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映画・演劇のレビュー

本多孝好『at Home』

2011-06-15 20:56:38 | その他
4話からなるオムニバス・スタイル。いずれも家族を巡る物語だが、ふつうの意味での家族とはちょっと違う。彼らは偽家族だったり、崩壊したあとの家族だったりもする。だけど、そこから垣間見えてくるものは、本当の家族以上の深い絆で結ばれたほんもののあるべき家族の姿だ。血のつながりなんかよりも、もっと大事なものがそこにはある。それは、そこが人間にとって一番大事な「帰るべき場所」である、ということだ。

それはどんな形であってもかまわない。でも、そこに帰るとほっとできて、また、明日も頑張っていこうという気持ちにさせてくれるところ、そこが家であり、家族なのだ。

『at Home』の詐欺師一家が、ほんとうの意味でひとつの本物の家族になるラストは感動的だ。傷つき、肩寄せ合い生きてきた彼らが、長い歳月を経てようやくひとつになる。『日曜日のヤドカリ』の父と娘の冷静さも素敵だ。これは義父となった男と、母の再婚により彼の娘になった少女が、彼女のかつての父親ともう一度向き合うという話である。『リバイバル』は一人暮らしのオヤジが、借金のかたに、ブラジル人の妊婦と偽装結婚させられて、過ごす日々を描く。『共犯者たち』の妹を信じきれなかった兄と、彼ら(兄妹)を棄てた父親が、妹の娘を彼女の夫のもとから救い出す話もおもしろい。それぞれがほんの少し歪で、でも、その歪さが彼らを幸福に導く。このハートウォーミングは悪くない。



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