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映画・演劇のレビュー

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス  名もなき男の歌』

2014-06-07 21:53:03 | 映画
 61年ニューヨークを舞台にして、あるミュージシャンの1週間を描く。音楽で生きていければいいのだが、願いはかなわない。行くあてもなく彷徨う。NYからシカゴのライブハウスに行くけど、そこでも希望は見いだせない。雪の中、ヒッチハイクして戻ってくるシーンのわびしさ。

 これはボブ・ディランが登場して、フォ-クソングが市民権を得る以前のお話。才能はあるけど、売れないミュージシャンの日々が淡々としたタッチで描かれる。ここには特別なストーリーはない。ただ、何をやってもうまくいかない男の日々を静かに追いかけていくばかり。コーエン兄弟の新作なのだが、今までの彼らの映画とは肌合いが違う。つまらないわけではないけど、なんだか乗り切れないまま、最後まで見てしまう。

 再び最初の場面に戻ってくるから、あぁ、もう映画が終わるのだな、とわかる。もうそんなに時間が過ぎていたのか、と驚く。ライブハウスの外で、ある男から殴られるシーンだ。最初のところでは彼がなぜ、殴られるのかわからない。そこから話は、1週間前に遡り、再び同じシーンになったとき、この最低だった毎日の先にあの場面があったのか、と気づく。

 モノクロ映画の肌触り。雰囲気は悪くないし、猫との生活を描くエピソードも面白いけど、なんか、それ以上のものがないし、物足りない。疲れていたから、かもしれない。疲れた体でレイトショーで見た。早く見なければ上映が終わってしまいそうだったからだ。公開7日目なのに、翌日からは1日に1,2回の上映になる。そこで、フラフラなのに、見に行った。今の自分の暗い気分と見事にシンクロしたから、反対に拒絶したくなったのかもしれない。映画はたぶん、とてもいい作品だと思う。カンヌでグランプリを取ったらしい。でも、僕はいつものコーエン兄弟の映画のほうが好き。

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