昇竜之介演出による公演。役者のオーバーアクトが鼻に付く。すごく不自然。男優陣の演技は故意にさせたのか、よくわからないけど、嘘くさい。ただヨシダを演じたよしひろ葵は、それでいい。だが、全体のバランスがよくない。演技力に差があるからこうなるのだろうか。4人の女たちが保険金殺人を繰り返すのだが、説得力がない。緊張感のある舞台を作ろうとしているのはわかるし、演出はちゃんと緩急をつけて余裕の舞台を作れては、いる。そこに役者がついてこれていないから、こんなふうになる。TV番組を見るという遊びのシーンも自然にはめ込まれていて、そこで息抜きが出来ている。こんなにもキツい芝居だから、そんなインターバルがあってもいい。だが、肝心なのはその先だ。
なぜ、こんなことになるのか。何が彼女たちを追い詰めたのか。ヨシダが悪女で彼女に踊らされただけではない。女たちの中にある殺意はダメな男たちへの復讐なのか。でも、そんな単純なものではなかろう。わからない、ということがこの芝居にとっては最大の力だ。そこを突き詰めていくことが、この作品を成功させるはず。大竹野は事件をもとにして、わからなさ、その不気味さを追求した。昇竜之介はさらにその先を目指した。
だが、そこには当然のこととして明確な答えはない。4人の看護婦たちが、殺人という行為を自分たちの仕事の延長線上に位置づけ、淡々とこなしていくことの恐さ。殺意はお金だけではなかったはずだ。男たちへの復讐でもない。つまらない男たちに振り回される自分たち自身への罰。白衣の天使であるはずの彼女たちが、冷静にこういう行為に至る恐さ。そこがもっと突き詰めて描かれたならよかったのだが、そうはならない。志は高い芝居だと思うけど、今ひとつ乗り切れない。