6話からなる短編連作。生きづらい世界で息を潜めてやり過ごす。そんな日々の中に小さなオアシスを見出す。都会のハイダウェイ(隠れ家)。そこでのささやかな時間。そして彼らがほんの少しだけ前進する姿が描かれる。
6人の抱える問題はさまざまだ。職場や学校での人間関係。なんとかして生きていく。それだけで精一杯。6つのお話は微妙なところでつながっていく。そこには、こんな時代だけども諦めないで誠実に生きていこうとする人たちの姿が描かれていく。読んでいてなんだかうれしくなる。大変だけど、なんとかしようとする。老いも若きも同じ。みんな現状を見つめつつ、戦っている。なかなか上手くはいかない。当たり前だ。簡単だったら誰も悩ましいし。
冒頭の話とラストのエピソードが連動する。都会にひっそりと立つプラネタリウム。仕事中の昼休み、ここに来てまどろむことが日課。そんなふたりの男女の視点から世界の,そして彼らにとって1年間の変化が描かれる。2022年の夏から始まって2023年の夏まで。コロナ禍の1年間。さまざまな世代が描かれる。それがふたりを視野に入れて独立した短編スタイルで描かれる。