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映画・演劇のレビュー

『46億年の恋』

2007-09-13 00:12:20 | 映画
 タイトルにある「46億年」という果てしない時間が描かれる。それは、こんなにも身近にいても気持ちが届くことがない、という距離のことでもある。2人はとてつもなく遠い。

 松田龍平と安藤政信を主人公にして、当然それぞれの事情から、しかし同じように殺人を犯し、同じ日に服役した2人が、刑務所という閉鎖空間の中で育む愛の物語、のはずなのだが、監督はあの三池崇史である。そんな簡単で美しいだけの映画にはなるはずがない。

 鈴木清順か、ラース・フォン・トリアーか、と思わせるようなアバンギャルドの空間設定の中で、大胆不敵なラブ・ストーリーは展開する。いつもながらとんでもなく暴力的で、それをあきれるような空間造形の中でみせる。役者たちの狂ったような怪演にも笑わされる。石橋凌の所長なんて、その不気味さは『地獄の黙示録』のマーロン・ブランド級。

 それにしてもあのロケットの発射台とピラミットは何なんだ?宇宙と天国、どちらを選ぶ、なんていう一応の説明はあるが、あのあからさまには呆れる。

 あまり作者は何も考えていないのかも知れないが、主人公2人の間にある心理的な距離感を身を捩るような切なさの中で描いてくれたならば、それ以外のことは、どこまで異常であろうともOKだ。なのに、過剰な暴力がどこまでエスカレートし、呆れるようなストーリー、映像のもと、この核心部分が、全体のその異様さの中に埋もれてしまうので、この映画は何を言いたいのかが分からなくなる。

 まぁ、三池本人はホモセクシャルに対してあまり関心ないだろうし、ラブストーリーなんかにもあまり興味ないだろうからこういうことになるのだろう。なら、なんでこんな映画を引き受けたのか。本当に何でもやりたい人だ。次回作『スキヤキウエスタン ジャンゴ』も楽しみ。

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