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映画・演劇のレビュー

小路幸也『 brother sun  早坂家のこと』

2010-05-25 13:45:37 | その他
  小路幸也のホームドラマは徹底している。もう今ではなくなりつつある昔ながらの「大家族」を、今の時代に残すため、彼は日夜努力している。『東京バンドワゴン』シリーズでやってきたことを、ここでも踏襲する。なんだか笑ってしまうくらいに律儀だ。

 古い家。たくさんいる家族。それがさらにどんどん増えていく。家族、兄弟だけではない。近隣の住人やら、その友だちとか、どんどん巻き込んでいく。彼らがこのコニュニティーを大事にし、ここの一員であることを誇りに思い、というか、ここに顔を出せることがうれしくて、しかも、この暖かい家での団欒が彼らが生きていく力となる。これこそが本当の意味での家族というものだ。今時、ちゃぶ台を囲んで、語り合う。アナクロでしかないその風景が愛おしい。

 早坂家の3姉妹、あんず、かりん、なつめ。彼女たちと、その恋人。突然の伯父さんの来訪。そこから始まる新しい家族のドラマ。父さんの再婚。真里奈さん(父さんの再婚した人。三姉妹の新しいお母さん)と、彼女たち3人の新しい弟である陽ちゃん。彼らが奏でるドラマはささやかな家族の歴史を作る。

 失われつつある家族のあるべき姿を小路幸也は提唱する。昔ながらの家族を作ろう。そこにある人間関係を大事にしよう。人と人とはちゃんとつながっているものなのだ。彼はそのつながりを何よりも大事にしたい、と思う。嘘くさいくらいにありきたりで、あたりまえ。なのにそれが現代では困難なこととなっている。人と人との関係が希薄になり、うまくコミュニケーションが取れなくなった現代の病巣を取り除くにはこれしかない、とでもいうかのような徹底したドラマ作り。ホームドラマが死語になりつつある今だからこそ、こういう「ホームドラマ」が大事なのだ。

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