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映画・演劇のレビュー

『宇宙へ』

2009-08-21 22:10:28 | 映画
 NASAが秘蔵してきた貴重なフィルムを大放出して、それをもとになぜかBBCが作ったという映画。だからこれはアメリカ映画ではなく、イギリス映画で、そこになんとなく心ひかれた。アメリカの行け行けムード漂う映画なら、あまり見たいとは思わなかったが、なぜイギリス人の若い監督がこの企画を引き受け、何を目指したのか。そこが僕の興味の争点だ。

 だいたいこの映画のスタートは監督が生まれる以前の話である。彼がこの企画と出会い、膨大な量のフイルムを見て、知った事実。彼はここに何を見たのか。宇宙開発の名のもとで凄まじいお金と労力をつぎ込み未来に夢を託した歴史の中で、何があったのか、ただその事実だけを描く。人類が夢見た月面着陸の瞬間の感動もただ淡々と描き、それがどれだけの犠牲の上に成し遂げられたものか、そこが派手な成功以上に心に残るように作ってある。

 宇宙開発について、その夢を語ることは誰にでも出来る。男の子ならこういうことに興味を抱くのは当然だろう。子ども目線でこの映画を宇宙への憧れとして視点から作ることもできたはずだ。だが、そうはしない。監督のリチャード・デイルは時間を追ってアポロ計画を中心にしたNASAの試みを丁寧に追う。要するになんの仕掛けも芸もない映画なのだ。だから、少し眠くなる。だが、この愚鈍な映画を見ながら、だんだん人間がとてつもない大きな夢を追うことの意味が見えてくる。この一見どうでもいいような映画が、その瞬間輝く。

 押しつけがましいところは一切ない。何度も失敗を重ねながら、凄まじいお金をつぎ込んで、このアメリカ人の夢物語は実を結ぶ。アポロ11号が月面着陸に成功し、みんなが歓喜する。その後アポロ計画は終了し、今ではあれは何だったのかというくらいに、風化している。だが、もちろん今もまだ人々はこの夢を追い続ける。

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