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映画・演劇のレビュー

演劇農耕者『新羅生門』

2008-07-31 10:29:51 | 演劇
 70分というコンパクトな上演時間とぴったりあうような単純な内容。でも、そんな中で人の心の中に巣食う悪というものをとてもよく捉えてある。明日取り壊される都会のビルの真ん中に残っていた古い萱葺きの家屋。そこに現れた鬼。彼はかって何人もの村人を喰らい、人々を恐怖のどん底に落とし込んだ。

 かっての、その悪行を彼の母親は隠すために死者の骨を、この家の地下に埋めていた。しかし、今ここが取り壊される前に、ここからそれを掘り起こしてしまおうとする。バイトでその仕事を請け負った女が、ある男の麦藁帽子を取ってしまったことで、封印されていた彼の中の鬼が甦ることとなる。

 人の心の中にある悪の心を正義と対比させ、描いていく。一見単純な図式だが、気付くと、正義と悪は簡単に入れ替わる。物語の中の主人公である桃太郎や一寸法師たちが、鬼と戦うことで、手にしたものは何だったのだろうか。

 もう少しドラマに広がりが欲しい。オリジナル台本(横内謙介だから、もっと長い芝居だと思うが)はどうなっているのだろうか。よくわからないが、作品のエッセンスをぎゅっと凝縮して、シンプルでわかりやすい作品としてまとめたのだろう。テーマはきちんと伝わってくる。見ていて気持ちのいい作品だった。

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