これはつらい。ハウスクリーニングで働く女性が主人公だ。彼女は汚部屋を丁寧にクリーニングする。まじめで一生懸命に働くのだが、職場の待遇の悪さやいい加減な仕事しかしない部下への対応に追われて疲れている。
そんな彼女の日々が描かれるのか、と思って読んでいたら、話はまるで予想もしないところに流れ出す。仕事を辞めて独立する。さらには「開運お掃除サービス」なんていう新事業を立ち上げるのだ。
だが、それは新興(信仰)宗教みたいなもので嘘くささ満載。口八丁手八丁のインチキビジネスを立ち上げることになる。そんなつもりではなかった。だけど気がつけばそんなことになっていく。もちろん本人は詐欺をしようというわけではない。掃除は好きだし、掃除を通して生きるつもりで始めた。だが、たくさんに人たちを集めたことで組織は内部から瓦解していくことになる。
彼女が夢見た「みんなを幸せにするお掃除」は実現しない。誰かの欲や嘘が彼女を破滅に追いやる。もちろん他人のせいではなく自業自得だけど、なんだか寂しい。
読み終えて、疲れてしまった。たかが掃除。だけど、それによって人生が変わるかもしれないという、そんな壮大な夢を見る。
母親の愛情が欲しかっただけ、なんていう結論はつまらないけど、彼女の気持ちはわかる。許せない母を求めていたことに気づく。気がつくと母親と同じようなことをしている。
思いもしない方向に向かい暴走していくことを止められない。自分もまたその流れに流されて嘘をつく。
すべてを失って気づくこと。大切なものは何なのか、それに気づく。なんだか壮大なドラマだった。