前半はとても面白かったのだが、同じトーンでガンガン行くから後半ちょっと疲れてくる。ヒロインが自分を責めるから、そんな自分にしんどくなってきて、それが観客にまで伝染する。鎧のような衣装を纏い、スカートは履かないし、体のラインの出るような服も着ない。いつもだぶっとしたパンツでガチガチにかためて生きている。彼女には10年間も片想いの彼氏(「いち」と呼ぶ)がいて、脳内恋愛している。同時に今盛んに彼女に言い寄ってくるちょっとキモい同僚(「に」と呼ぶ)もいる。そんなリアル彼氏予備軍の彼も少し気になる。
自分がどう生きたならいいのか、よくわからない。ここまで一直線に彼一筋で来たけど、脳内恋愛は全く進展することがない。それなりにモーションをかけてみたけど、名前すら覚えてもらえない。だから25歳になっても処女のまま。そんなこと、別に気にすることはないと人は言うけど、本人はかなり苦しい。いろんな意味で結構崖っぷちだけど、なんとか普通には生きている。
コメディにしかならないような設定だけど、それをミュージカル・スタイルを援用したりして、でも、シリアスに立ち上げる。バスの中や駅の改札、川のほとりとか、いつも同じ人たちと会話するけれど、それも脳内のお話。そこには爆発寸前の想いが溢れている。そんな痛い女が主人公。彼女の日常が描かれていく。
主役の松岡茉優はとても自然にギリギリの女を演じている。壊れそうで壊れない。結構頑丈。女がひとりで生きていくって、よっぽどタフじゃないとムリ。(まぁ、男も同じかもしれないけど)仕事に対してモチベーションをあげて、そこで満足できたならいいけど、そんなのもっとムリ。そんなムリムリを2時間見せられて結構疲れる映画。リアル恋愛に逃げるわけでもないけど、あのラストはなんか消化不良。