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映画・演劇のレビュー

鞦韆舘presents 自己満足シアターvol.2『エンゲキングXシバイズム』

2009-08-17 16:40:38 | 演劇
 北加賀屋のブラック・チェンバーの上に新しく出来たサイド・チェンバーに初めて行く。このキャパシティーがいい。30から50くらいの小空間だが、舞台はなかなか広いし、空間は自由に作れるから、客席も増やすことは出来る。ただ、最大の難点はここは空調が効かない!だから、この季節は果てしなく暑い。なんでこんな時期にオープンさせたのだろうか、とあきれる。芝居を見るどころではない。暑さとの戦いだ。それってやばすぎる。だが、昔の小劇場の小屋はみんなこうだった。汗みどろになって(冬は震えて)見ていたのだ。だから、実はなんだか懐かしい気分にさせられたくらいだ。(半分嘘です。ひたすらたまらなく暑かった!)

 佐藤香聲さんのプロデュースによる短編集だ。若くて生きのいい集団を集めて、軽々と芝居を作らせて上演してしまう。相変わらずのフットワークの軽さ。ノリだけでは芝居は作れないけど、思いつきを忘却の果てにポイと捨て去ることなく、ちゃんと芝居にさせてしまうことって大切なことだ。でも、思いついてもなかなか実現できないのが現実でそんな中、佐藤さんは不可能を可能にする。これは彼だからこそ出来たイベントだと思う。

 4番組が1回3本ずつで上演される。いずれも30分ほどの短編である。僕が見たのはABDプロが組み合わされた回。サリngROCKの『絶対の村上くん』は白に統一された空間で2人の男が向き合う。作家志望の村上くん(山田将之)は一人の部屋で黙々と小説を書く。そんな彼のところに後輩であり彼を尊敬する友人(コーディー)が訪ねてくる。彼とのやり取りが何度か繰り返されていく。時間がどんどん過ぎる。雑誌に投稿するが、相手にされない。そんな中、ただひたすら書き続けるしかない。あきらめない。淡々としたドラマは繰返しを通して時間の移ろいを示す。同じように作家志望だった友人はいつのまにか作家になることをあきらめ、就職し、自分の人生を生きる。村上くんだけが変わらない。現実とも夢想ともとれる曖昧な時間の中、彼が小説のネタにするため両親をチェーンソーで殺害するという事実だけが突出する。赤い血と白い部屋の対比。やがて、彼は死刑に処せられる。サリngは短編だから出来ることをこういう企画で試す。今回もいつも通り刺激的な作品に仕上がった。

 ピンク地底人『月になって』も不思議な作品でこういう企画の趣旨に合っている。妊娠した女をデリバリーするファッションヘルス。だが、実際に妊婦が出向くのではなく、お腹に風船を詰めただけ。ということはこれはただのイメクラでしかないのか。出張する女と、彼女に付き添う新人の女。2人が車の中で交わす会話が芝居の中心をなす。ミスドの店長から転職した若い女が、ベテランの教育係の凄まじい指導に耐えてこの奇妙な仕事を体験する。なんだか歪な設定だが、そんな中で何かが起こりそうでいて、何も起きないもどかしさが描かれる。見終えて欲求不満が残る。設定の異常さが生かされないからだ。

 BISCO『読~ザ・2本立て』はいつもながらのBISCOを楽しめる。礼儀についてのノウハウを描いた短編と、ルパン3世を紹介する番組を描く短編。笑えて、あっという間に終わる。それだけだが、こういう作品が1本挟まれていると和む。

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