凪良ゆうの2017年作品。『流浪の月』以前の作品は初めて読む。彼女は2006年にBLでデビューしてこの小説が初の非BL小説になるらしい。読み始めて、甘いな、と思った。設定が、ではなく話の詰め方が、である。怖さが足りないからお話にリアリティが生じない。もちろん死者が彼女に寄り添って会話もすることがリアルじゃないというのではない。それはこの小説の仕掛けだから、気にしない。だが、前提をどう活かしていくかは気になる。展開において失敗している気がする。
結婚して2年。ある日突然彼が死んだ。だけど、死後幽霊になっていつも側にいてくれる。それは彼女の妄想かもしれない。当然誰も信じてくれない。誰かに言うこともない。頭がおかしくなったと思われるだけだから。そのくらいの分別はある。そんな彼女の日々が描かれる。『ゴースト NYの幻』の幾分シリアスタッチという感じ。
4話からなる短編連作スタイルの長編。ロボットが感情を持つことを許せるのか、を問う第2話にしてもそうだが、あまりに核心をストレートに突きすぎて、お話に奥行きがなくなる。第1話の恋人の気持ちを命をかけて試してしまい死なせてしまう女性の話もそう。性急すぎて、見失う。
3話が一番出来がいい。小学4年の女の子しか愛せない19歳の大学生。ロリコンではなく、たまたま好きになった女の子が10歳だったなら、しかも理性があるから一切変なことはしない。歳の差9歳は許されるのか。相手が歳上なら9歳差は大丈夫か。彼と29歳の女性である主人公なら。だが、ふたりの純粋な想いのドラマでは終わらない。ラストに仕掛けられた捻りが凄い。
4話は高校でのストーカー事件。これも詰めが甘い。確かにちゃんと読ませてくれるけど、それがお話のレベルにとどまるのが残念だ。