老いと死。これを肯定的に捉えて生きることを描くエッセイ集。これは短いお話の集積ではなく200ページに及ぶ長編エッセイである。サブタイトルに『今この瞬間を生きて』とある。彼女が母の死を経て想うことを綴るこの真摯でストレートな心情はしっかりと胸に届く。僕が母の死から2年経た今の想いにも通ずる。
たまたまタイトルに惹かれて読むことにした『さよならの向こう側』はシリーズの第3作で、完結編だった。先の2作を読まずにこれから読み始めたが、問題はない。それどころか、たぶん1作目を読んでいたらならこれはもう読まなかったことだろう。読みやすいから一瞬で読んだが、無理して時間をかけて読むまでもない作品だからだ。だが、この優しい世界は嫌いではない。バカリズムの傑作『ブラッシュアップライフ』に通じるものがある。
死者が亡くなった後、1日だけ現世に戻って意識して最後の日を送れるという特典。だが、自分が死んでいるということを知らない人にしか会えない。そういうルールでの1日を描く短編連作。仕掛けは面白いが、展開はあまり上手くない。予定調和になっていて捻りがないからだ。完結編らしく上手く全体をまとめたが、それはよくあるドラマの最終回みたいで、それまではなかなか面白かったのに、ラストは減速というパターン。
ただ、この2冊を偶然続けて読んで、さらにはそのほぼ直前には傑作『リラの花咲くけものみち』を読んでいるからこれは今この時期に「死について考えなさい」という神さまからのお告げだな、なんて密かに想う。 ちょうど今日は母の月命日だ。