山田洋次は年老いて無邪気に昭和を懐かしむ。惚けてしまったとは言わないけれども、こんなにも古くさい映画を今の時代に作ってしまって大丈夫だろうか。ノスタルジアではなく、結構マジみたいなので、見ていて困惑するしかない。
まるで寅さん映画を見ているようで。橋爪功と西村まさ彦の親子がW寅さん。笑うしかない。あげくは中嶋朋子が「おにいちゃん」とか言い出すし。彼女がサクラを演じるんだもの、なんだかなぁ、である。今度は本当のお兄ちゃんである吉岡秀隆が寅さんの役で登場するのか?
前2作と違って、今回は明らかに今の時代を描く映画であることを棄てている。是枝映画の家族を見た直後だったので、そのあまりの落差にもう言葉はないが。でも、これはこれで山田洋次の映画なのだ。
山田洋次は1970年に『家族』という厳しい映画を作っている。彼の最高傑作だ。あれから50年近くの歳月が経ち、彼は今、この映画を作っている。その事実の無残さをどうこういうのではない。これが今、彼に作れる映画なのだ。その事実を真摯に受け止めるしかない。これはこれで決して間違っているわけではないのだから。