三原光尋監督の久々の新作映画だ。うれしい。しかも今年は来月にも、もう1本新作が公開される。そちらは傑作『しあわせのかおり』(08)に続いて再び藤竜也とのコンビ作である。とても楽しみ。さらには年末にもう1作待機しているようだ。
さて、だけどまず今はこちらから。
若年性認知症になった39歳の男性とその家族の物語。冒頭の病院での検査シーンから驚く。僕も彼と同じくらい忘れている。スプーンと歯ブラシと、それから... 映画を見ながら焦ってしまった。さらにはラストのメガネを探すシーン。あんなことは日常茶飯事だ。冗談じゃない。彼と変わらない。
ただ、僕はまだ医者に行ってないから大丈夫だと思うけど。まぁ、気をつけなくてはならないと思っている。僕はたぶん認知症予備軍である。
さて、この映画なのだが、まるで文科省推薦の教育映画みたいな映画で、だから真面目でありきたりの展開をする。実話の映画化で本人が関与しているからこういう感じなるのだが、見ていて少しツラい。あまりにお上品で、当たり障りないきれいごと。悪くはないとは思うけどこれでは物足りないし、鼻白む。これでは冒頭のTVクルーの取材と変わらない。みんないい人で助けあって頑張りましょう、なんて、なんだかなぁ、である。
主役のふたり(貫地谷しほりと和田正人)は悪くはないし、三原監督は誠実。だけど、それだけでは映画じゃない。善意の人と同じように悪意の人たちもいる。そんな世界のなかで、彼らが若年性認知症とどう闘うのか。それをしっかり描いて欲しい。甘いだけの映画では共感できない。悪い映画ではないけど、なんだか見終えてモヤモヤしてしまった。実話なのに、きれいごとに思える。