久しぶりの神戸遥真。相変わらずかわいい小説か、と思ったけど、違った。これはかなりビターな内容だと思う。表のストーリーではなくその背景にあるテーマが重いのだ。そこはさらりとは描けないという作者の覚悟がある。
オンラインで知り合ったふたりの話をそれぞれのサイドから描く連作小説。もちろん2冊は独立した作品である。だからこの一冊でちゃんと完結する。だけど、それと同時に2冊セットでもひとつの作品であるとも言えるはず。だから続けて『@ユナ』も読まなくっちゃ。
こちらは「さくら」の側からのお話。彼女は中1になったばかりの女の子。名前はさくらではなく、未來。さくらはアカウント名。どうしてさくらなのか。左頬にサクラ色の大きなアザがあるから。
これはオンラインで知り合ったふたりのお話だけど、未來がこのアザとどう向き合ってきたのかを描く小説。これまでの神戸遥真とは一味違うのはそんなこだわりが描かれるところ。軽く流すわけにはいかない。それは彼女にとっては大きな傷みだから。自らのコンプレックスと向き合い克服していくまでが描かれる。女の子にとって顔に赤いアザがあるのはつらい。それだけで他者との付き合いが難しくなる。だから友だちがいなかった。小学校から中学生になり新しいスタートを切るけど、最初からつまずく。
周りの目から逃れられない。みんなは彼女が思うほどには気にしてないけど、彼女は気になる。怖い。
オンラインで出会ったユナと対面することで見えてくること。勇気を出して本当のことを打ち明けることから始まること。結局はよくあるところに落ち着くけど、そこまでの紆余曲折が丁寧に描かれるから納得いく。これはYA小説というジャンルだから可能な描き方だろう。見事。