習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

魚クラブ『僕のいる夜 眠れぬ空』

2008-07-31 13:01:02 | 演劇
 あまりに甘く幼い、そして、ほろ苦い少年時代の回顧録である。May『チャンソ』と比較したならそのやわさには、ちょっとどうよ、とも思うが、でも、センチメンタルで、内省的で、ひとりよがりの小さな世界を大の大人が、何の衒いもなく、それどころか思いっきり開き直って、この傷つきやすく、懐かしい子供の世界を子供モード全開で見せていこうとするのは、潔い。  舞台は昭和40年代、小学校4年の夏休み。ひとりぼっち . . . 本文を読む
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May『チャンソ』

2008-07-31 11:09:30 | 演劇
 金哲義さんの新作は自らの高校時代にスポットを当てた青春グラフィティーなのだが、それは単なるセンチメンタルな感傷にはならない。大阪東部にある朝鮮学校の高等部という僕たちが覗き見ることができない聖域に入り、そこでの日常というものをドキュメンタリータッチで綴る3年間の物語は、生半可なものではない。  80年代の終わり、という時代背景も当然のことながらしっかり抑えられていく。それがこの芝居のベースなの . . . 本文を読む
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演劇農耕者『新羅生門』

2008-07-31 10:29:51 | 演劇
 70分というコンパクトな上演時間とぴったりあうような単純な内容。でも、そんな中で人の心の中に巣食う悪というものをとてもよく捉えてある。明日取り壊される都会のビルの真ん中に残っていた古い萱葺きの家屋。そこに現れた鬼。彼はかって何人もの村人を喰らい、人々を恐怖のどん底に落とし込んだ。  かっての、その悪行を彼の母親は隠すために死者の骨を、この家の地下に埋めていた。しかし、今ここが取り壊される前に、 . . . 本文を読む
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『純喫茶磯辺』

2008-07-31 09:19:58 | 映画
 この映画の毒気に当てられる。吉田恵輔は、前作『机のなかみ』で衝撃のデビューを果たした逸材だ。方法論の突飛さが驚きなのではない。意外なんてものを百万光年通り過ぎた唖然の世界を平気で展開して見せるその感性の異常さがおもしろかったのだ。  女子高生と家庭教師の歪なすれ違いが描かれた前作に続き、今度もまたありえないことを現実化させてしまう。  今時ここまで趣味の悪い喫茶店なんか犯罪的である。そんな店 . . . 本文を読む
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『スカイ・クロラ』

2008-07-31 08:20:13 | 映画
 押井守にとっては、『イノセンス』以来の長編アニメーションの新作となる。思いきった作り方をした映画になっている。だいたいこの原作を持ってきて1本の映画にしようとする試みの大胆さに驚く。この小説(森博嗣)は映画には不向きな題材である。あまりに単調な生活描写が延々と続き、絵にならない。戦闘機が飛び交うシ-ンも多々あるし、ドッグファイトだって描けるからそういうスペクタクルを狙えれるとは、誰も思うまい。こ . . . 本文を読む
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『カメレオン』

2008-07-31 08:11:38 | 映画
 阪本順治監督が『闇の中の子供たち』(公開はこちらの方が後で大阪は8月2日から)の後のリハビリとして撮った最新作は、松田優作の『遊戯シリーズ』の1本として企画された幻の台本(丸山昇一)の映画化。こういう単純アクションを1本撮ることでバランスを取るっていいことだと思う。  今まで阪本監督は様々なジャンルの映画に挑戦してきたが、この手のB級アクションは初めてではないか?『トカレフ』は基本はアクション . . . 本文を読む
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