習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

小瀬木 麻美『ラブオールプレー』

2011-07-14 20:39:27 | その他
 スポーツ物は大好きだが、とうとうバドミントンを題材にした小説が登場したか。なんだかワクワクする半面、つまらないジュニア小説ならイヤだな、と不安もいっぱいで読み始めた。昔、中学生だった時の話だが、バドミントン部に入っていた。当時は(今も、かもしれないが)男の子がバドミントンをすることに、もの凄く偏見があった。実は自分も、きっと簡単なスポーツだろ、と高を括って入部した。だが、まるで、そんなことはなか . . . 本文を読む
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彗星マジック 『定点風景』

2011-07-10 20:50:49 | 演劇
 1年間続いた連作短編集の劇場版長編である。残念ながら評判の短編集は一度も見ることが叶わなかった。火曜日はダメだからだ。仕事が9時まであるから、不可能なのだ。せめて1度でも見ておきたかった。あんなに塚本さんが褒めていたのだから、きっと素敵な作品だったのだろう。ということで、今回初めてこの作品と対面した。期待しすぎて、ちょっとがっかりだ。  よくあるエンタメ芝居と異口同音で、ことさらそれ以上のもの . . . 本文を読む
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せすん『かたりの椅子』

2011-07-10 20:45:56 | 演劇
2時間10分に及ぶ大作である。永井愛による不条理なお役所仕事を描いたこの作品に劇団せすんは真正面から取り組んだ。東京郊外にある「かたり市」が、地域の活性化を目指した文化事業の一環として郷土愛をテーマにしたアートプロジェクトを実施する。そのために呼ばれた小さなイベント会社を興したばかりの女性が、文化財団と役所、実行委員会の面々の間に入って右往左往する姿を描く。 とても真面目に作ってあるけど、台 . . . 本文を読む
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『恋愛戯曲』

2011-07-09 23:17:46 | 映画
 タイトルは『恋愛戯曲』。サブタイトルには『私と恋におちてください』とある。なんだか安っぽいし、そのまんまやんか。あまりの芸のなさに、反対になんか「特別な何か」を期待させられるほどだ。だが、あっけなくもその儚い期待は完璧に裏切られる。見事なまでに。なんでここまでわざとらしい作品にする必要があったのだろうか。コメディーだから、と片付けるのははばかられる。安易な手抜きとは考え難い。でも、本気で作ってい . . . 本文を読む
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青木淳悟『私のいない学校』

2011-07-09 22:56:23 | その他
 主人公のいない小説である。複数の人物がそれぞれのパートを担うのでもない。語り部となる人物はいる。彼女の担任となる先生だ。彼の語りでお話は進展する。一応は。だが、彼が狂言回しになるのではない。彼は事実の記録に徹する。カナダからの留学生が主人公なのだが、彼女は担任の記録に中で登場するのみで、彼女の気持ちが語られる部分なんかない。それは彼女だけでなく、ここには一人称の語りや会話は存在しない。  とあ . . . 本文を読む
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『小川の辺』

2011-07-07 22:30:12 | 映画
 主な登場人物は7人である。しかも家族だけ。主人公と彼の妹を中心にして、彼らの両親。お互いの妻、夫。そして、2人にとっては兄弟同然の使用人。これ以上シンプルな人間関係はないだろう。そしてストーリーの方もまたシンプルの極み。主君の政策に意見をした妹の夫(彼の親友)を、主君の命により討ち取ってくるため彼の出奔先である江戸に行く。それだけ。  ストーリーは1行で説明できるし、その展開も全く意外性ゼロ。 . . . 本文を読む
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『奇跡』 

2011-07-07 22:17:55 | 映画
 小6と小4の男の子を主人公とする。鹿児島と福岡。2つの場所で別々に暮らすことになった兄と弟だ。彼らの日常のスケッチを淡々と描き、ラストの奇跡に至る。兄は、新しく開通する九州新幹線の「つばめ」と「さくら」の一番列車がすれ違う瞬間を見ると奇跡が起こるという噂を聞く。子どもたちは奇跡に向けて旅に出る。  ここで描かれる奇跡とは、ふつうの奇跡ではない。(ようするに、「なんか思いもしないような凄いこと」 . . . 本文を読む
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西村賢太『苦役列車』

2011-07-07 21:32:23 | その他
今時こういうプロレタリア文学みたいな貧乏話を小説に書いて、誰が読むのだろうか。しかも、難しい漢字をいっぱい使って、わざと読みにくい文体にして、読者を煙に巻く。おまえらとオレとは住む世界が違うから、おまえらにはオレの気持ちなんかわかるまい、と言われているみたいで、なんかムカつく。こういう挑発的な作り方をわざとしているのだが、そうすることに何の意味があるのだろうか。口当たりのいいサービス精神旺盛な小 . . . 本文を読む
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『 もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら 』

2011-07-06 19:56:42 | 映画
 この映画化だけは何をどうやっても必ず失敗すると思った。ドラッガーの経済書をベースにして、彼の理論のもと高校野球部の女子マネージャーがそれを実践していく姿を描くドラマなんて映像化しても面白いはずがない。これをなんとか面白く見せるためなら理屈っぽくなる部分をすっ飛ばして見せるしかないのだが、そんなことをしたらこのお話を見せる意味がなくなる。ただのスポ根ものになってしまうし、それではあまりに陳腐だ。1 . . . 本文を読む
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『BIUTIFUL ビューティフル』

2011-07-06 19:36:58 | 映画
『バベル』のイニャリトウ監督が放つ生と死の物語だ。黒沢明の『生きる』を視野に入れた作品。ガンであと2ヶ月の命と宣告された男が生きているうちに何が出来るかを考える。そして実践する。その姿を描く。2人の幼い子供たちをどうするかが、一番大きな問題だ。別れた妻と寄りを戻そうとするのも、そのためだ。この映画は子供たちと彼の心の交流を描く感動のヒューマンドラマに出来る素材だ。よくあるパターンの親子愛で泣かせ . . . 本文を読む
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『わたし出すわ』

2011-07-06 19:35:54 | 映画
 お金について考えよう、という映画だ。お話自体のおもしろさはあまり期待しないほうがよい。ミステリ的な展開もその謎解き部分も、きっと肩すかしを食らうことだろう。主人公(小雪)はミステリアスな女だが、映画自体はミステリーではない。あれだけ引っ張っといて、結論はあまりに当たり前すぎて、がっかりする。  だが、これはそんな映画ではないのだから、勝手に何かを期待する方が悪いのだ。普通の女が、「わたし出すわ . . . 本文を読む
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『東京公園』

2011-07-05 22:58:42 | 映画
 小路幸也の小説が初めて映画化された。しかもこんなにも素敵な作品になっている。監督はまさかの『ユリイカ』の青山真治だ。彼がこんなタイプの映画を撮るなんて信じられない。この2人の組み合わせって、意外すぎて想像もつかなかった。見る前はなんだか不安で、なんか理屈っぽい映画になっていたら嫌だなぁ、なんて失礼なことを思っていた。だが、出来上がった映画は小路幸也とも違うし、ましてや青山真治とは思えない。この2 . . . 本文を読む
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ハレンチキャラメル『我に恋する用意あり!』

2011-07-05 22:56:54 | 演劇
ハレンチキャラメル・レーベルでの新作である。神原さんは今年も精力的だ。今年3月、浮狼舎としての久々の新作を上演したのに続き、夏の定番となりつつあるハレンチキャラメルである。いつもと同じようなお話だが、きちんとまとめてあるから、安心して見られる。お決まりのストーリーをいろんな形に変化させて、見せてくれる。だが、ただのルーティーンワークではなく、これはリバースだ。山田洋次の寅さんシリーズのように同じ . . . 本文を読む
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『君と歩こう』

2011-07-04 21:54:34 | 映画
 石井裕也が『川の底からこんにちは』の直前に撮った作品で、ようやくDVD化されたので、レンタルしてきた。従来の自主映画のステージでのびのびと自分の世界観を展開しており、彼がこの後ブレイクすることとなった商業映画第1作『川の底からこんにちは』以上に彼らしい佳作である。17,8歳の高校生の男の子が、34歳の高校教師と駆け落ちする、という衝撃のドラマを、いつもながらの幼稚な下ネタ満載で見せる肩の力の抜け . . . 本文を読む
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乾緑郎『完全なる首長竜の日』

2011-07-04 21:36:36 | 映画
 『インセプション』が引き合いに出される。昏睡状態にある患者の意識と交感する話である。彼の心の中に入り込み、彼のリアルに揉まれるうちに、どこが現実で、何が心の風景なのかすら、わからなくなる。  主人公は少女漫画家で、彼女の日常を丹念に描くことからスタートして、彼女が抱える問題へと話が進む。自殺したまま、眠り続ける弟とSCインターフェースというシステムを通して意志の疎通を図る。ここからが本題なのだ . . . 本文を読む
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