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映画・演劇のレビュー

『チェイス!』

2014-12-16 22:18:36 | 映画
インド映画の底力をまざまざと見せつけられる。昨年の大傑作『きっと、うまくいく』と『ロボット』を融合させて、さらには今までのインド映画(「マサラムービー」とか言われてきたものね)の全力を加味した作品。ここに「インド映画」極まる。しかもインド映画がハリウッドを目指す。でも、泥臭くて、いいかげん。そんなこんなでこれはインド映画のひとつの極みを示す作品なのだ。

「ゴールデン アジア」レーベルは『西遊記 はじまりのはじまり』に続き、ここでもまた「最高」を見せる。すごい、としか言いようがない。だが、そんな最高の映画は日本ではまるでヒットしない。今回もたった1週間でメインの興行を終える。2週目からはレイトで1回だけの上映になっている。

どんなにおもしろくてもそんなことは映画の興行成績にはつながらない。そんなバカな、と思うけど、それが現実なのだ。オリジナルは3時間の作品(たぶん)だが、日本公開版は2時間32分に縮小されているのが、悔しい。本国の状態のままで上映されることは、日本では難しいというそのことがそもそもの問題なのだ。日本ではもう映画は娯楽の王様ではない。そんなことは30年も40年も前からわかっていたことなのだが、その事実がいまさらながら悔やまれる。そんなことすら考えさせられるほどに、これは壮大な作品なのだ。

もちろん、問題は多々ある。これを大傑作と持ち上げるつもりはない。バカバカしい娯楽大作であることは明白だ。だが、そんなことがどうというのだ。問題ではない。面白くて何が悪い。それどころか、それがすべてではないか。

次から次へとありえないようなアクションの連続技。シカゴの街を舞台にしてとんでもないクラッシュを見せる。カーアクションなんて食傷気味という手合いも、きっとこの無邪気なくらいに単純なカーチェイスを堪能するはずだ。これでもか、これでもかの手作り感満載なのである。『ルパン3世』を思わせる犯罪者と警官との対面勝負。指しの勝負だ。わかりやすい。しかも、父親の恨みを晴らすための戦いだ。定番の極致。

中盤からは、双子の話になり、ふたりの確執を描く部分は少しもたもたする。でも、ある程度の緩急は必要だから、それはそれでいい、ということにしておこう。これは何より大スクリーンで、楽しむ娯楽大作。ごちゃごちゃした解説はいらない。理屈抜きで楽しめばいい。頭に中はからっぽ。

これがインドで大ヒットしたのは当然の話だろう。でも、やはり、日本人には受けないのも事実だ。



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