、ほぼ全作 . . . 本文を読む
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南河内万歳一座『楽園』

2015-06-04 21:44:28 | 演劇
久しぶりに万歳の芝居を見た。なんだか懐かしいし、ほっとする。昔は万歳や新感線の芝居は欠かさず見ていたけど、そのうち新しい芝居を見ることの方が優先して、しかも、彼らはどんどん有名になってしまい、特に新感線なんかチケットが手に入らないらしい、から無理して見ない。(それにああいう大劇場での芝居は苦手だ。)でも、南河内万歳一座は変わらない。いい意味で変わらないのがいい。20年経とうが、30年が過ぎようと . . . 本文を読む
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