習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

山田高校『汚い床で転がって』

2019-07-27 21:14:10 | 演劇

 

5分以上続く前説から、終演後の挨拶の後のオマケのダンスシーンまで全部含めて50分という短さ。全く無駄がない。とてもテンポよくアドリブも含めて完璧に、丁寧に作られてある。キャスト3名+1名(黒子として1名が登場する)、それぞれのキャラクターが見事に描き分けられてあり、この最強チームが、3年間の演劇部員としての高校生活を全力で走り抜けていった過程が、この短い芝居として鮮やかに描き切られてある。

 

卒業式の後、思い出深い演劇部の部室に戻ってくる3人。ここですべてが始まった。そして、今日終わる。3人はこの3年間を振り返る。それって、よくあるパターンのお話なのだ。だが、そんなパターンの枠の中で、この作品は、自己満足の芝居にはならないし、甘えのかけらもない最高の作品世界を提示する。音響照明も含めて、見事に計算され、作られてある。作り手は冷静に自分たち自身を客観的に見つめているのだ。その距離の取り方が素晴らしい。事実(自分たちの実体験)をベースにしながらも、それを見事にフィクションの中に落とし込んでいる。

 

たった3人の部員だけれど、彼女たちが先輩や、後輩たちに支えられ、演劇とともに高校生活を過ごしていったことが短い会話の中から確かなものとして伝わってくる。3人のアンサンブルが見事だから、お話にどんどん乗せられていく。独りよがりなものになったり、楽屋落ち的な感傷過多なものになったりしがちな題材なにに、決してそうはならない。というか、そうはさせない強い意志が感じられる傑作なのだ。タイトルも秀逸。ここで過ごした時間を愛おしむ。そんな想いが込められたタイトルだ。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« すかんぽ長屋『夕暮れ情話』 | トップ | 関西創価高校『優しい嘘』 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。