習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

第2劇場『麦藁バンド』

2007-09-02 08:57:37 | 演劇
 よくぞまぁこんな芝居を作ったものである。きっと阿部さんがなかなか書けなくて、締切(なんてあるのかなぁ?)ギリギリでどうしようもなくなった上での苦肉の策が、今回の芝居なんだろう。それを許してしまうのもなんだか、と思うが、それを反対に楽しもうとするこの劇団の体質が素晴らしい。(皮肉ではない!)

 新作がもう不可能なら、それなら、それでも新作として「阿部は今回台本が書けない」という台本を書こう、と決めたのかもしれない。(なんだかややこしい。)

 30周年記念作品なのに、それをこんないいかげんな話で、まとめてしまっていいんんだろうか、と部外者であるのに僕が心配してしまう。お客さんたちは優しいからとてもよく笑ってくれている。本当に2劇の観客はいい人が多い。それはこの劇団の在り方が、この良質の観客を育てたのかもしれない。(これは、褒めすぎ!)お客あっての劇団だと改めて思い知る。

 こういうフェイクドラマは本当と嘘のあわいで揺れ続けるような微妙な作劇が必要なのだが、若い役者たちは、素直過ぎて、そのへんがうまくこなせていない。なんだか、全てがわざとらしく、ちょっと笑ってしまう。(へたすぎてです!)だまされたな、という気分にはしてくれない。「おいおい、もう少し上手く騙してくれよ!」という気分で苦笑しながら見てしまう。でも、それでいいと阿部さんは思ったのだろう。

 楽屋落ち的なドラマ展開は、時には見ていて腹立たしいこともあるが、今回は記念公演なのだから、という優しい気分もあり、笑って見ていられる。

 2001年の音間哲による『人心地のよい車』の再演というスタイルで作られたこの新作は、新作を書けない阿部が、音間作品を使ってえせ新作を捏造する、というドラマになっている。書かれてない台本を必死で演じる役者たちの顛末を描くバックステージものである。書けない作家の苦悩なんを描いたりはしない。彼のために右往左往させられる若い劇団員のドタバタ騒動として、芝居全体を作り上げる。

 けっこうしつこく同じネタを繰り返したりするし、90分という短い作品のはずなのに、あまりにネタが単純すぎて、結構長く感じてしまうのはご愛嬌。30周年だからこそ、肩の力を抜きました、という感じ。記念作品だから、こういう作品で勝負(というか、勝負なんかしない)するという姿勢が2劇らしくていい。どうぞ、これからもこういう調子で人を食った作品を作り続けてもらいたい。

 それにしても、作品のタイトルと中身が全くリンクしない、と思うのだがこのタイトルは何なんだろう。ぜひ、このタイトルのもと作るはずだった作品もそのうちよろしく。

 余談だが、終演後、30周年記念粗品を貰った。大福餅だ。美味しかった。その袋には、「誠に申し訳ありませんでした。次回は真面目にやります。」という阿部さんのお詫びが書かれてあった。(笑)

 今回の添付写真は、装置の製作風景をいただきました。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 青山真治『エンターテインメ... | トップ | セレノグラフィカ『待たない... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。