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映画・演劇のレビュー

空晴『つづきのとちゅう』

2008-07-03 10:25:21 | 演劇
 とてもあたたかいお話。作、演出は岡部尚子さん。前作『きのうのつづき』の姉妹編。同じような設定での少人数での会話劇。ワンシチュエーションのとても単純な話を小さいままでまとめていく。セットとかも特別何も作らない。ありのままのウイングの空間を使う。拘るのは岡部さんの見せたい世界観だけだ。もちろんそれが何よりも大事で、それさえしっかりしていたなら、芝居は成立する。

 前作はすこし設定に無理があり、見ていて強引な印象が残ったが、今回は手慣れてきて、無理がなくなっている。こういう芝居はいかに心地よく見せるかがポイントになる。ありえない、とか、うそくさい、とか、そんなことを一瞬でも感じさせたなら観客は冷めてしまう。そこで、大事になるのは登場人物への親近感だ。それと、ストーリーよりも大事なほんのちょっとしたやりとりへの共感。たった4人の登場人物がそれぞれいい味を出してくれなくては、成立しない。

 彼らのアンサンブルがうまくいき、さらには微妙な間を含めて、全体が上手く流れていくように作れたなら成功する。これは、一見簡単に見えて実はとても難しい芝居なのだ。

 岡部さんは自ら演じるふたえというとても困った女の子を見事に造形してくれた。出番は少ないが、彼女のキャラクターがこの芝居に命を吹き込む。姉の結婚に反対なのではない。ただ、誰よりもこの家を愛し、その気持ちが微妙に屈折している。気持ちが弱く、だから強がっている。この子の複雑な心境がパターンではなく、自然に描かれたからこの芝居は生きた芝居になった。

 本当はとても優しい子なのだ。なんだか頑なで、うまく人とコミュニケーションがとれない。そんな自分にいつも腹を立てている。そんな気持ちをぶつけるために、他人を攻撃する。39歳の姉がひと回りも下の男と出来ちゃった結婚をしてしまう。それが彼女には許せない。そんな年下で、たよりない男が大好きな姉を幸せに出来るはずがないと、相手の男にも会わないくせに、勝手に思い込んでいる。

 その相手の彼が、ふたえに会うために家に挨拶に来る。だから、彼女は会いたくない。逃げ出したい。しかし、うまく行かない。当然のように鉢合わせしてしまう。そんな2人と、幼なじみの同級生、同居している妹の夫、合計4人のドタバタコメディー。それを、今回は、とても落ち着いたタッチで、描いてある。「ドタバタコメディー」と一応書いたが、実はそんなにドタバタはしないのが、ネックだ。いつも不機嫌な顔をしているふたえと対照的に義弟のたもつ(上瀧昇一郎)とつぐお(小池裕之)はずっとおろおろしている。さらには訪問者のかつら(平本光司)のへんにおどおどした応対振り。これはよくあるパターンだが、それが生きたのは、誇張ではなく自然な4人の振る舞いと無理のない展開ゆえである。

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