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映画・演劇のレビュー

伊坂幸太郎『バイバイ、ブラックバード』

2011-04-25 18:01:54 | その他
 これは6話からなる長編小説だ。相変わらず伊坂幸太郎は上手い。2股でも大概なのに、なんと5股をかける星野という男が主人公。でも彼はプレイボーイではない。それどころか、難の取り柄もないような、どこにでもいそうなふつうの男だ。5股だけど。そんな彼が「バス」に乗せられる。地獄行きのバスだ。そのための監視役が身長180cm 体重180kgの大女、繭美。これは彼女が星野と2人で彼の5人の女たちの所を訪れるという話だ。

 繭美がいきなりそこにいて、話が進むのには驚いた。説明なしの問答無用。星野とその恋人の会話に繭美が割り込む。別れ話をしにきた彼の横に恐怖の繭美ちゃんがいる。そのすごいインパクトの外見だけでなく、その行動も凄まじい。しかも、態度はでかいし、上から人を見下したように物を言う。最低最悪のそんな繭美と「結婚する」(当然、ウソなのだが)ということを、5人の女性たちに告げに行くという物語だ。

 それにしても、バスってなんなのか。それすらわからない。だいたい繭美は何者なのか。彼女に導かれて地獄のようなところに問答無用で連れて行かれるという不条理。繭美は死神かなんかか? なにがなんだか、まるでわからないけど、星野くんはその不条理をちゃんと受け入れて5人の恋人たちに別れを告げる。でも、この5人の女たちもなんだか大概で、むちゃくちゃな話になる。

 しかも、ラストまで読んでも「バス」のなぞは解き明かされない。ラストでは、なんかわからない間に繭美が、星野を助けようとするし。NOと言えない男、星野と付き合ううちに繭美だけでなく、僕たちまでこの男が憎めない男に見えてくる。話の作り方が実に上手い。まぁ、それだけなのだが。

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