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映画・演劇のレビュー

伊坂幸太郎『モダンタイムス』

2009-07-30 16:48:17 | その他
 1200枚に及ぶ大作である。500ページ以上のボリュームなのでかなり重いから読むのが大変だった。鞄に入れて持ち歩くのでこの1週間鞄が重くて困った。だが、さすが漫画誌(モーニング)に連載されていただけはある。おもしろい。漫画並みに話も急展開し、目が話せない。

 摑みの部分が上手い。何だ?これは、と思わせる。部屋に押し入ってきた男にいきなり「勇気があるか?」と問われて拷問される。妻が浮気を疑い放った男である。爪を剥ぐとかもう怖い、怖い。近未来の話だが、あるキーワードを同時に検索すると殺されるなんていう物騒な話。その危険なサイトの秘密を暴くと、なんととんでもないことが明るみに。終盤腰砕けになるのはいつものパターンだが、これだけの長さを読み続けてきてあの結末では納得いかない。伊坂幸太郎は全体の構成力がない。話がペラペラだし。壮大なスケールのお話だったのに、どうしてこうなるのか。

 ようするに大風呂敷を広げすぎ。それと、お話だけではなく、世界観が欲しい。マンガみたいな幼稚な展開はやめよう。(と、いうか、マンガでもこの小説よりずっとちゃんとした世界を持つ作品はたくさんある。当然の話だ)ただ、おもしろいだけでは、終われない。読み終えたあとに残るものが欲しい。だが、そんなことを期待して彼の小説を読むべきではないのかもしれない。ごめん。いらん期待して。でも、最初はどうなるんだろうか、とドキドキしたんだから、仕方ないだろ。

 でも、作家(井坂好太郎という名前!)が死ぬシーンはちょっと感動した。生きていく上で必要なものがそこには描かれていた。だから、ここから怒濤のラストへと一気になだれ込んで欲しかったのだ。なのに、あれではなんとも言いようがない。

 後半、超能力(それはただの「特別な能力」でしかないと言い換えられるが)を巡る話へと広がっていくうちに話全体が荒唐無稽になる。ラストでネット検索の監視システムを司るサーバー室に入るところから、もうここまでで話は先に進まないなと思わされる。「人間は大きな目的のために生きているんじゃない」と言う部分が、話の核心に触れてくるのだが、けっこう感動的なのだが、そこで話は終わってしまうのが残念でならない。文句ばかり書いてるがそれだけおもしろかった、ということなのだ。


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