「真実があるのは、虚構の中だけだ」と映画評論家の武井が言う。現実の世界より映画(虚構)の方が素晴らしい。
これはある呪われた小説を巡る因縁話。2度の映画化の頓挫。映画に関わった関係者の方々を集めて話を聞く。監督、脚本家、俳優、そしてこの小説を書いた作家。監督以外は映画に関わって死んでいる。今回集まった監督、評論家とその恋人、プロデューサー、ディープなファンである漫画家、編集者夫婦。さらには今回この取材にあたる作家とその夫(弁護士)。
日本からアモイ、ベトナムへの2週間の船旅。香港経由で日本に戻る。最後のインタビューは夫である。そうして一冊の本を巡る物語は完結を迎える。
15年かけて書かれた小説は、15日間の船旅の話だ。ここにはもういない飯合梓という作家と彼女(彼?)が書いた唯一の小説『夜果つるところ』に関する謎を巡るミステリー。だが、650ページの大長編を読み終えても謎は解けない。当然だ。人生はミステリーじゃないし、そこには犯人なんかいないからだ。
この小説を15日かけて読めばよかった。だが、残念だが5日で読み終えてしまう。なかなか人生は予定通りにはいかない。