95年大晦日、渋谷で起きた「ファイヤー通り騒動」(そんなのが実際にあったのか?)をクライマックスにする青春小説。こういう感傷的なお話は嫌いではないけど、難しい。作者が一人で悦に入ってしまう可能性も高い。自分だけで盛り上がり、読み手を置き去りにする。先日見た「シネドライブ」の映画なんてそんな感じのものばかりだった。まぁ、これはプロの小説家の作品なので、そんなことはないけど、かなり危ない。あと少しで、ただの自己満足の感傷過多な作品になり下がる。
95年という特別な時間に16,7歳という多感な時期を過ごした少年たちが、渋谷を舞台にして、暴れる。阪神淡路大震災があり、地下鉄サリン事件の年。世紀末、ノストラダムスを信じた子供たちは21世紀を待たずして、この世界は終わるのではないか、と不安を感じていた。今を全力で生きなくては未来はない、と思った。そんな少年たちの暴走を20年後から描く。
2015年。37歳になった主人公が、ひとりの少女と出逢うことで、回顧する20年前。あれから、自分たちはどんな大人になったのかを改めて考える。あの頃抱いた夢や希望。それが長い歳月の果て、どう色褪せたのか。
20年経つと、ただのオヤジになる。そこからさらに20年経つと僕になる。悲しい話だ。でも、僕は今、あと少しで57歳になるけど、これまでの生き方を後悔していないし、結構気に入っている。この小説の子供たち(37歳だけど)も、きっと20年後、そう思っているのではないか。ここで描かれる17歳と37歳は確かに57歳につながるのだ。感傷的な青春ドラマだが、これはこれで悪くはない。