このバカバカしい芝居は何なのだろうか。もちろん鈴木さんはわかってやっているのだろう。ふざけているわけではなく、本気でこのコメディに挑んでいるのかもしれない。2部構成で、前半の1時間の無意味さは何なのか。ホールが明るくなったときには唖然とした。ここで休憩が入るのか。こんなにも無内容で、だらだらして、大丈夫なのか、と。あまりのことに立ち上がれない。
芝居はもちろん後半ちゃんとした話に(も)なる。このままおふざけに終始して2時間以上の愚行を延々と描くはずもない。では、用意されたお話は感動的なドラマなのか、というと、実はそうではない。最後の戦車の登場シーンには、あきれ果てた。こんな無駄なことのためにあれだけ立派な戦車を作っていいのか、と。
芝居全体のテンポも遅く、ひたすら繰り返しが多くて、ダレてくる。もうそこはわかったから話を先に進めてくれよ、と何度も思う。でも、ご丁寧にひとりひとりのエピソードをなぞる。それはオープニングの登場人物紹介のシーンと同じだ。でも、クライマックスでも、同じことをする必要性があるのかと、疑問に思う。でも、やってしまった。
前半の無意味さと、後半の悲劇の対比。ダメだしのラストの戦車の迫力。無駄なことにお金と労力をつぎ込むこと。この芝居の描く近未来の日本は、老人ホームと自衛隊を同居させて老人問題を一気に解決する画期的な世界だ。そこでの悲劇はこの自衛隊は戦争をして、一気に老人人口を削減するためにあるという事実だ。そのことを知った老人たちは命を張って国家権力と闘うのだが、ただの犬死にでしかない。そんなバカバカしい行為をこの芝居は肯定も否定もしない。ヒロイズムでも歌い上げたなら、お笑い草なのだが、そうじゃない。冷静にこの愚行を見守る。踊らされる老人たちも、踊らせる国家も同じ阿呆でしかないというシニカルな視線が芝居全体を貫いている、のかもしれない、と思った。2時間20分に及ぶ壮大なホラ話は、愚かな現代世界を象徴するのか。
ただ台本があまりに安直で、芝居はどう好意的に見ても穴だらけの作品にしかならないのが、つらかった。70歳以上しか入隊できない老人部隊という発想の面白さを、恐怖にまで昇華させなくては芝居は納得のいくものにはならない。前半の、慰問でやってくるストリッパーたちは、コッポラの『地獄の黙示録』のプレイメイトたちを想起させた。ほんとうなら、前半のあそこで混沌とした狂気をさりげなく提示しておくべきだったのだが、そこでもおふざけでしかなく、終わらせている。